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無力ヒーロー  作者: あんこミカン
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第4話 良い事パワー2

 工場の中、作業員の者は皆、厚い防護服とマスクを着けていた。そして緑色に濁った水から何かキラキラした物をすくい上げている。その様子を、県知事や役員がその光景をガラス越しに眺めている。


 「よしよし、特に問題はないな。」


 「はい。ツチノコ探しに来た者も全て追い返したと下の者が。」


 「ふっ、ツチノコなどと馬鹿な事を言いおって。そんな生き物、おる訳ないだろ。どこの大学だが知らんが、余計なことを。いいか、この事はくれぐれも機密事項だ。いいな。」


 「御意!」


 「あのさ、意気投合してるとこ悪いんだけど、これなんの作業?」


 「ああ?もう忘れたのか?山の中に金銀財宝が……って誰だ!」


 役員達は後ろに振り向いた。そこには佐久間がいた。


 「誰だお前は!」


 佐久間はネクタイを整えキメ顔をした。


 「よくぞ聞いてくれた。俺の名は佐久間、“佐久間瑛国(あきくに)”!腐った日本を正す『正義のヒーロー』だ!」


 「はぁ?正義のヒーロー?言ってて恥ずかしく無いのか?まあいい、この光景を見たのなら生かしては返せん。残念だが…」


 役員達は拳銃を取り出した。


 「ここで死んでもらおう。撃て!」


 「サイコ!」


 発砲音とともに佐久間の前にバリアが貼られた。そして弾丸を弾くと、佐久間は1番手前にいた役員の顎に拳を入れた。そして髪を引っ張りながら脚を引っ掛け、倒した。そして拳銃を拾うと県知事に銃口を向けた。その光景を見た役員は身動きが取れなくてなった。


 「サイコ、手下の奴らを気絶させてくれ。」


 「わかりました。」


 6人いた役員は1人づつ倒れていった。


 「よし、よくやったサイコ。こっちは俺が処分しておくから、お前は外の様子を見てくれ。」


 サイコは天井に穴を開け外に出た。


 「お前、一番偉いんだろ。何やってんだ?」


 「ふん。偉いも何も県知事だ。それで何が望みだ?」


 「この作業はなんだ。外にいた猿共と関係あるのか?」


 佐久間はゆっくりと県知事に近づき、銃口を頭に当てた。


 「…しょうがない、教えてやろう。この山は金銀財宝が眠っておる。しかし、この土地は木々の根や岩石が大量にあり、ショベルなど役に立たん。だから…」


 県知事はゆっくりと工場のおくへと歩き出した。佐久間は銃口をそらさずついていった。階段を降り、何重にも鍵のかけられた分厚い扉をぬけた。するとそこには広さ10立方kmほどの空間が広がっていた。床は金網で、下には先程の作業で使われた液体より、何倍も濃い緑色の液体が見えた。


 「これが必要となる訳だ。ほら、マスクでも使うか?苦しくなるぞ。」


 「どうも。これは何だ、塩酸でも硫酸でもでもないな。」


 「私も詳しくは知らん。学者に特別に造らせた代物だ。これは木々を枯らし、岩を溶かす。実に便利な物だ。その結果、この山は汚染されよくわからない生物が出てきたようだがな。ツチノコもその部類だろう。」


 その時、佐久間の電話がなった。サイコからだ。


 『佐久間さん、やっぱりおかしいですこの山。脚が8本ある牛がいるし、デッカいムカデがクマ食べてるし…。』


 「そうか、ありがとう。しっかしよくやってくれたな、県知事さん。美しい自然が台無しだ。」


 「そうか。だが、そんな事言ってられるのも今のうちだ。お前はここで死ぬ。」


 県知事は急に振り向き、佐久間の顔に何か吹きかけた。佐久間は体が痺れるのを感じた。


 「安心しろ、皮膚から染みる神経剤だ。死にはしない。だが、」


 広い金網の一部が開いた。


 「溶けてもらおう。」


 県知事は佐久間の手から拳銃を蹴り飛ばし、回し蹴りを食らわした。佐久間はそれを腕でガードし掴みかかった。だが、県知事は意識が朦朧している佐久間を投げ飛ばし、拳銃を拾った。


 「形成逆転だ。どうだ?選ばしてやろう。落ちて溶けるか、今撃ち殺されるか。どっちにしろ死体は溶かすがな。」


 「いや、あんたはもう終わりだ。」


 「そういえば、あの少年はどうした?あいつも溶かさんとなぁ。」


 佐久間の携帯はスピーカーになっていた。そう、サイコに全て聴こえていた。


 「サイコ!この森は毒されてる!この森を救うのは地球の為!生き物の為!良い事だー!」


 佐久間が叫んだ。県知事はにやけ、引き金を引こうとした。その時、大きな揺れが起こった。


 「な、なんだ!地震か!…いや、違う!引っ張られている!」


 工場は地下の広い空間ごと持ち上げられた。緑色の液体を残して。サイコの力が先程とは比べものにならないほど強くなっていた。


 「おおサイコ、凄い力だな。助かったぞ。」


 サイコは佐久間を見つけると自分の方へ引き寄せた。


 「佐久間さん、あの液体が原因だったんですね。」


 「た、助けてくれー!」


 県知事は金網にしがみついていたが、力尽き、緑色の液体へ落ちていきそうになっていた。


 「サイコ、助けてやれ。」


 「はい。」


 県知事は間一髪、宙にとどまり、落ちた拳銃は一瞬で溶けた。佐久間は警察を呼んだ。




 沢山の警察が山へ入り、証拠品を運んでいた。県知事達はしゅんとしながらパトカーに乗った。



 サイコと佐久間は山道を歩いていた。


 「佐久間さん、よかったんですか?残んなくて?何か貰えたかもしれないのに。」


 「いいんだよ。どうせ感謝状しかもらえねえから。それより、もう日も暮れてきたし、急いでツチノコ探すぞ。」


 「まだ諦めてなかったんですか?」


 「もちろん。ニュースで報道される前に急いで持ってって、報酬もらうぞ。」


 そう言っていると、佐久間は何かの尻尾の様な柔らかいものを踏みつけた。


 「お?なんだ?」


 大木の陰から10メートルほどの巨大な蛇が出てきた。長さが短く、腹が膨れている。ツチノコだ。


 「お!いたぞ!サイコ、捕獲だ!」


 「佐久間さん、実は良い事パワーが全然湧いてこないので、超能力は出せません。」


 「…そうか…。じゃあ、逃げるか。」


 佐久間とサイコは追ってくるツチノコから必死に逃げ、命は助かったという。




 次の日、ニュースで昨日の事件が報じられた。県知事達の情報から、捕まえた中学生の似顔絵が写し出された。短い背、メガネ、ボサボサな髪、イケてない顔。


 「この顔…サイコくん?」



 この少年、サイコ。良い事パワーによって力が左右される、いわゆる面倒くさいエスパーである!

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