告白
「体を動かせれるようになるのは、もっと後か」
ただすぐにでもリハビリは始まるだろうという予感はしている。できるならば早いことにこしたことはない。つまり、その方がいい。
「とりあえず今日はここでお休み。明日以降については、明日の朝考えるって」
彼女がそういう。医者がそう言っていたのだろう。ともかく今日はゆっくりできるそうなので、椅子に座りつつも彼女の話を聞く。手術は成功、本当だったら昨日死んでいたという彼女は、これからはボーナスステージに生きているような気持になるだろう。
「それで、どんな気分だ」
「なんだかすっきりしてるよ。気分がいいね、生きるって」
「ま、死にたくなければ生きるしかないからな」
自分はけっこう無意識に笑いつつ彼女に言った。当然のことだが、それを口に出したらよく思える。我ながら名言だ。だが、彼女は一向に気に留めていないようだ。
「そうね」
ところで、と彼女が自分へ言う。
「占いって覚えてる?」
「ああ、バーでの話だな。それがどうした」
「占いのとき、私は外れたら私自身をあげるということにしてるって言ってたよね。代わりにお金をもらうっていうことにしてたって」
「言ってたな」
「……どうかな、これからも同棲してくれるって。そうしてくれたらうれしいなって」
それはいわゆる告白と同義だろう。一緒のご飯を食べたいといっているようなものだ。作っていたのはほとんど自分ではあったが。
「むしろ歓迎だよ、入院してる間の一人ってのは、がらんとした部屋の中で寂しく暮らしてたからな」
一人暮らしから二人暮らし。それに慣れてしまったら、もう戻れない。だから自分は、彼女からの提案を受け入れた。それでも条件がいくつかある。
「ただな、それを受け入れるとはいえ、自分は占いの結果が外れたから、っていうのは嫌だな」
「じゃあどうして一緒に住みたいの」
彼女の疑問ももっともだ。だから自分も素直に答える。
「好きになったから、かな」
その時、急にエアコンから風が吹き出した。




