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101日目の奇跡  作者: 尚文産商堂


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17/20

説明

「長咲栄子さんのご家族の方、ですね」

「そうです」

 医者が白衣でやってきた。手術から少し経っているだろうが、額にはうっすらと汗がにじんでいるように見える。ただ、すでに落ち着いているようで、手術着は脱いで、名札を首から下げてこちらに向かったようだ。白衣の表側にはポケットがひとつだけ。そこには昔懐かしいPHSが入っていた。昔、自分も少しだけだったが会社からの貸与品として貸されたことがあった。もっとも、1か月もたたずに回収されてしまったが。

 医者は名札から心臓外科に所属している長吉大樹(ながよしたいじゅ)と分かった。長吉は、話したいことがあるといい、手術室横にある受付と書かれたところへ、さらにその中へと自分らを誘導した。


 中には患者家族や本人へと説明をするための部屋があり、高い映像モニターが3つも4つも並んでいる。そこには手術中に撮影された映像が流れていた。モニターの右上に撮影日時や名前が書かれていた。確かに、長咲栄子の名前と年齢が載っていた。

「長咲さんですが、心臓を取り囲むようにして生えている冠動脈の一部につまりがあるのが分かりました。ただ、これは2日前に行った人間ドックのときには見られなかったものです」

「……つまり、急に現れたということですか」

 父親が訝しんでいる。そんなことはない、きっと見落としがあったのだろうという目をしていた。だが、それはないと思う。少なくとも彼女は最高の医者によって、最高の診断を受けた。それで間違えがあるとは思いにくい。

「そういうことになります」

 長吉は何も言わなかった。ただそれだけ言った。そしてさらに詳細な説明を続ける。

「左冠動脈の根本に詰まったため、心臓の左側が梗塞を起こし、心筋梗塞、そして心停止へと進みました。この血栓がどこから飛んできたかは不明ですが、現在は取り除いており、安全です。細い管を入れ、風船を膨らませることによって開通させました」

 ほかにもいくつか説明をしていたが、要は栄子は安定していて今は安心していいということのようだ。手術後は一時ICUに入り、1泊して何事も起きないことを確認してから通常病棟へと移動することになっているようだ。さらに退院するにはしばらくかかることになるらしい。何もなければ1週間程度ということになる見立てだ。

「ICUには入れますか」

「できればお断りしています。少し騒がしいのも害になりうるので」

 というのが医者の説明だった。外から感染症を持ち込まれたとしたら、免疫力が落ちている患者にとっては簡単に感染しうる。それを防ぐため、というのが本当のところだろう。そういうこともあって、自分も父親も、彼女との面会を今日はしないことにした。一方で、父親は、再手術に関する承諾書や、治療に関する承認書など、数々の書類にサインすることとなっていた。


 部屋から出るとき、自分が長吉に尋ねる。

「ところで、彼女はどれくらい心臓が止まっていたのですか」

「合計でしたら2分ほどですね。連続して止まっていたのは30秒ほどが最大でしょうか」

 長吉はすこしカルテを確認してから教えてくれた。ここでようやく自分は確信を持つことができた。やはり、彼女の能力は、心臓機能についての能力だ。

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