第3話 良い事パワー1
サイコは14年前、なんの変哲もない普通の家に生まれた。自分の能力に気づいたのは5歳、家が火事になった時であった。彼は自分の超能力を使い、家族を助け火を消したのだ。
日曜日、佐久間はアパートでサイコを出迎えた。
「よしサイコ!ツチノコを探しに行くぞ!」
「なんでですか?」
「これを見ろ!そしてこれを持て!」
佐久間はサイコにチラシと虫捕り網を渡した。
「ツチノコ発見…捕獲者に賞金…?」
「そうだ!なんとツチノコが見つかったんだ。そして国立の大学が、見つけて譲渡した者に賞金をやると。どうだ?興味ないか?」
「…いいですけど。」
「よし!出発だ!」
こうしてサイコと佐久間は、電車とバスを使いツチノコのいる森へと向かった。
「ついた…が、なんだこの人数?」
「すごい人ですね。これ全部ツチノコ探しの人ですか?」
普段人のいない人里離れた森には100人余りの人がいた。中には登山家の様に重装備な者もいた。そこにスーツの35才、制服の中学生は場違いだった。
「佐久間さん、大丈夫でしょうか?」
「あ?まあ、お前の力でパパパっと見つけられるだろ。」
「…人助けじゃないと、僕の力は発動できないんですけど…。」
「いや、俺は日本のために金を集めている。つまり、俺を助けると言う事は、日本を助けると言う事だ。どうだ?力湧いてきたか?」
「…ちょっとだけ。」
「よし、じゃあ行くぞ!」
佐久間はサイコを連れ、誰もいない森の奥へと進んでいった。
「おい!お前ら!何をやっておる!」
森の手前の方で1人の男が叫んだ。男は黒服を着た大男を多数連れており、自分は金色のスーツを着ていた。
「誰の許可を得てこの森に入った!ワシはここの県知事だぞ!今すぐ出て行け!」
ツチノコ探しにきた者は一部反抗したが、結局、全員が追い返された。サイコと佐久間以外は。
「どうだサイコ?なんか反応あるか?」
サイコと佐久間は鬱蒼とした森の中を進んでいた。
「反応と言われても…。半径5メートルぐらいしか感知出来ないし、ツチノコの感覚もわかんないし。」
「ツチノコの感覚…、なんか今までにない凄いオーラを出してるやつだよ。それこそ怪物みたいな。」
「それならすぐそこに。」
そう言ってサイコは佐久間のすぐ後ろを指差した。
物凄い音で何かが近づいてくる。木々がなぎ倒される音。佐久間が振り向くとそこには5メートルほどの腕が3本ある猿が二匹いた。
「おいサイコ…動くなよ。目を合わせながら、ゆっくり離れるんだ。」
「佐久間さん、それは熊です。これは猿です。日本猿ですかね。」
「いやいや、大きさからキングコングじゃねえか。なんだこいつら…」
「ウギイイィィィィィィギャアアアア!」
佐久間達がゆっくり離れていると、急に一匹の猿が叫び、佐久間の方に飛びかかった。
「うおおサイコ!コイツらを止めろ!」
「はい。」
サイコは寸前で猿の動きを止めた。そして佐久間は全力で逃げた。
「今の“良い事パワー”ではこれが限界です。佐久間さん、もう一匹に気をつけてください。」
「……もう一匹。」
佐久間が横を見ると、もう一匹の猿が手を伸ばしてきた。佐久間はスライディングでそれをかわし、逃げ続けた。
「死ぬ!死ぬうううー!」
猿はなおも追いかけ、後ろから捕まえてようとした。しかしギリギリのところで佐久間は地面にできた堀に落ちた。そして佐久間が顔をあげると、そこには大きな工場があった。
「これは…、ってそれどころじゃねえ!」
佐久間は猿の後ろに回りこみ、サイコの方に走った。
「サイコ!合図したらその猿を放せ!行くぞ!」
佐久間はサイコに近づき、サイコにしがみついた。
「今だ!あがれ!」
サイコは猿を放し、佐久間と上空へ逃げた。そして走って来た猿と飛びかかった猿はお互い、ラリアットの様になった。
二匹は倒れ動かなくなった。
「あっぶねー。二匹ともとんでるなぁ。今のうちに逃げるぞ。他の奴らにも注意しねえと。」
「はい。でも、誰もいませんよ。」
「マジか。みんな逃げたのか?じゃあ、俺が指示した方に進んでくれ。」
サイコと佐久間は、さっき佐久間の逃げた方へ向かった。