レオ用のおもちゃが作れるか試しました
これまで『雑草栽培』を使って来てわかった事として、既存の植物……本に載っているような、この世界に確実にある植物に関しては、ギフトの力をあまり使わずに作り出す事ができる。
この世界にない可能性が高い物、都合よく欲しい効果の植物とかだな。
疲労回復薬草や、感覚強化の薬草、体力回復や身体強化の薬草なんかがそうだけど、それらは少し多めに力を使う感じだ。
ある程度は連続で作る事ができるけど、一度で大量に作ろうとすると危険っぽい。
さらに、シェリーの怪我を治した時のような、あり得ないと言えるくらい特別な効果を発揮する植物は、連続どころか一つ作るのも危険が伴うってところか。
まぁ、シェリーの時の薬草は、作った後も力を使っていたと推測するに、一つか二つくらいなら作っても大丈夫そうではあるけど。
要は、その後の効果次第でもあるって事だな。
ギフトの力を使う大きさとして、大中小と分けた場合、ゴム茎は中に分類されるんだろうと思う。
「タクミ様、お待たせいたしました」
「ありがとうございます、ライラさん」
『雑草栽培』の事を考えつつ、変な物を作りださないよう気を付けながら、ゴム茎をせっせと作っていると、ライラさんが鍋を持って来てくれた。
鍋は、所々焦げ付いているので、本当に捨てても構わない物をもってきてくれたんだろう。
「セバスチャンさん、火を使っても大丈夫ですか?」
「外ですし、構わないでしょう。少々の事であれば、対処できそうな状況ですし」
「あはは、まぁそうですね。――レオ、フェリーもだけど、延焼させる気はないけど、もししたら頼むぞ?」
「ワフ」
「グルゥ」
鍋を受け取りながら、セバスチャンさんに確認。
建物の近くだけど、レオやフェンリル達がいるから火を使ってもなんとでもなりそうだ。
俺自身注意するし、フェリー達が氷の魔法を使うのを何度か見ているから、問題ないだろう。
というかそもそも、もしもの時のために確認しただけで、危険な事をする気はない。
「それじゃ、鍋にゴムの樹液を溜めて……」
作ったゴム茎を引き抜き、まとめて『雑草栽培』の状態変化で鍋に樹液を注ぐようにする。
さらにライラさんに協力してもらい、適当な枝を集めて焚き火のようにする。
あ、セバスチャンさん、水の用意もしてくれたんですね、ありがとうございます。
「じゃあこの枝に魔法を……ファイアエレメンタル・フレイムバーンアップ!」
「ほぉ、炎を燃やす魔法を使えるようになっておりましたか」
「ブレイユ村に行く時、フィリップさん達から教えてもらいました。っと、こんな感じかな?」
ブレイユ村への移動中、焚き火に火を点けるための魔法として教わったのを、ここで使う。
集めた枝が燃え始めたのを確認して、燃え上がる火から少しだけ距離を離して鍋を温める。
距離を離したのは、熱し過ぎないためだ……初めての事だから、いきなり高熱にさらさずに少しずつ様子を見ながらだな。
「うん、やっぱり熱で溶けるようだ」
「本当ですね。固まりかけていたのが、また水のようになりました」
「ほぉほぉ、面白い現象ですな……」
「ワフ~、ワフ~」
「ママ、ご機嫌だねー」
「レオ様、楽しそうです」
鍋に入れて、空気に触れたからか固まり始めていた樹液が、熱する事で再び液体になって行く。
沸点はわからないけど、沸騰させるほど熱してしまわないように気を付けながら、鍋を揺らして樹液を混ぜた。
クレアやセバスチャンさんは、俺がもつ鍋を覗き込みながら不思議がっていて、レオは鼻歌を歌うように鳴いてリーザやティルラちゃんと一緒に楽しそうにしている。
おもちゃができるのを期待しているからだろうなぁ。
「っと、……あー。これはちょっと。すみません、クレアもセバスチャンさんも、少し離れていた方が良さそうです」
「どうしてで……これは、確かにちょっと」
「結構な臭いですな……ここが室内でなくて良かったです」
熱したために中の性質が変わったのか、懐かしいとも言える匂いが周囲に漂い始める。
ゴム特有の臭いだ。
何度も嗅いだ事のある俺でも、少し顔をしかめるくらいなので、クレア達には厳しいだろうと離れてもらう。
俺が言わなくても、セバスチャンさんは匂いの届かない場所へ、ササッと移動していたようだけど。
「ワフゥ……キューン……」
「レオ、嗅覚が鋭いと辛いだろ? もっと離れていた方が……」
「ワウー!」
「あー、火の近くだから丁度いいな。でも、できるだけ鍋に直接当てないようにしてくれ」
「ワフ!」
レオが嫌そうに鳴いたのを聞いて、ゴムの臭いは辛いだろうと注意する俺の言葉を遮るように、レオからそよそよとした柔らかい風が吹いた。
薬の調合の時にも使っていた、風を吹かせる魔法だろう……風で自分の方に匂いが来ないようにしたわけか。
鍋が冷えたりしちゃいけないので、直接当てないように注意しておく。
「ピピィ!?」
「ピピ!?」
「あ……コッカー達、そっちにいたのか。ごめんなー」
レオが吹かせた風に乗って、ゴムの臭いが行った先でコッカー達が鳴き声を上げ、翼をバサバサとはためかせてこちらに向かってきた。
裏庭に生えている木々の向こうからだから、結構遠くまで匂いが届いてしまっていたようだ。
コッカー達に謝り、しばらく液体になったゴムの樹液を鍋を揺らして混ぜた。
「これくらいかな? あとは冷めるのを待って……お、レオありがとう」
「ワフワフー」
そろそろ混ざり切ったかと、鍋を火から離す。
あとは冷めて固まるのを待つだけ……というところで、レオが吹かせていた風を鍋に直接当ててくれた。
これで、冷えるのも少し早くなるだろう。
「熱すると匂いが出るのは、ちょっと考えないといけないか。ん、丁度良さそうだ」
独特な臭いを発するゴムの樹液は、冷えていくごとに固まって行き、段々と匂いがなくなる。
熱したときに出るものなんだろうけど、同じ作業をすると必ずあの臭いが発生するなら、場所とかも考えないといけなさそうだ。
ちなみに、冷めて固まって行く段階で、樹液からの甘い匂いもなくなっていた……熱した事で、内部の性質みたいなものが変わったのかもしれない。
「おぉ、弾力がある。これを……んー鍋に入れただけだから、取り出しづらいな……よっと!」
固まったゴムは、鍋にくっ付いているのでちょっと取り出しづらかったが、弾力を利用して鍋とゴムの隙間に指を入れて空気を送り込むと、スポッと取れた。
プリンとかをお皿に出す時の要領だな――。
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