ギフトの事を話しました
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アルフレットさんを始め、何人かが地面に生えたラモギを確かめている。
「間違いなくラモギです。ですが、どうやって……?」
「何もないように見えた地面から、生えてきましたけど……あらかじめ植えていたのでしょうか?」
「だとしても、あの瞬間でこれだけ生き生きと成長するのはおかしいですね」
「元々、成長していたラモギを土の中に隠していた、とかは考えられませんか?」
「それだと、土に埋めるのでいたるところに土が付いているはずですよね。でもこれはそんな事はなく、さらに言えば、茎や葉も折れてはいない……」
本邸から来た使用人候補の皆さんは、専門とまでは行かなくともそれなりに薬草や薬の知識があるらしく、ラモギを近くで見て触って本物かを確かめたり、『雑草栽培』で作った過程を不思議がっている様子。
これに関しては、エッケンハルトさんが役に立つ人材として選んだんだろう……薬草や薬を制作するわけじゃないけど、知識がないよりはあった方がいい。
ヴォルターさんは、書物を読んで得た知識だろうけど。
ギフトだと知らなければ、手品のように見えたんだろうか? 何もないはずの地面から植物が生えて来るなんて、この世界に来るまでだったら俺も手品だと思っただろうけど。
「これが俺の能力、ギフトです。『雑草栽培』という名ですね。一部の植物を何もない所から作り出す事ができます」
「『雑草栽培』……ギフト、ですか?」
「ギフト、本当にそのような能力を持つ人がいたのですね」
「伝承などでは語られていますが、実際にある能力なのか半信半疑でした。実際目の当たりにする事ができるとは……」
使用人候補の皆さんに、これがギフトの力である事を明かす。
皆驚きと戸惑いが混じったような……どう反応するべきかを迷っている様子だ。
まぁ、薬草を栽培する能力って言われても、そして実際に見ても地味だからな……レオやフェンリル達と会った時のような衝撃はないか。
「ギフト……まさか、だからこそランジ村で薬草畑をと……?」
「その通りです、ヴォルターさん。制約というか、作れる数や物に制限はありますけど……これを上手く使えば、薬草を量産する事が容易にできますから。気候や土に左右されず、様々な薬草を作り出せます。まぁ、加減しないと砂漠化するので、気を付けないといけませんけど……」
ヴォルターさんが、ランジ村で薬草畑をする理由の一つに気付いたようだ。
『雑草栽培』があれば、元手はかからないし薬草を探す手間もかからず、量産する事ができる……大量に作り過ぎてランジ村周辺を砂漠化しないように、注意しておかないといけないけど。
「ちなみにですが、タクミ様は高価な薬草……誰もが知っていて誰もが欲しがる、ロエも作り出す事ができます」
「ロエ……ロエですか!?」
「ロエと言えば、薬師の憧れ。群生地を見つける事ができれば、一攫千金も夢ではないと言われているあの……?」
セバスチャンさんの補足に、シュバッ! という音が聞こえそうな程の勢いで、全員が目を見開いて俺を見た。
ラモギはありふれた植物だったけど、ロエは希少だからだろう……そっちを作れば良かったかな?
ともかく、ロエが一攫千金という程有名だったとは知らなかった。
まぁ、家が建つくらいの値段で取引されるんだから、群生地を見つけた人は確かに一攫千金を得られるか。
「まぁ……あはは、初めて薬草を栽培しようとした時、作れてしまいましたね……」
皆から一斉に視線を向けられて、苦笑しながら話す。
あ、でも本当に初めて作った薬草は、森の中でクレアが探していたラモギだったっけ……あれは無意識だし、『雑草栽培』を意識して初めて作ったと考えれば、間違いじゃないか。
「シルバーフェンリル……レオ様にフェンリル達。さらにはコカトリスの子供に、カッパーイーグル。それだけでなく、それらを従えるタクミ様はギフトを持っている……」
「ギフトを持っている方だからこそ、従っているのかもしれませんが……」
従えているわけじゃないし、シェリーやラーレはクレアとティルラちゃんとの従魔契約をしているんだけどな。
レオのインパクトが強すぎて、そんな風に見えたのかもしれないけど。
あと、レオは従えているわけではなく、長年の相棒だしギフトがあるからとかは関係ない。
今言っても、情報を詰め込み過ぎて抜け落ちそうだから、そのうちしっかり説明しよう。
「……さすがに、一度に色々と見せ過ぎましたかね?」
「ですが、タクミ様の下で働くか、この屋敷で働くか、いずれにしろ知っておかないといけない事ですからな」
「お父様が、最初から伝えていれば本人達ももう少し楽だったのでしょうけど……はぁ」
愕然としているのか、呆然としているのか……とにかく初日で色々詰め込み過ぎたかな? と心配になってセバスチャンさんとクレアに話し掛ける。
セバスチャンさんの言う通り、どちらで働くにせよ知っておかなきゃいけない事だし、いずれは知る事だから問題なさそう……かな?
クレアが溜め息を吐いているけど、本当にその通りでエッケンハルトさんがもう少し情報を伝えていて来れば、と思わなくもない。
前向きに受け止めたら、驚かせるためだけじゃなくて、俺やレオに関する情報を漏らさないために報せなかったと考えられるけど……せめてここに来る人達には教えておいて欲しかった。
「と、とりあえず、色々考える時間が必要そうですね。あと、屋敷に到着したばかりで疲れているでしょうし……」
「では、私が」
「すみません、お願いしますライラさん」
何はともあれ、伝えるべき事は大体伝えたので、この場をお開きにして使用人候補の皆さんには、休んでもらおう。
部屋は他の使用人さん達と同じ所に用意されているらしく、ライラさんの案内でそちらへ行ってもらう事にした。
ライラさんならお世話が好きだし、俺やレオの事も近くで見て知ってくれているので、何か質問があったとしても上手く答えてくれるだろう……よろしくお願いします。
「どうでしたかな、タクミ様?」
「うーん、今のところ誰を選ぶかまではあまり。でも、レオの事もそうですけど、皆辞退したりとかしないですかね?」
ライラさんに連れられて、屋敷内に入って行く使用人候補の皆さんは、こちらやレオの方をチラチラと見ていた……まぁ、気になるのは当然か。
何人かは、やっぱりまだレオ達を恐れる雰囲気だったので、俺が選んでも働いてくれるかはわからない。
レオやフェンリルが怖いから、働きたくないと思っても不思議じゃないからなぁ……可愛いのに――。
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