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無力ヒーロー  作者: あんこミカン
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第6話 ネムネム・自分のせいで

 「佐久間さん、本当にくるんですか?」


 「来るかどうかは分からん。だが、奴らは1人でいる奴を狙うらしい。だから、お前はここで誘われるのを待ってろ。俺はいつ来てもいい様に見張ってる。


 サイコは1人道路の真ん中に立ち、サイコは電信柱の陰からサイコを見ていた。

 そして3時間が過ぎ、日が落ち始めた。


 「……サイコ、今日はいったん帰るか?」


 「……いえ、僕はもう少し見ていきます。」


 佐久間が諦めかけた時、サイコの視界に仮面をつけた3人組と1人の少年が入った。


 「…佐久間さん、多分いました。」


 「なっ!本当か⁉︎あ、本当だ!」


 佐久間は少し考えた。ネムネムがどれほどの組織かわからない。ここは警察を呼んだ方がいいか…。


 「佐久間さん、僕が行ってきます。多分、僕のクラスメイトもそこにいるので。」


 佐久間が顔を上げると、サイコは宙に浮き、3人組を追っていった。


 「おいサイコ!危険だ。」


 佐久間は呼び止めたが、サイコに止まる様子はなかった。佐久間はためらったが、覚悟を決めサイコに呼び掛けた。


 「サイコ!行方不明者を助けるのは良い事だ!力込めてけ!」


 「はい。では行ってきます。」


 サイコは体に力を入れた。すると一瞬でサイコの姿が消えた。透明化だ。


 「無理すんなよー!」




 仮面の者達は途中、廃ビルに入るとエレベーターに乗って地下5階に降りていった。サイコはテレポートで後を追った。

 後をつけること3分、やっと広い空間にでた。そこには150人ほどの人間がいた。皆、何かに取り憑かれた様に死んだ顔をしている。


 『ネムネム様、新しい子羊が参りました。』


 少年はとても怯えた様子だった。サイコが見兼ねて透明化を解こうとした時、上空から声が聞こえてきた。


 「そうか。君の悩みはなんだい?」


 サイコが上を見上げると、何かが降りてきた。2メートルほどの身長で、マントを纏い、顔は仮面の3人と同じ“眠る赤子”の仮面をつけていた。

 地に降りるとそっと少年に近づき顔を近づけた。


 「そうか、わかったぞ。君は勉強ばかり言う親が嫌になったんだね。」


 少年は図星のようで、とても驚いた顔をした。


 「でも大丈夫。私に任せなさい。ほら、身体の力を抜いて…。」


 ネムネムと呼ばれた者は優しい声をかけながら少年に手をかざし、何かを唱えた。サイコにはその光景が恐ろしく見えた。普通の人には何も見えないが、サイコの目には見えていた。ネムネムが少年に念の様なものを送っている。しかもその念が“真っ黒”に染まっていた。

 ネムネムが少年から手を離すと、少年は不自然な笑顔を浮かべた。


 「眠れる赤子達よ、今この少年の悩みは晴れ、笑顔になりました!」


 『さすがネムネム様!万歳!万歳!万歳!万歳!』


 『万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!』

 『万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!万歳!』


 仮面の者の言葉がかかると、先ほどまで顔の死んでいた人々は一斉に不自然な笑顔になり、万歳と叫び始めた。


 「さて、私の力はわかったでしょう。いつまで隠れているのですか?」


 「……!」


 ネムネムはサイコの方を見て放った言葉は先ほどまでの優しい声ではなく、冷たく、重い声だった。サイコは透明化を解き、手に力をいれた。


 「わかってたんだ、僕の事。ネムネム、お前は何者だ。ここで何をしている。」


 「おお、強気だね。どうやら力を持っているようだ。だが…」


 その瞬間、ネムネムは強い覇気を放った。サイコは寸前でバリアを貼ったが、大きく吹き飛ばされた。


 「半端な力だな。どうだ?悩みを聴いてやろうか?まあ、私は心を読む事ができるから、聴く必要も無いが。」


 「……やめろ!」


 サイコはものすごいスピードでネムネムに突っ込んだ。ネムネムもバリアを貼り身を守った。


 「ほほう、すごい力だな。だが!」


 ネムネムはサイコを念で縛り、念を送り込んだ拳を叩きつけた。サイコはぐったりとし、動かなくなった。


 「皆の者、こいつを抑えろ。」


 30人ほどの人がサイコを抑えつけた。1人、サイコの首を締め抑えている者がいる。マナミだ。


 「ま…マナミ…さん…。」


 「おお知り合いか。そいつもまた悩んでいてなぁ。お前の力の事で。」


 「僕の…力…?」


 「そうだ。そいつは馬鹿な奴でな。自分の夢だかなんだか知らんが、他人の力でいちいち悩み苦しんで。だから私が助けてやったんだよ。」


 サイコは静かに涙を流した。


 (そうか…僕のせいで…。悩ましていたんだ…マナミさんを。)


 「おお、罪悪感を感じているのか?そうだ、そのまま感情を膨らませろ。そして私の糧となれ。」


 「……どういう…事だ……。」


 サイコは苦しながらに声を出した。


 「私は人の不の感情を食い強くなる。こいつらは私に力を与え、感情を忘れた。面白いだろ。見てみろ、この顔を。お笑いだろぉ。」


 サイコはマナミの顔を見た。不気味な笑顔の奥に苦しそうな顔をしている。そんな気がした。マナミだけでない。他の人たちみな…。


 一瞬、サイコから眩しい光が放たれた。と同時に、押さえつけていた人々が宙に浮いた。


 「自分のために…そんな勝ってな理由で、こんな沢山の人を!」


 サイコから先ほどとは比べものにならない力が溢れた。


 「みんなを助ける!これは良い事!」


 サイコは身体中に力を宿し、ネムネムに向かった。


 「今更むだな事を。お前では私に勝てない。」


 ネムネムはまた拳に念を込め、サイコを殴りつけた。しかし、気づけばサイコは自分の背後にいた。自分の拳は腕から切られ、仮面が割れた。仮面の中からは、般若(はんにゃ)の様な恐ろしい顔が出てきた。


 「お前、そんな力を。」


 「今すぐ謝れ。みんなに。人の感情を弄ぶなんて許せない!」


 サイコは怒っていた。己の感情の昂りが超能力に比例しているかの様だった。そして、普段の気弱なサイコはいない。今のサイコは強き意思を持っていた。

 ネムネムは目にも見えないスピードでサイコの周囲を飛び回り、拳を叩きこんだ。当てては離れ、また当てては離れ。しかし、サイコはビクともしない。


 「クソ!なんだその力は!」


 ネムネムはサイコの正面に出て、顔面に重い一撃を食らわした。しかし、同時に繰り出されたサイコの拳もまた、ネムネムの腹部に直撃した。


 「うご!ウウウウゴオオオオ!」


 ネムネムは激しく吹き飛び、お腹に大きな穴が空いた。


 「薄々気づいてたけど、やっぱり悪霊だったんだ。それも、かなりタチの悪い。」


 「ううう、クソオオオオ!」


 ネムネムは立ち上がり、さっきより一回り大きくなった。


 「これで!終いじゃあああああああ!」


 向かってくるネムネムに、サイコは手を向けた。その瞬間ネムネムは弾け、黒い煙を撒きたてながら光になった。


 「……成仏してください。」

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