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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
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6.台本の完成

 翌朝、呼び鈴を鳴らすといつもなら飛び出てくるなっちゃんが出てこない。

二度目を鳴らそうとしたところでゆっくりとドアが開いた。


「行ってきます」


呟くように言ったなっちゃんは目をこすりながらこちらへ来る。


「どうしたの? 大丈夫?」

「昨日夜遅くまでこれ作ってたの……ふわぁー」


手には台本と書かれたものがあった。


「読んでみてよ、結構自信作だからさ」

僕は促されるまま手に取り読み始めた。



 「ロミオとジュリエット」と言えば、モンタギュー家のロミオが好きな女性に会うためキャピュレット家のパーティに忍び込み、好きな女性ではなく一人娘のジュリエットとお互い一目惚れする。ロミオとジュリエットは神父(ロレンス)のもとで密かに結婚するが、争いをしないと約束したが親友の死に怒り相手を殺し捕まってしまう。ジュリエットはロミオと結ばれる為に神父(ロレンス)の仮死の毒による計略を実行するが、上手く作戦の伝わらなかったロミオはジュリエットが本当に死んだと思い込んでしまい自殺、さらにはそれを知ったジュリエットも追うように自殺。それを知った両家が和解というたった五日間の恋愛物語。シェークスピアの不朽の名作である。


 でもこの台本ではジュリエットは本物の毒を飲み、ロミオが口移しで解毒薬を飲ませて助ける。それを見ていた両家が和解してそのまま二人は結ばれるというハッピーエンドに作り替えられている。


「すごくいいと思うよなっちゃん」

 僕はなっちゃんの頭を撫でた。

なっちゃんの顔が少し赤くなっていたので熱があるのかと思い額に自分の額を押し当てる。

赤い顔がさらに温度を増す。


「なっちゃん、少し熱あるんじゃ……」

言い終える前に軽く突き飛ばされる。


「だ、大丈夫だから」


 なっちゃんは大きく深呼吸をした。

そこからはいつも通りのなっちゃんだった。

顔も赤くはないししんどくもなさそうだ。


 昼休みにはなっちゃんに連れられて台本のコピーに行った。そこで同じ目的の蓮と姫華に遭遇。


「あ、レンレンにひめっち」

なっちゃんが声を掛ける。


「お、公星と蓮希か。題材ロミジュリで被ったんだってな。逆ロミジュリだっけ? 楽しみにしてるからな」


蓮はいつも以上にニコニコしていた。

こころなしか姫華もいつもより少し嬉しそうにしている。


「レンレンがロミオでひめっちがジュリエットらしーね。頑張ってね主役」


なっちゃんの言葉で二人の表情にも勝手に合点がいく。


「私達これで終わりだからまたね。私も楽しみにしてるよ」


二人はそのまま仲良く教室へと戻っていった。


「あの二人本当に仲良いよね。付き合っちゃえばいいのに……」

なっちゃんは羨むようにポツリと言った。




 翌日からは土日休み返上でなっちゃんの台本を片手に劇の猛練習が始まった。

クラスの手芸部や演劇部は腕の見せ所だと張り切って衣装作りや演技の指導に取り掛かっていた。

クラスの他の皆はなっちゃんを中心に舞台のセットを作り上げる。


 時間はあっという間に過ぎていく。

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