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101日目の奇跡  作者: 尚文産商堂


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15/20

病室

 ピッピッ、と定期に電子音が聞こえる。下半身には薄いタオルケットのようなものがかけられている。上半身はたくさんのケーブルがつながれているのが見えるが、詳しくは分からない。ただ、今聞こえている電子音が、鼓動だということは分かっている。

「血ガスは?」

「心筋マーカーのチェックを」

 心筋マーカーということは、きっと心筋壊死を疑っているのだろう。急激な心停止なら、やはり心筋梗塞を考えるということか。ショックによることや、外傷といったものもありうる。となれば、広域的調査を行うことが必要ということのようだ。ただ、門外漢の自分には、その検査一つ一つが必要なのかどうなのかなんてわからない。こういうのは餅は餅屋ということで、医師に任せるべきなのだろう。

「状況は……」

 一緒に来てくれた看護師に聞く。彼女なら、きっとわかると思ったからだ。

「心臓が停止したのは合計30秒間。今は動いていますがとぎれとぎれです。アドレナリンを定期に打っていますね」

 本来はしない方法であっても、しないといけないようだ。それほどまで切迫していたということだろう。電子カルテもあるが、それはPADに記載されており、今は医者らが回し読みをしているところだった。そこで看護師は紙のカルテを見ながらも、自分にいろいろと教えてくれる。ただ、最新ではないようだ。

「今は薬で動かしているみたいだけど、このままだと大変危険な状況です。補助人工心臓や心臓の補助をするための装置を取り付ける必要があります」

 医者がIABPを持ってこいと叫んでいる。きっとそれが心臓の補助をするための装置というものなのだろう。するとやおら医者がこちらへと向いた。

「保護者ですか」

「いえ、彼氏です」

 看護師が代わりにこたえてくれる。それを聞いて、少し残念そうな顔をしているのがアリアリと分かるが、自分はさらに伝える。

「彼女の母親はすでに死んでいます。父親はただいま入院中です。この病院で、リハビリ中だと伺っています」

 話はすでに通っているだろうが、一応医者にも教えておいた方がいいだろう、そういう判断だった。だが、医者はそんなこと聞いてないぞ、と憤っている。そして看護師の一人を走らせて調べたうえで父親をこちらに連れてきてほしいと伝えていた。

「父親を待ってられん。ICUに運べ。緊急オペも準備だ。まずは心カテ、IABPも並行で入れる。準備、通達」

 はい、と看護師の元気な声が聞こえるが、がちゃがちゃと忙しくなってきたようだ。自分はここに居てはいけないと感じていったん部屋の外に出る。ベッドごと動かすことができるようになっていて、キャスターにあるロックを外し、すぐに病室の外へ。そして廊下も半走りくらいで動き続けエレベーターへと一直線に向かった。

「あなたはいったんお待ちください。手術室前にご家族様用の待機室がありますので、別の看護師にそちらに案内させます」

「分かりました」

 今は彼女の命を救うのが優先だ。そう思って医師からの指示に素直に従った。付添の看護師は、さっきから案内してくれている人だった。

 エレベーターはベッドと医師と看護師と装置類でいっぱいいっぱいになってしまったので、手術室前まで別のエレベーターを使うことにした。するとちょうど父親が上がってくるところだった。

「おや宮藤さん。どうされました」

 車椅子でやってきた驚いた顔をしている父親に今の事情を説明しつつ、そのままエレベーターに戻ってもらう。ちなみに彼氏設定だということについては黙っておくことにした。そしてそのままエレベーターで手術室前までまとめていくことにした。

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