52.水着とプレゼント
時刻は十三時過ぎ。
私たちは電車に揺られていた。
「課題も無事終わったし良かったね」
「ほんとそうだよ。私にしてはよく頑張ったからね。夏休みあと二週間遊び尽くすよー」
「終わったからあとは楽ちんだよね。あ、あれが最近出来たショッピングモールだよ」
私はまだ小さい目的地を指差す。
「あと二駅だね。楽しみだなぁ……」
蓮希ちゃんはそう言って足を軽くバタバタさせている。
「「とうちゃーく!」」
先程は親指くらいのサイズだったショッピングモールが、今では見上げる程の大きさでそびえ立っている。
私たちは中へ入るなり、一目散に水着コーナーへと向かう。
沢山の水着が並んでいて、どれもこれもが可愛い。
「うわぁーみてみてかすみん、これ可愛くない?」
次から次へと手に取ってはしゃいでいる。
「試着させてもらおうよ」
そう言って各々水着を持って試着室に入る。
そこで二人の水着コレクションが開催される。
オーソドックスなものからあまり着ないような恥ずかしい水着まで色々と試着していく。
「買うの決まった? 私決めたから買ってくるね!」
「蓮希ちゃんはどれにしたの?」
「ヒ・ミ・ツ! 私一つ下の文房具屋にいるから買ったら来てね」
そう言って足早にレジへと向かってしまう。
私は迷いながらもある一点の水着を手にする。
「サイズもピッタリだしこれにしよう」
ゆっくりとレジへと向かうのだった。
エスカレーターで一つ下に降りると、すぐに文房具屋がある。
少し歩くとそこには真剣な表情で見つめる蓮希ちゃんがいた。
気付かれないようにそっと近付き後ろから驚かせる。
「わぁっ!」
「ひゃぁっ!」
予想以上に上手くいった事に満足しながらお腹を抱えて笑う。
「もーおどかさないでよー」
そう言いながらお尻をパンパンとはたいている。
「ごめんごめん。ところで何見てるの?」
「何って訳でもないんだけど、海に行く予定の日は丁度誕生日なんだよね」
「あー、そう言えば公星八月十三日だったね。私も何か買っとこうかなぁ」
蓮希ちゃんは頷きながら再び商品に視線を向ける。
「じゃあ決まったら連絡してね。私は参考書でも見てくるよ」
そう言って同じ階にある本屋へと向かった。
私は大体買おうとしている物は決まっていた。
ついでに自分の読みたい小説も手に取る。
お会計を済ませ、連絡するために携帯を取り出す。
そこには公星から貰ったお気に入りのストラップがぶら下がっている。
可愛くて思わず頬が緩む。
ブルブルブルッ!
「ひゃっ!」
思わず携帯を落としそうになる。
蓮希ちゃんからの着信だった。
「もー、さっきのお返しされちゃったみたい」
電話に出て待ち合わせをする。
あー早く海に行きたいなぁ……




