顔見せはまだ残っているようでした
デリアさん達は既にレオと会った事があるから、特に緊張した様子は見られないけど、初めて会う人達はそりゃそうかと思う。
アルフレットさん達も、最初はかなり緊張していたからなぁ。
ある程度、公爵家との繋がりでシルバーフェンリルの事を知っていたからってのもあるんだろうけど、だからって詳しくない人達が恐れないわけでもない。
まぁでも、リーザやティルラちゃん、シェリーも含めて見てもらえればすぐに慣れてくれると思う……慣れてくれるといいなぁ。
使用人さん達の時と違って、フェリー達も一気に紹介というわけじゃないから、大丈夫だと思う、多分。
アンナさんはいないけど、孤児院からも雇用する予定の二人が来ていたし……あっちは何度もレオを見て慣れてくれているから、皆に混じって慣れるのを手伝ってくれる事だろう。
一緒に遊んだりするかな?
「ふぅ……なんとか、終わりましたね。まだ前半ですけど」
「お疲れ様でございます、タクミ様」
「パパー」
「おぉリーザ。偉かったな、ちゃんと自分の事を皆に言えて」
部屋を出て行った皆を見送り、広くなった大会議場を見渡しながら息を吐く。
アルフレットさんから労われる俺に、ライラさんから降ろされたリーザが抱き着いて来る……ライラさん、ずっと抱いていてくれてありがとうございます。
「ううん……リーザ失敗しちゃったの」
「ははは、途中で噛んだ事か? でも、おかげで皆の緊張が解れて和んだようだし、むしろ良かったぞ?」
「うーん……」
リーザは、自己紹介を噛んで失敗した事を気にしている様子だけど、あれのおかげで随分話しやすくなったから、俺としてはありがたい。
けどリーザは、納得できなかったのか難しい表情。
「ふふふ、リーザちゃんはタクミさんや皆の前で、もっとしっかりした姿を見せたかったのかもしれませんね」
「あぁ、そうかもね。リーザ大丈夫だよ。慣れていないだけで、ちゃんとできていたから。失敗したわけじゃないよ」
クレアに言われて納得。
背伸びをしたかったとか、そんな感じかな? でも、スラムで囲まれていじめられて……どちらかというと注目されるのは得意じゃないのに、リーザなりに頑張っていたからな。
言葉を噛んだとしてもそれは失敗じゃないと、優しく頭を撫でながら慰める。
「とりあえず、少し休憩したら皆を連れてレオの所に行かないと。カレスさんの所でティルラちゃんと一緒に待ちくたびれているだろうから」
「ママのとこに行くのー」
「カレスの店なら、子供達を集めて遊んでいるかもしれませんけどね。でもタクミさん? まだやる事がありますよ?」
「え……?」
とりあえず後はレオと会ってもらうだけ……そう思ってライラさんが淹れてくれたお茶を一口含み、ちょっとだけリーザの耳を撫でて癒されようと思っていたら、クレアがいたずらっぽい表情。
他に何かあったっけ?
「この後は、私の方が雇う人との顔合わせになりますからね」
「タクミ様、薬草園はクレアお嬢様との共同です。タクミ様が雇う人との顔合わせだけではありませんよ?」
「クレア、アルフレットさん……そういえば、そうだった」
それとなく聞いていたけど、今日は俺の方での顔合わせだけと思っていた。
でもそうだよなぁ、クレアの方でも人を雇うんだから、顔合わせは同じ日に済ませた方がいいか。
また日を改めて、正装したうえで屋敷からラクトスにってなると、手間だろうし。
そうして、お茶を一杯飲んだくらいの休憩時間の後、今度はクレアが雇う人達を迎える事になった。
最初に国旗などへ礼をして自己紹介をした後は、クレアやエルミーネさんがメインで進行。
礼をするのは二度目で少し慣れていたし、俺はある程度気楽に過ごさせてもらった。
とは言っても、ちゃんと顔を覚えるようにはしていたけど……後で、アルフレットさんやライラさんに、名前のリストを作ってもらおう。
セバスチャンさんに頼んだ方が早いかもしれないけど。
クレアが雇う人達は、基本的に作った薬草や薬を他の村や街に運び、卸す事。
他にも、公爵家と直接関わりのない商店で販売するように交渉したりする人員だ。
人数は俺の時よりちょっと少ないくらいだったけど……いつのまにこれだけの人を雇うように決めていたのか。
後から聞いた話では、俺がブレイユ村に行っている間に一気に決めていたらしい。
ちなみに、俺の方は畑関連で肉体労働的な事があるため、割り合いとして男性が多かったけど、クレアの方は女性が多かった。
雇い主の性別で無意識にそうなってしまったのかな? と思ったけど、セバスチャンさんが指摘しないはずなさそうなので、偶然だろう。
結果的に、全体を合わせたら男女比はほぼ同等くらいか。
そんな事を考えつつ、揃った人達を観察しながら進行を見守る……俺の『雑草栽培』に関しては、こちらにはまだ話していない。
畑などで見る機会が少ないから、追々って事らしい。
あと、給金はクレアが決める事で別として、働く日数に関しては割と流動的のようだ。
まぁどこにどれだけ薬草を運ぶかも決まっていないし、毎日畑を見たり採取したり、調合するのと違って移動が多く含まれるからだろう。
「それにしても、驚いたよ……」
「ふふふ、タクミさんを驚かそうとして、内緒にしていました」
「成功しましたな、クレアお嬢様」
「えぇ」
クレアさん側の顔見せが終わって、皆が退場した後まず出たのが驚いたという感想。
いたずらっぽく笑うクレアとセバスチャンさんの二人が、俺を驚かそう仕組んでいたみたいだ。
まぁ、ちょっとしたサプライズみたいなものだったんだけど。
「まさか、エメラダさんがいるとは思わなかったよ」
「私も、応募してきた時は少し驚きました」
「エメラダさんは、クレアお嬢様に憧れているようでしてな。タクミ様が来られる以前より、ラクトスに訪れたクレアお嬢様を見かける事もあったそうです」
「それで、この機会にって事ですか」
驚いた事……それは、初めてレオと一緒にラクトスに来た時、俺達に声を掛けて来てくれた女性、エメラダさんがいた事だ。
あの時、エメラダさんが声を掛けて来てくれたのもあって、注目を集めていたレオを街の人達に紹介できた部分もあるからなぁ――。
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