従魔の決まり事も整備する必要がありそうでした
「まぁ、公爵家としての地位を利用する事になりそうですけど……」
「権力を振りかざしているわけじゃないから、きっと大丈夫。俺が言って納得するかはわからないけど……」
ちょっとだけ、悩むような表情になるクレア。
そういえば、公爵家には権力を笠に着ないよう振る舞う……と言った家訓みたいなのがあるんだっけ。
だからこそエッケンハルトさんやクレア、ティルラちゃんも、誰にでも変わらず接する事ができるんだろう。
「いえ、タクミさんにそう言ってもらえるだけでも、頼もしく感じます。……ただお父様や、セバスチャンとも話す必要がありますね。これまで、従魔を持つ者は多くありませんでしたから、大きな問題はありませんでしたけど。ラクトスは今も従魔を持つ者が増えているようですから」
従魔を持つ人が増えたからこそ、ちゃんとした法整備というか決まり事を考えておかないと、って事だろう。
少なくとも、公爵家が治めているラクトスでは今、従魔が増えているようだからこれからのためにも必要なんだと思う。
「そうだね。レオの影響らしいけど、増えるのならヴォルグラウのような従魔を出さないようにしないと……」
従魔を捨てたり、虐待したりするような人間が増えないようにしないとな。
その後、衛兵さんへの説明やデウルゴの手配をニコラさんが済ませた後、ヴォルグラウはクレアが一旦預かるとして一緒にラクトスの外へ。
詰所にいてもらうにしても、衛兵さん達が困るだろうからな……罪人というわけでもないし。
あと、部屋を俺達が出ようとすると、悲しそうに鳴くのを無視できなかったからでもある。
ちなみに、俺達が詰所を出た時、衛兵の隊長さんがヨハンナさんの前にへたり込んでいた。
訓練を見ていたヨハンナさんが隊長さんと模擬戦をしたらしいんだけど、手も足も出なかったんだとか。
レオの方は、他の衛兵さん達と一緒に広い場所でランニングをしていて、それはそれは楽しそうだった。
……どう見てもレオが追い回している構図だったけど、レオに聞くとただ走っているのを見て一緒に走っただけ、という事らしい。
その日の夜、レオと走った衛兵さん達は夢で怖い何かに追われる夢を見たとか見ていないとか……。
「怪我は治っているし、元気な様子だから大丈夫だろうけど……レオ、あまり無理はさせないようにな?」
「ワフ!」
屋敷に戻るため、レオの背中に乗っているのは俺とクレア、それからエルミーネさん……なんでもエルミーネさん、フェリー達には乗った事があったみたいだけど、レオには乗った事がなかったので一度乗ってみたかったらしい。
ヴォルグラウは、一旦俺達が預かるとして一緒に屋敷へ……レオに乗る俺達を見て、リーザなら大きさ的に大丈夫そうだと自分から提案してくれた。
積極的に何かをしたいと思うのなら、今のところ大丈夫そうだと嫌な事を思い出させないよう、乗せる事にする。
「大丈夫?」
「バウ!」
ヴォルグラウに乗ったリーザが、背中を撫でながら気遣う。
役に立てるのが嬉しいのか、大きく鳴き声を上げるヴォルグラウ……そうか、今まで役立たずとか散々言われてきていたから、何かやりたかったんだろうな……。
ニコラさんとヨハンナさん、ライラさんはラクトスに向かう時に使った馬車と馬に乗って、屋敷へ向かう。
シェリーはヴォルグラウの横を一緒に走り回っているな。
以前はレオに乗っているのが定位置だったのに、今では馬と走れるようになっているようだ……これも成長か。
あとは体が大きくなれば、リーザやティルラちゃんが乗れるようになりそうだ。
そうなったら、レオがまたやきもちを焼きそうだけど……。
「お帰りなさいませ、クレアお嬢様。そちらが連絡のあったウルフですか?」
「えぇ。フェンリル達と同じように、一時的に屋敷で預かるわ。危険はないから安心して。それと、セバスチャン達の方は?」
「はっ、畏まりました。セバスチャンさんは、多少フェンリルに戸惑う人が乗るのをためらってはいたようですが、大きな遅れなく全員屋敷に入っております」
「わかったわ」
屋敷に到着し、門を警備している護衛さんと話すクレアさん。
まだリーザを乗せているヴォルグラウの紹介をしながら、薬草園雇用者達の事を聞いている。
セバスチャンさん達は、滞りなく皆を屋敷に連れて来てくれたようだ……まぁ、フェンリルに戸惑うのは仕方ないけど、先にレオを見ていたからか問題らしい問題はほとんど起きていないようだ。
「では、私達はヴォルグラウを連れて裏庭に回ります」
「お願いします、ライラさん」
「キューン……?」
「大丈夫だヴォルグラウ、後から俺も行くからな」
門を抜けて屋敷に入る前、ライラさんはヴォルグラウを連れて裏庭へ……ちなみにリーザはまだ背中に乗っている、気に入ったのかな? 気遣っているだけかもしれない。
俺から離れるとわかって、甘えるような声を出すヴォルグラウだけど、ゆっくり撫でながら大丈夫だと伝えると納得してくれた。
レオも保護者じゃないけど、監視というか一応ヴォルグラウと一緒にそちらへ。
裏庭にはフェンリル達やラーレがいるはずだし、いきなり連れて行かれたらヴォルグラウが驚いたり怯えたりすると思って、そのフォローをお願いした……後でちゃんと構ってやらないとな。
「「「「お帰りなさいませ、クレアお嬢様、タクミ様!!」」」」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
玄関を開けたエルミーネさんに促され、クレアと一緒に入ると、いつも通り使用人さんのお迎え。
初めての頃は驚いてばかりだったけど、今ではむしろ安心してこれがないとと思うくらいになったなぁ。
迎えてくれた使用人さんの中には、ウィンフィールドさんやジェーンさんもいる。
アルフレットさんやセバスチャンさんがいないのは、薬草園の人達の相手をしてくれているからだろう。
「なんというか、やっぱり絵になるなぁ」
俺はともかく、迎えられているクレアと屋敷の広い玄関ホール、それに並んで一斉に礼をしている使用人さん達。
特にクレアは今日、見慣れた姿ではなく髪から服装までおめかししているから、今まで以上にお嬢様なんだと実感できた。
住む世界が違うなんて、以前の俺なら考えていたけど……今はそこまで考えない。
レオがいてくれるおかげが大きいとはいえ、俺も使用人さんや人を多く雇っている立場になったわけだし、少しは意識が変わってきているんだろう――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。







