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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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アロシャイスさんにスラムの事を聞きました



「いいですか? 飢えている者達のやる事です、加減なんてしません。もし弱っている人物に施しを与えたとして、同等かそれ以上に弱った者達が襲い掛かる可能性が高いのです。食べ物や金銭が奪われるだけであれば、まだ良いのですが……最悪の場合、施しを受けた者は奪おうとした者達によって……」

「……」


 どうなるかの結末を話そうとして、一度こちらに視線を向けるアロシャイスさん。

 本当にこの先をティルラちゃんに話していいのか、迷ったんだろう……俺は声を出さず、ただアロシャイスさんに頷いた。

 こうして離れて話そうとする時に、クレアからティルラちゃんにスラムの事を教えるためにも、ちゃんと伝えて欲しいと言われていたから。

 まだ幼いティルラちゃんに教えるには、早い内容じゃないかとは思うが……スラムをどうにかしようと考えているのだから、いずれ知る事になるだろうとも思う。


「畏まりました。――奪おうとした者達の容赦ない攻撃によって、殺されてしまいます」

「っ……そんなっ!」

「……リーザ様は、知っておられたようですね」

「スラムで暮らしていて、似たような状況を見ていたのかもしれません」


 アロシャイスさんから伝えられる言葉に、両手を口元に当てて驚くティルラちゃん。

 フィリップさんは、クレアやレオと一緒にこちらの様子を見ているリーザに、ちらりと視線をやった。

 泥水だとか、ゴミを漁るみたいな事を言っていたからな……こういう、スラムの過酷な面を知っていてもおかしくない。


 リーザをアロシャイスさんの話から遠ざけ、レオやクレアに任せたのは、スラムでも特に辛い記憶になるだろう部分を聞かせたくなかったからだ。

 今日のリーザは、レインドルフさんの件ですでにいっぱいいっぱいだろうし、わかっている事を改めて話す必要もないだろうからな。


「ティルラお嬢様には、酷な事かもしれません。ですが、スラムと関わるのであれば、こうした事も知っていなければいけません」

「はい……」


 スラムの人達が、まっとうに生活できるように考えるのであれば、アロシャイスさんの言う通り知っておかないといけない事だと、俺も思う。

 自分のやろうとしていた事が、どのような影響を与えてしまうのかを考え始めたんだろう、ティルラちゃんは驚いた後すぐに落ち込んだように肩を落とした。


「そして、ティルラお嬢様……いえ、公爵家の者としての事も考えねばなりません」

「うん?」

「公爵家の……ですか?」


 俺が考えていた事をほとんど言ってくれたアロシャイスさんは、続いて公爵家の話を始める。

 そこまで考えていなかったため、俺にとってもちょっと予想外で、思わず声を漏らした。


「はい。公爵家の者が誰かに施しを与える。それは、領民へ不公平感を与える事にも繋がります。公爵家の者は必ず領民に対して公平に接しなければいけない……というのは理想であり、難しい事ではあります。ですが、ティルラお嬢様が誰かに施しを与える。その話が伝わり、自分も何かをと求める者が出る事もあり得ます。領民同士での嫉妬心なども生まれ、大きな反感となる可能性に繋がります」

「そんな……」


 貴族として、人の上に立つ立場として、公平な見方をしなければいけないというのはわかる。

 誰かを特別に贔屓しすぎる人を、領主として信頼はできないからな。

 まぁ、わりかし特別扱いされている俺がこう考えるのもなぁ、とは思うが……レオというシルバーフェンリルがいてくれているからだと思っている。


「少々言い過ぎましたが、もしかするとそうなるかも、という可能性を考えておくのは大事な事です」

「そうですか……難しいのですね」

「はい。旦那様もクレアお嬢様も、ある程度自由になされる事は多いですが、それでも領民達の事を常に考えておられます。そうして、公爵家が領民達からの信頼を得ているのです。ですが……」


 一旦言葉を止め、周囲へと視線を巡らせるアロシャイスさん。

 その目付きは会ってから初めて見るくらい、優しい目付きをしていた。

 何か、厳しい事以外にも伝えたい事があるのかな?


「とはいえ、ティルラお嬢様の優しさは誇るべきだとも思います。施しを求められて、本当に与えようとできる人物は多くありません。自分の事で精一杯な人が多いですから」

「でも、私はよく考えずに……」

「多少は考える必要はあるでしょうが……それを補佐するために、我々使用人がいるのです。ティルラお嬢様の事を補佐し、可能性を伝える。もし、ティルラお嬢様が必要であると感じたのならば、先程の者に施しを与えるのでもよろしいのです。その後に波風立たないよう、事を収めるのも執事としての役割です」

「そう、なのですか」

「はい。ですので、ティルラお嬢様はお心のままに、やりたいようにやるのもよろしいと存じます。……傍にいる者が大変なので、少々加減をして下さるとありがたいですが。以前の事も聞き及んでおりますが……周囲の者との相談をする事も、大事ですからね?」

「……はい、わかりました! 私一人で考えず、周りの人達とも相談するようにします!」

「はい。それで良いのです」


 補助をするため、その後の事を全て使用人が……というのはちょっとどころではなく大袈裟な気もするけど……落ち込んでいるティルラちゃんを元気づけるためなんだろうな。

 それに、実際主人の不足している何かを補う役目も、使用人さん達には求められるから。

 人一人でやれる事、考えられる事には限界がある……だからこそ、周囲の人、支えてくれる人と話し、相談をして物事を決める事が大事なんだろう。

 俺と同じく、アロシャイスさんがティルラちゃんに語り掛ける内容を一緒に聞いている、フィリップさんもうんうん頷いているので、公爵家独自のような考え方っぽいけど、好ましく思えた。


 俺もこの先使用人さんを雇って、働く従業員を雇って指示を出したりするんだから、参考にしよう。

 ……使用人さんと従業員では、また違うのかもしれないけど。

 慣れない事が多過ぎて、絶対色んな人に迷惑をかけてしまうだろうからなぁ……相談や話はきちんとしておかないと――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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