お金に関する大事な話をしました
「タクミ様、お話は済みましたでしょうか?」
「キースさん? えっと……はい、大丈夫です。けど、どうしたんですか?」
ヴォルターさん達と話していると、屋敷から出てきたキースさん……セバスチャンさんと話していたんじゃなかったのかな?
話は終えていて、今伝えるべき事はもうないと頭の中で確認し、キースさんに向かって首を傾げる。
「少々ご相談が……ライラさんもご一緒に」
「私もですか? 畏まりました」
「……わかりました。それじゃ、アロシャイスさん達、また。――ここまでおとなしくしてくれて偉いな、リーザは。ティルラちゃんも待ちかねているようだから、遊んでおいで?」
「はい」
「うん、わかったー!」
「はぁ……父さ、セバスチャンさんに言って、この屋敷にある書物を読みますか……」
相談と言いつつ、俺以外の人達を見るキースさん……あまり聞かれたくない相談したいのかな? ライラさんは一緒で良いみたいだけど。
レオはセバスチャンさんの方に行ったけど、リーザはずっと俺の隣にいておとなしくしてくれていたので、これ以上付き合わせるのもなんだからな、ティルラちゃん達と遊ぶように促しておいた。
ヴォルターさんは、早速何か読み物を探すようだ……何かいい物があればいいな、なんて考えながらライラさんやキースさんと一緒に屋敷の中へ戻った――。
屋敷の中を移動し、俺の部屋へ。
今のところ、俺専用の執務室なんてないから、相談をするならここしかない……多分、クレアやセバスチャンさんに言えば用意してくれそうではあるけど、部屋は余っているみたいだし。
でももう少しで自分の家が持てるんだし、今はここで我慢しよう。
客間でもいいんだけど、他の使用人さんが出入りする事もあるからな。
「それで、相談ってなんでしょうか。他の人には聞かれたくないようでしたけど……」
「申し訳ございません。全てではなくて良いのですが、早急に決めておきたい事柄がございます」
「私も一緒でよろしいのですか?」
「ライラさんにも関係する事ですので。それに、メイド長ならば統括する立場にありますので」
早急にか……何を決めるんだろうか? キースさんがって事は、お金に関する事っぽいな。
ライラさんはメイド長として同席して欲しいみたいだけど、それなら執事長のアルフレットさんも……と思ったら、キースさんに一任したらしい。
まぁ、がらじゃないけど皆を雇う立場の俺と、代理でも男性使用人、女性使用人それぞれのまとめ役が集まって初めての会議ってわけだ。
「相談は皆の給金の事です。使用人以外にも、タクミ様が雇う方達も含めてできるだけ。少なくとも、現在雇うと決まった方に関しては、決めておいた方がよろしいかと存じます」
「あー、成る程」
「給金に関してですか……」
それは確かに、他の人がいる場所では相談しにくいな。
しかも、さっきあの場にいたのは雇う予定じゃない人達で、そんな人達にはこういった事はなるべく聞かさない方がいいだろう。
「大体の相場は、以前セバスチャンさんに聞きましたけど……」
「はい、お伝えしていると聞いております。それでですが……」
キースさん主導で、まずは決定されている執事さんやメイドさんの給金の提案を受ける。
わかってはいたけど、結構な高給取りだ……そりゃ住み込みは当たり前、場合によってはつきっきりでお世話したりしないといけないのだから、高い給金になりもするか。
さらに、執事長やメイド長は管理職のようなもののため、さらに役職手当のようなものがプラスされる……これも当然だな。
給金は働く上でのやる気などにも繋がるので、高いからといってケチりたくはない。
「それじゃあ、各種手当はないんですか?」
「全てではありませんが……タクミ様と同じ場所に住み、食事も用意されるもしくは用意するので、そこに手当は払われません」
手当というのは、住居補助だったり食事補助だったりだけど、使用人さん達にはこれがないらしい。
俺と同じ家に住んでお世話をし、使用人さん達が住むための部屋もあるうえ、食事は少なくとも食材が用意される……俺としては同じ食事をと思うが、そこはまた別の話だ。
雇った側が用意するものだから、当然と言えば当然か。
それでも他と比べたら高給なんだけど。
「私は、タクミ様達のお世話ができればそれでいいので、あまり高くなくても問題ありません。欲しい物もほとんどないですし、使う事がありませんから……」
「いえ、ライラさん。それはいけません。メイド長の立場になるライラさんの給金が少ないとなると、相応に他の者も少なくなってしまいます」
「俺もキースさんの意見に賛成です」
もらう側が満足だからと言っても、他の人がどう見るかが問題だ。
それに、立場が上のはずのライラさんの給金が少ないのに、その下で働く人達の給金を多くするわけにもいかないだろう……本人が遠慮したとしても、払うべきところには払っておくべきだと思う。
生活の面では、給金が少なくてもなんとかなるとしても、だ。
「ライラさんには、この屋敷に来て以来ずっとお世話になっていますし、これからもお世話になりますから。それは、キースさんも含めて使用人になってくれる皆もそうですけど」
「……はい、畏まりました。ありがとうございます」
お世話になっている、お世話になる予定の人達に対して、給金を出し渋る事はしなくないからな。
ライラさんも、俺やキースさんに言われて納得してくれたようだ。
「それで、いかがいたしましょうか? セバスチャンさんとも共有いたしましたが、これまでの薬草の報酬、これから予想される報酬から考えると、かなり余裕はありそうですが」
「そうですね……」
それなりにお金を使う事もあったし、これから使う事もある。
家の建設費とか、その他諸々はこれからクレアやセバスチャンさんに支払わなければいけないけど、それを差し引いてもまだ余裕はあるはず。
給金の発生はランジ村に行ってからになるが、その先に予想される俺への報酬だけでなく、現状の報酬でも十分に給金が払えそうなのは、手早くセバスチャンさんから財政状況を共有してくれたキースさんも知っているようだ。
だからといって、限界まで人件費に充てるというのも違うけど――。
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