レオに注意という名の遊びをしました
「あと、ゴムのおもちゃも入れたら形が変わるし……まぁ、レオが気にしないんだったらいいけど、枝とかがあったら、入りきらないだろう? それは入れなくていいから。誰も取らないよ」
「ワフ」
ゴムはそもそもが鍋型でおもちゃとして微妙に噛みづらそうだし、大きさも少しレオには小さいようだから、また今度新しくするとして、さすがに引き出しの中には入れないように言っておく。
おもちゃはフェンリル達くらいなら丁度良さそうだったけど、さらに体の大きいレオにはまだ小さいからな。
あと、レオのおもちゃを取ろうとする人なんて、いないだろうから使わない時は部屋の隅にでも置いておけば大丈夫だ。
「はぁ、まったく……レ~オ~……?」
「ワ、ワフ!?」
俺の注意にレオが頷いた後、溜め息を吐く。
その後低めの声を意識してレオを呼ぶと、大きな体をビクッと震わせて尻尾を垂らしていた。
シルバーフェンリルになっても、レオはレオだなぁ……マルチーズの時は、項垂れたり俺から逃げたりと色々あった。
「うりゃ! こうしてくれる! ほらほらほら!」
「ワウ!? ワ、ワフ、ワフワフ~」
「ははは! ほれほれ、反省しているならお腹を見せろー!」
「ファフ~」
叱りつけると見せかけて、レオの体に抱き着いてワシワシと撫でる。
時折、足の付け根や耳の付け根を引っ張ったりとマッサージしてやりながら、一瞬だけ戸惑う鳴き声を上げた後気持ち良さそうにするレオの正面に移動し、頬を引っ張る。
お腹を見せろと言う俺に返事をするレオは、頬が引っ張られているせいで変な声になっていたが、ともかくすぐにひっくり返ってお腹を見せた。
「ほーらほら、ワシャワシャワシャー! からの、お腹を撫でるだけと見せかけて……うりゃ!」
「ワフワフ~……ワ、ワフ!」
「ははは! やっぱり肉球をくすぐるのはこそばゆいかー。でも、これは褒めているんじゃないからな、だからおとなしく我慢するんだ!」
「ワフ、ワフ~」
仰向けになったレオのお腹を、両手で撫でつつ、ピンと伸ばされていた前足を捕まえて曲げさせ、足の裏……プニプニした肉球を両手の指先全部を使ってくすぐる。
肉球は敏感なため、さすがにくすぐったかったかったのか、すぐにレオが前足を引いた。
けど、反省を促すためという名目で我慢するようにいい、再び前足を捕まえてくすぐる。
鳴き声をあげながら、我慢するように前足をプルプルさせるレオ……これ、ちょっと楽しいかもしれない。
「パパ、お風呂あがったよー」
「失礼します、タクミ様。リーザ様のお風呂を済ませました……レオ様?」
「あー、パパがママと遊んでる!」
「お、リーザ戻ったか。――ライラさん、ありがとうございます」
「いえ。ですがこれは……?」
もはや叱っているのか褒めているのか、もしくは遊んでいるのかわからない状態で、レオの相手をしてやっていると、風呂から出たリーザがライラさんと戻ってきた。
すぐに俺達の様子を見て遊んでいると思ったリーザは、こちらに駆け寄ってくる。
ライラさんにお礼を言いつつ、はしゃいでいた理由を説明、ついでに棚の引き出しを一つレオ専用にする許可も取った。
まぁ、レオのする事を拒否する人達じゃないし、そもそも部屋の中の物は汚すとしても自由に使っていいからとの事だ。
汚したらライラさんが掃除する、とか考えているみたいだけど、さすがに過剰に汚したりはしません。
「お、リーザ。一緒にレオの足の裏をくすぐるんだ!――ライラさんも一緒にどうですか?」
「うん、わかった!」
「よろしいのでしょうか……?」
「ワウワウ!」
「レオも喜んでいますから、大丈夫ですよ。――ほらほら、どうだレオー!」
「ワウ!? ワフワウ!」
俺だけでなくリーザも加わる。
ライラさんを誘ったら、本当にいいのか躊躇っていた……レオからは止めて欲しそうな声があがるが、それはスルー。
くすぐったいのを我慢して、全身もプルプルさせ始めたレオを喜んでいるとして、さらにライラさんを誘うと、おずおずと手を出してお腹を撫で始めた。
くすぐる側じゃなくてそっちかぁ……まぁ、レオは気持ちいいのかくすぐったいのか、よくわからない感覚に戸惑っているようなので、それはそれでありだな。
「ワフ、ワフ!」
「あはははは! ママおもしろーい!」
レオの喜んでいるのか、止めてと言っているのかよくわからない鳴き声と、リーザの笑い声を聞きながら、夜は更けていった。
ちなみに寝る時、レオが妙にぐったりしていたのは朝からラクトスまで走って……といった疲労ではなく、散々俺やリーザにいじられたからだろう――。
――翌日は薬草を作りつつ、鍛錬をしたりフェン達のゴムおもちゃを作ったりして過ごす。
リルルが特に喜んでいたようにも見えるけど、フェンリル三体にレオが並んで、それぞれゴムを前足で押さえながらハムハムしているのは、なんとも面白い光景だった。
ゴムが好評なら、丸いゴムボールとか作れればもっと遊びに幅が広がるかな……リーザやティルラちゃんだけでなく、子供達と遊ぶのにも良さそうだ。
ただ空気を入れないと弾まないから、内側に空気を入れて密封する方法をなんとか探してみよう。
さらに翌日、昼食を食べた後に服などの身だしなみをライラさんに確認してもらう。
「はい、問題ないかと」
「ありがとうございます」
ライラさんのお墨付きをもらって、お礼を言う。
今日は、俺が雇う予定の執事さん達が、屋敷に到着する日だ。
今朝、昼過ぎに到着するとの先触れが来たので、そろそろだろう。
第一印象は大事なので、だらしない所を見られないために身だしなみを整えていたってわけだ。
「えっと、とりあえず全員客室に行ってもらうから……準備が整ったら俺が入室する、と。あとは……」
「ワフ」
「あぁ、すまないレオ。もう少し落ち着かないとな」
屋敷に執事さん達が来てからの手順を、口に出して確認。
レオが顔を寄せて、俺が落ち着くように鳴かれた……近くで俺が緊張し過ぎていると、レオにも心配をさせてしまうな。
レオの体を撫でつつ、緊張に固まってしまいそうな内心を落ち着かせるよう努めた――。
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