フェンリル達も興味を持ったようでした
「鍋の形だから、少し不格好だけど……レオ、どうだ?」
「ワフ。スンスン……ワウ!」
「匂いは問題ないようだな。それじゃ、軽く噛んでみるか?」
「ワウ。……ガフ、ガフ……ワウ! ワフワフ、ワウー」
「お、大丈夫そうだな」
鼻先で地面に落としたゴムを嗅いだレオからは、嫌な臭いはしないとの事。
それならと、バスケットボールくらいの大きさになったゴムを、試しに噛んでもらうと今度は尻尾を振って喜んでいる様子で鳴いた。
レオによると、全力で噛めば穴を開けられるだろうけど、布とかよりも丈夫そうだし、噛んでて楽しいそうだ。
よしよし、これでレオのおもちゃが完成だな……不満を解消できて何よりだ。
「タクミさん、結局あれは何なのでしょうか? レオ様が食べるのですか?」
「いやいや、ゴムは食べないよ。――レオ、噛むのはいいけど、飲み込まないようにな?」
「ワフ! ガフ、ガフ……」
「ママ、楽しそう!」
ゴム特有の臭いがなくなったからか、近付いて来て尋ねるクレア、後ろにはセバスチャンさんが興味深そうにしていて、リーザやライラさん達もいる。
さすがに噛んでもいいとはいえ、食べ物ではないと苦笑しながら答え、レオにも飲み込まないように言っておく。
尻尾を振って返事をするレオは、前足も使って固定しつつガジガジと噛んでいて、楽しそうだ。
「グルゥ……」
「ガウ? ガウゥ」
「キャウ!」
「おっと、皆こっち見ているなぁ。まぁまぁ、順番に作るから」
レオが楽しそうに鍋型のゴムを噛んでいるのを見て、集まる羨ましそうな、自分にも……のような視線。
全部フェンリル達のものだけど……リルル以外は鳴き声まであげているし。
それに苦笑しながら、フェンリル達の分のおもちゃの製作に取り掛かる。
ゴムとかおもちゃとか、フェンリル達は知らないはずだけど、レオが嬉しそうだから興味深々なんだろう。
シェリーは布で作った物があるのに……リルルは鳴き声をあげなかったけど、こちらを見ているから同じく興味があるんだと思う。
とはいえ、さすがに追加で四つ連続で作れる程『雑草栽培』を使うのは厳しそうだったので、今日は群れのリーダーであるフェリーのだけにしたけど。
シェリーは布ボールがあるから我慢してもらって、フェンとリルルは明日作るから、すまないけどちょっとだけ我慢してくれ。
ちなみに、作った物を皆で共有というのは、フェンリル達が嫌がった。
誰かが噛んだ物は不潔だから……とかではなく、自分用の物が欲しいって感じだったな。
まぁ、レオが我が儘を言うな、見たいに吠えて諫めようとしたんだけど……そのレオ自身が絶対に自分のゴムおもちゃは渡さない、ってスタンスだったからあんまり説得力がなかった。
それでも渋々従おうとするフェンリル達だけど、さすがにレオに注意して全部用意すると伝えた、皆、ティルラちゃんを探すのを手伝ってくれたから、ご褒美だ。
「やってみないとわかりませんが、ゴムを使うと階段の滑り止めなんかにも使えるかもしれません」
「階段にですか?」
「滑り止め……?」
フェリーのゴムおもちゃを作りながら、クレアやセバスチャンさんとゴムの活用法を話す。
おもちゃ作りはとりあえず一個だけだし、レオ用の試作も作った後だったから、集中する必要もそこまでないからな。
ちなみに、作ったゴム茎を引っこ抜く作業はミリナちゃん、樹液を入れた鍋を温めるのはライラさん達がやってくれている……わざわざ薪まで持って来てくれた、ありがたい。
「今は階段って、絨毯があって滑りにくいですけど……やっぱり転ぶと危ないですからね。ゴムを使うと滑りにくくなるんじゃないかと」
「そういった事にも使えるのですね。急いでいる時、何度か滑って落ちそうになった事もあります」
「私もそうですし使用人達も、そういった経験はあると思います」
クレアやセバスチャンさんも、階段で転びそうになった経験はあるようだ。
階段で落ちて怪我をする、なんて日本でもよく聞く話だからなぁ、最悪の場合も起こったりする。
やっぱり、高い場所から落ちるっていうのは危険だ。
屋敷の床は大理石のような石作りだけど、階段も含めて多くの場所に絨毯が敷いてある。
表面が滑らかな石よりは滑らなくなるけど……どうしても滑ったりする事はあるから。
ライラさんと一緒に、樹液の入った鍋を温めているゲルダさんは、俺の話を聞いて体をビクッと震わせていた。
まぁ、何もないところで何度も転べる人だから、階段でも経験があるのんだろう。
「逆に、床に使うんじゃなくて靴に使ってもいいですね。両方使うと、さらに効果が上がります」
「でしたら、もしかするとタクミさんが考案している、スリッパにもですか?」
「うん、使えるよ。それ用に加工しないといけないけど、レオに作ったおもちゃを見れば多分大丈夫そう」
レオが今も噛んでいるゴムおもちゃは、鍋から外す時にも感じたけど、俺が知っているゴムとあまり変わらない触り心地だった。
多分、滑り止めとしては効果を発揮してくれると思う。
「滑らない靴ですか。それは魅力的ですね……」
「あ、でも外ではあんまり向かないかもしれません」
「それはまた、どうしてですかな?」
「土とか、砂が原因ですね。同じように、濡れても効果がなくなりますし、むしろ滑りやすくなるかも?」
滑りにくいはずの表面に土や砂が付くと、それが邪魔するんだよな。
まぁ、砂とか細かい物が付きづらい加工とかができれば別だし、アスファルトの道路とかならなんとかなると思うんだけど。
この世界の道は土が基本で、レンガや石畳くらい。
加工もできない、土や砂が付くのが当たり前だから、ちょっと外向きの靴には向かないと思う。
「濡れると滑りやすくなるんですか?」
「濡れても大丈夫な方法も、何かあったとは思うんだけど……俺には加工の仕方とかわからないから。ともかく、濡れるとゴムの表面が覆われて層になって……」
ゴムの専門家でもないんだから、加工の仕方なんてよくわからない。
鍋で熱して……というのは、なんとなく一つの形に成型するみたいな考えでやって、成功しただけだしな。
ゴムだって一種類しかないわけじゃないから、濡れても大丈夫なゴムもあるのかもしれないけど。
濡れて滑りやすくなるのは、水が地面とゴムの間で層になって摩擦が減るからとかなんとか……だったかな。
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