レオの気が済むまで甘えさせました
「フェリーとフェンは、裏庭でぐっすり眠っているようですね」
「まぁ、激しい戦闘をしていましたから。怪我はしていませんけど、あれだけ動けば疲れるんでしょう」
フェリー達は夕食を食べるだけ食べた後、へそ天状態で裏庭に転がっていたからなぁ。
お互いに怪我をしていなかった以上、加減はしていたんだろうけどそれでも、あれだけの戦いをしたんだから疲れるのも無理はない。
今頃、楽しい夢でも見ている事だろうな。
……戦う時は凛々しく、フェンリルの凄さを感じたけど……お腹を見せて転がっていたフェリーとフェンには、相変わらず野生を感じなかったけど。
「ワフゥ、ワフワフ」
「軟弱者って……レオだから言えるんだろうな、ははは」
リーザとじゃれ合いながらも、こちらの話を聞いていたレオは、溜め息を吐くように鳴いた。
レオから見ると、あれくらいの戦いでも大した事はなかったのかもしれないけどなぁ。
「すぅ……すぅ……」
「ん?」
「寝ておられますね」
「ワフ」
そんな風に話していると、何やら規則正しい声というか息遣いが聞こえる。
もしかしてと思い、ライラさんと一緒にレオの方を見てみると、リーザが気持ち良さそうに寝入っていた。
「リーザはずっとはしゃぎっぱなしだったから、疲れたんでしょう。よいしょっと……」
「タクミ様、私がリーザ様を……」
「これくらいの事はさせて下さい。まぁ、父親代わりとしてやりたいんですよ」
「……むぅ」
寝ているリーザを抱き上げて、ベッドに運ぼうとする俺に、ライラさんがやると言う。
けど、可愛い寝顔のリーザを運ぶのは、父親代わりをしている俺の特権……と言うと大袈裟だけど、辛い事とかではなく楽しい事の一つでもあるからな。
ライラさんは、不満そうに頬を少しだけ膨らませていた。
「クゥーン……キューン」
「お、どうしたレオ?」
リーザをベッドに寝かせ、これくらいならと毛布を掛けるのをライラさんに任せる。
その後、挨拶をして退室するライラさんを見送って……さて、俺もそろそろ寝るかな、と思ったらレオが急に甘えるような鳴き声を出した。
「ワフ。キューン、クゥーン」
そのまま鳴きつつ、レオが頭を俺の体に擦り付けるようにする。
撫でて欲しい時や構って欲しい時など、レオが単純に甘える仕草だな……小さい時からよくやっていた。
「ははは、そうか。甘えたくなっちゃったか。そういえば、フェリー達を撫でている時に後でって言ってそのままだったからな」
「ワウゥ」
「わかったわかった。よしよし……」
「クゥー……」
そういえば、自分も撫でて欲しいと主張していたレオを後回しにしていたっけな。
頼りになる相棒に、愛想を尽かされちゃいけないし、ここは眠くなるまで存分に構ってやるとしよう……リーザを起こさないように、動き回ったり音をたてたり、遊んだりはできないけど。
いやまぁ、レオが俺に愛想を尽かす事なんてないって、信頼しているけど。
「キューン、クゥーン……」
「レ、レオ……そろそろいいんじゃないか?」
「ワウゥ?」
「くっ、レオにそんな目をされたら断れないっ」
「クゥーン」
夜も深くなり、いつもなら既に寝ている時間になっても、俺が眠気を訴えても、レオの甘えたがりは収まらなかった。
そういえば最近、リーザやティルラちゃんと遊ぶのに任せていたし、リーザの前ではあまり俺に甘える事がないから、なのかもしれない。
マルチーズの頃に戻ったような、俺に甘えたり期待している目をされて根負けし、結局随分遅くまでレオを撫でたり構い続けてやった。
その間、ずっと部屋に響いていたリーザの安らかな寝息を羨ましく思いながら……当然ながら、翌日は寝不足になってしまったけど、レオが皆に驚かれるくらいご機嫌だったので良かったと思おう。
「さて、ウィンフィールドさん。ウィンフィールドさんの事が聞きたいのですが……」
「私の事、ですか……?」
フェンリル達を風呂に入れてから数日、リルルがシェリーと同じように風呂を気に入り、一日おきくらいに入りたがるようになったのはともかくとして……。
使用人候補さん達の選択をする日。
これまでにクレアやセバスチャンさん、ライラさん達とも相談し、ウィンフィールドさん以外の事は決めたし、メイド長の事をジェーンさんに話したりもした。
さらに、ヴォルターさんに物語を作ってみてはと提案し、考えてもらう時間を作ったりもしたけど……ともかく、使用人候補さんの中で一番気になるというか、様子見となっていた人。
ウィンフィールドさんと直接話してみようという事になった。
まぁ、俺は誰かの所作を見てその人の内面を鋭く見抜く……なんて事ができるわけではないので、思い切って話をした方が早いだろうとの結論だ。
俺の部屋に呼んだウィンフィールドさんを、椅子に座るよう促しつつ、話を切り出す。
ちなみに部屋には、他にライラさんとゲルダさんがいる……実は窓の外に、クレアとセバスチャンさんがレオとリーザと一緒に隠れていたりするけど、それはウィンフィールドさんには内緒だ。
配置として、俺が座っている横にライラさんが立ち、テーブルを挟んだ向かいにウィンフィールドさん。
さらにウィンフィールドさんの後ろに、ゲルダさんが壁を背に立っていて、すぐ近くの窓からクレア、セバスチャンさん、リーザとレオが覗いている。
最初は窓から覗いて監視をするはずじゃなかったんだけど、もしもの事があったらとランジ村で以前オークと戦った時の事を出されて、俺の大丈夫だろうは信じてもらえなかった……悲しい。
まぁ、あの時は本当に何もないと思って、レオやフィリップさんを屋敷への連絡役になってもらった結果、怪我までしてしまったからなぁ……クレアもリーザも、危険な感覚はないと言っていたのに。
何はともあれ、クレア達からは後ろ姿しか見えないけど、窓を少しだけ空けて話声は聞こえるだろうし、変な気配を出したり動きを見せたら、すぐに動き出すための監視って事だ。
あ、こらリーザ、俺に手を振るんじゃない……ウィンフィールドさんが振り返ったらバレるから……。
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