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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
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7.秘密の特訓

 本番まで残り十日となった放課後の一組の教室では、衣装のお披露目会が行われていた。

 最初に出て来た少し大きく作り過ぎた失敗作のジュリエット用の服に皆は唖然としていたが、手芸部は慌ててきちんとしたジュリエット用の服やロミオ用の服を出す。

すると周りは良い意味で皆黙り込んでいた。


「りっちゃんもゆうなもすごいじゃん!」


 なっちゃんの声を機に場は勢いよく盛り上がる。

手芸部の石井(いしい) 梨花(りか)さんと家入(いえいり) 祐奈(ゆうな)さんは照れ臭そうに微笑んでいた。


「ねぇりょーちんとかすみん、早速着替えてきてよ。サイズ合ってるかわかんないでしょ」


 恐らくなっちゃんは衣装姿を見たいだけだと思うが、正直僕も他の皆も興味があった。


「じゃあ、一応……」

照れながら言う夏澄に対して小山くんは、

「ちょっくら着替えてくるわ」

と教室を出て男子更衣室へと走って行った。




 数分後、戻ってきた小山くんは本当に王子様の様だった。


「すげーぴったり。かっちょいーだろ?」


 外見は変わろうとも、お調子者の中身は全く変わっていなかった。


「ど、どうかな?」


 照れながら入ってきた夏澄は言うまでもなく美しいどこかの本当のお姫様みたいだった。


「かすみん、ちょー似合ってるよ」


 そう言うなっちゃんの後ろで男子はポカンと口を開けながら何故か拍手を送っていた。

舞台のセットであるハリボテが披露される。

これまたとても上手な絵で皆感心していた。

 書いた本人である美術部の岡野(おかの) 美沙(みさ)さんは、恥ずかしいからあまり見ないでと絵の前で見せないよう小さな腕をブンブンと振り回していた。


 準備は着々と進んでいた。




 その日の帰りには僕を含め文化祭の準備で部活のない蓮と姫華、なっちゃんの四人が揃っていた。


「蓮と姫華の方の劇はどう? 順調?」

僕の問いに二人は、

「ま、まぁなんとか」とか、

「もう少し……かな?」と返した。

そんな二人の曖昧な返事になっちゃんが言う。


「じゃあ二人の練習付き合うよ、私とこうくんで」


 最初は別にいいと遠慮していたものの、この一言から四人の秘密の特訓が始まる。

 そこ、照れで声が小さいなどと蓮希監督の優しい怒声が飛び交う。

 僕はそれぞれに素直に思った感想や少しばかりの助言を述べる。段々と良くなる二人の演技にダメ出しは少しずつだが減っていった。


 しかし時間は刻一刻と迫ってきている。

本番まで残り四日となった時、予期せぬ事件が起きてしまった……

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