フェンとリルルを洗う番になりました
体が大きなフェンリル達や、レオとシェリーを一緒に洗う場合は外で洗っても気にしないし、その方がスペースに余裕が持てそうだと、クレアやセバスチャンさんに言って、二人は納得。
多少、水を運ぶ手間がかかってしまうけど……ブラッシングを丁寧にするからと言えば、レオが魔法で出してくれそうでもあるしな。
とにかく、今から急遽風呂場の広さを変更する必要はない、という結論になった。
ただこの時、ふと思ったんだけど……露天風呂を作ってみるのもいいかなとか頭に浮かんだ。
この世界の空を見上げながら、ゆったり外で風呂に浸かるというのも良さそうだなぁ。
まぁ、場所はなんとかなっても手間はかかるし、その辺りは追々考えて行けばいいかと、頭の中だけの考えで保留にしておいた。
他にもやる事があるんだから、そういう事は落ち着いてからだな……露天風呂を作るにしたって、お湯をどうするかとかの問題もあるはずだし――。
「ガウ?」
「ガウゥ」
「キャゥー!」
「お、きたきた。さて、やるかな」
「シェリーも一緒なのね。後でゆっくり洗ってあげようと思っていたのだけど……」
「リーザ達が楽しそうにしているし、リルルやフェンと一緒に入りたかったんだろうね」
ライラさんや使用人さん達に連れられて、風呂場にきたフェンとリルル。
そのリルルの背中には、尻尾をフリフリしているシェリーが乗っていた……俺もシェリーは後でクレアが洗うものだと思っていたけど、まぁ、ついでだし問題ない。
シェリーは風呂が好きらしいから、レオとは違って楽しそうだしな。
「うぅ……水をかけて、怒ったりはしない……しませんか?」
「大丈夫ですよ。な、フェン?」
「ガウ!」
「ひっ!」
フェン達と一緒に、交代して入ってきたヴォルターさん。
他にもキースさんやシャロルさんなど、先程いなかった使用人候補さん達も一緒だ。
だけど、フェンの担当になったヴォルターさんは、桶に入った水をかけるのを躊躇している……というか怯えている。
そろそろ、これくらいでは怒ったり何かされる事はないとわかって欲しいなぁ。
「フェンもリルルも、大丈夫そうだな……」
ヴォルターさんの事は、溜め息を吐いていたセバスチャンさんに任せ、先程と同じように手本を見せながら順序だてて洗い方を皆に教えて行く。
フェンとリルルは、レオから聞いていてもシェリーが喜んでいたのもあるんだろう、特に風呂を嫌がる様子はなく、おとなしくして目と口を閉じてくれていた。
一度、全体を洗った時に体ブルブルをしてもらったけど、むしろ爽快感のようなものを感じている様子でもあったな。
水飛沫に、またヴォルターさんが怯えていたりもしたけど……。
「キャゥー!」
「シェリーも一緒だねー」
「おぉ、シェリー泳げるようになったんですねー!」
体が小さいため、というよりクレアがシェリーを洗うのを担当してくれて、それが終わったら勢いよく広い湯船に飛び込んだ。
フェンやリルルが洗われるのを、お湯をかけあって遊びながら見ていたリーザとティルラちゃんは大喜びで、シェリーの所へ。
森に行った時は、川で溺れかけていたシェリーはいつの間にか泳げるようになっており、見事な犬かきを披露して得意気だ。
とは言えさすがに、湯船で泳ぐのは……。
「こらこら、さすがに湯船で泳ぐのは行儀が……」
「ふふふ、一緒に練習したから泳げるようになったんですよ」
「クレア……まぁ、いいか」
いくら広いとはいっても、行儀が悪いと注意しようとしたら、クレアが微笑みながらちょっと自慢するように胸を反らしていた。
……こちらの世界では、お風呂で泳ぐのがマナー違反とか、そういう考えはないのかもしれないな……楽しそうだし。
「森の川で泳げなかったのが悔しかったらしくて、私と一緒に入った時にはいつも練習していました」
「へぇ~……そういえば、フェンもあんまり泳ぎは得意じゃないようだったけど、シェリーは頑張ったんだね」
「はい!」
クレアと一緒に、と邪な想像をしそうなのを堪えつつ、シェリーと同じくちょっと得意気なクレアと話す。
俺の言葉に嬉しそうに頷くクレア……シェリーが褒められて、自分の事のように嬉しいんだろう。
俺も、レオが褒められると嬉しいから、気持ちはよくわかる。
フェンも確か、別れる時に川へ落ちてほとんど溺れている感じだったから、フェンリルは元々泳ぎが得意じゃないんだろう。
それでも、泳げるように頑張ったんだから、素直にシェリーとクレアを褒めたい。
「私もシェリーと一緒に泳ぎたかったんですけど……ちょっと深さが足りませんでした」
「それはまぁ、そうだね。お風呂だからね……ははは」
残念そうに呟くクレアに苦笑する……さすがに、人間用の湯船は泳ぐのに十分な深さはない。
広さはあるから、シェリーくらいなら存分に泳げるだろうけど。
とはいえ、湯船で泳ごうとするのはどうかと思う……と考えるのは、俺が日本人で日本の風呂文化に馴染みが深いからだろうか?
「シェリー凄いねー! 私も……あぶぶぶぶ」
「リーザちゃん! ふぅ。違いますよリーザちゃん、こうやって泳ぐんでぶぶぶぶ……」
「キャウキャゥ!」
シェリーを見て自分達も泳ごうと思ったのか、リーザとティルラちゃんも犬かきにチャレンジ。
クレアが泳ぐには深さが足りなくても、まだ小さい二人にはちょうどいい深さだったようだ……だけど、さすがに初めて挑戦していきなりうまくいくわけもなく。
二人共沈んでまともに泳げず、お互いでお互いを引き上げて助けるという事態になって、シェリーはそれを見て優雅に泳ぎながら笑うように鳴いていた……犬かきで優雅と言うのも微妙だけど。
あと、リーザは獣人の本能的な事かもしれないけど、ティルラちゃんはクロールとか平泳ぎとかの方がいいんじゃないかな? まぁ、こちらの世界にそういった泳ぎ方があるのかわからないけど。
……後で聞いた話によると、川で泳いだりするくらいはあるらしく、人間が泳ぎを習得する事もあるらしい。
ただしその泳ぎ方は、衣服や荷物を頭に括り付けたり水に浸けないようにしつつ、顔を水面に出して体を横にして泳ぐとからしい……古式泳法かな?
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