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101日目の奇跡  作者: 尚文産商堂


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11/20

平和

 翌朝、彼女は平然としているようだったが、少し余波が残っているのか、顔を赤らめているように見えた。今日は月曜日、もう、彼女との共同生活においては残された時間は少ない。

「おはよう」

「おはようございます」

 彼女はそれでもはっきりとした口調の声で、挨拶を返してきた。最初はそんなことはなかったから、それから見ると大進歩に思える。自分が作っている朝食のいい香りに誘われて部屋から出てきたということもあり得るが、それについては考えないことにした。

「何のご飯?」

 予想は、やはり当たっているようだ。いいや、と思って彼女の質問に答える。

「ごはん、紅鮭、シジミの味噌汁。もしもほしいなら味付け海苔か納豆のどっちかつけれるぞ。それと、自家製麦茶」

「……ごはん少なめでいいや。なんだか頭が痛い」

「二日酔いか?」

「かなぁ」

 彼女はそれについて自信がないようだ。ただこちらに来て、ご飯の準備を手伝ってもらう。平和だ。この2、3日がゴタゴタ続きだったから、余計そう思うのかもしれない。寝癖もすっかり直すこともなくなり、ふわぁとあくびしながら彼女は席に着いた。

「いただきます」

 最初からのくせで、しっかりといただきます、ごちそうさまでした、といったことをいうことができていたのは、親の教育の賜物だろう。ご飯茶碗はそれぞれの家から持って来ているが、サイズが違ったり、模様が異なるから見分けはつきやすかった。


 40分で朝食や後片付けを終え、テレビをつける。テレビでは、どこかで交通事故が起こったとか、パンダの赤ちゃんが生まれたとか、火事が起きたとか、海外の選挙の話なんかをしている。

「大学はどうしたんだ」

「今日は午後から」

 自分の言葉に、彼女が答える。そういえば、今日は自室へすぐに戻らない。一人が怖いのか、それか誰かと一緒にいたいのか。

「部屋に戻らないんだな」

「今日はなんだか、宮藤さんと一緒にいたい気分なの」

 声のトーンは変わらない。ただ、疲れているようだ。そりゃ、親が脳梗塞で病院に担ぎ込まれたとあれば、誰でも疲れるものだ。それも、自分があと少しで死ぬということがわかっていたらなおさらだ。

「そうか。仕事の邪魔はするなよ」

 ただ、自分は彼女の邪魔はしない。ちゃぶ台にパソコンを置き、さっさと仕事モードに入る。そのうち、彼女は大学に行くと言って荷物片手に家から出ていった。

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