53.念願の海
じりじりと照りつける太陽、鼻孔をくすぐる潮の香り。地面からも熱気が蒸し返し視界がユラユラと揺らぐ中、僕達五人は目的地までの下り坂を足早に歩く。
砂浜の一角に荷物を下ろし、すでに水着を着ている僕と蓮はビーチテントを組み立て始める。
「私達着替えてくるから公くんと蓮くん荷物番お願いねー」
その声の主は周りの二人を引き連れ、言った側から遠ざかって行く。
返事をする頃にはもうこちらをちらりとも見ていなかった。
テントを組み立てると二人して素早く陰の中へと避難する。
「それにしても今日ほんと暑いよね……」
そう言いながら僕はシャツをパタパタと揺らし風を送る。
「ほんとあっちぃーなぁー、公星もシャツ脱いだらもうちょいマシになるぞー」
蓮は寝転びながら手で顔を仰いでいる。
僕は蓮のアドバイスを聞き流し横に寝転がる。
「ねぇー二人共ー、もうバテてるのー?」
なっちゃんの声に反応し、待ってましたと言わんばかりに飛び起きる。
声の方へ振り向くと、黄色いワンピース型ビキニの活発少女、真っ白なフリルビキニに麦わら帽子のお姫様美女、黒のレースビキニの小悪魔系美女が揃ってこちらを見ている。
「めっちゃ可愛いじゃん……、三人共ほんとに」
すぐさま蓮が口を開く。
「姫っちの方だけ見て言われてもねぇ……かすみん」
「そうだねー、まぁ仕方ないけどさー」
笑って顔を見合わせた二人の横で姫華は少し顔を赤らめる。
「それより公星はなんかないの?可愛いとかさっ!」
夏澄の言葉でようやく口から言葉が吐き出される。
「いや、三人共可愛くてなんというか、言葉が出てこなかった的な……」
「あはは、そこは頑張ってよこうくーん」
笑いながら嬉しそうな蓮希に肩を叩かれる。
「あ、それはそうと早めにご飯食べないー?私お腹空いちゃったー」
「着いたばっかなのに海より飯かよ、まぁ俺と公星で適当に買ってくるから三人は涼みながらジュースでも飲んでてよ」
蓮に連れられて二人で買い出しに海の家へと向かう。
テントと海の家を数往復し、みんなの前で料理が並ぶ。ビーチで食べると普段よりも格別に美味しく感じる。
「そーだ、親父が持たせてくれたクーラーボックスのスイカあるから後でスイカ割りしようぜ」
「そーだねー、あ、私抹茶のソフトクリーム食べたいかも」
「また僕と蓮で買ってこれば良いんでしょー?蓮希と姫……」
「私バニラー」
「はいはい、蓮希はバニラな、姫華は、チョコ?」
「うん、チョコがいいな」
「おっけー、んじゃ行くか公星」
お腹いっぱいなのにみんなデザートって……
そう思いながら蓮を追いかけた。




