51.課題の消化
「ヤッホーかすみんっ」
ドアを開けると元気な少女が小さなリュックを背負って立って声を掛けてくる。
「おはよう、蓮希ちゃん。さぁ、入って入って」
私は家へと招き入れ、自分の部屋へ案内する。
「あら、もしかして蓮希ちゃん? いらっしゃい、おっきくなったわねぇ」
「あ、お久しぶりです。お邪魔します。これ、お母さんから持って行くように言われたケーキなので良かったらどうぞ」
そう言って蓮希ちゃんは母へと紙袋を手渡す。
「あとで紅茶と一緒に持って行くわね」
「うん、ありがとう」
母にそう返して部屋へと向かう。
「わぁー、綺麗で可愛い」
部屋に入るなり、蓮希ちゃんはキョロキョロと見回している。
「あ、ありがとう」
そんなに見回されると少し照れてしまう。
「はいはーい、早めのお昼にサンドイッチと紅茶ここに置いとくわね。夏澄、食べ終わったら食器とか持ってきてね。ケーキもあるから」
そう言って母は階段を降りていく。
あっという間にサンドイッチをぺろりと平らげ、課題の前にケーキを食べる。
「そういえばさ、夏祭りの時こうくんとどこ行ってたの?」
「あぁー、ちょっと欲しい物があったんだよね。結局売り切れてなかったんだけど……」
「そっか。それは残念だったね」
「ささっ、課題やっちゃおっか」
このままだと何か聞かれそうな気がして、少し慌てて話を変えることにした。
私の言葉に反応すると、蓮希ちゃんはせっせと課題を机の上に出していく。
「さてと、あと何が残ってるの?」
「んーとね、数学と物理かな?」
「え? それだけ?」
蓮希ちゃんの返答を聞き思わず聞き返す。
「多分そうだったと思うー。国語と化学は今回少なかったしねー」
そう言いながら数学の問題集とにらめっこをしている。
公星や蓮くんの口ぶりからして、かなりの量が残っていると覚悟していたのだが、良い意味で予想を裏切ってくれた。
これなら今日一日で終わるかもしれない。
そう考えながら私も自主学習を始める。
「ねぇかすみん、ここの多項式の割り算が合わないんだけど……」
「ん? どれどれ……ああ、これは問題の式には書かれてないんだけど、筆算みたいにする時はxの係数に0があると考えて書かないといけないの」
「ちょっと待ってね……あ、ほんとだ。答えも合ってる!」
「おめでとう! これで数学も終わりだね」
「うん! 今回は赤点取らない為に勉強したからいつもよりは多少早く出来たかな」
ふと時計を見ると、丁度十五時だった。
「休憩しよっか。私飲み物とお菓子持ってくるね」
そう言って一階へと向かう。
「ねぇ、夏澄。今日は蓮希ちゃんにうちに泊まって貰ったら? 勿論蓮希ちゃんが良ければだけど」
「ちょっと蓮希ちゃんに聞いてみるね」
私は階段を駆け上がる。
「ねぇ蓮希ちゃん、今日うちに泊まっていかない?」
「え? いいの? ちょっとお母さんに服とか持ってきて貰いたいし電話してみるね」
そう言って蓮希ちゃんは廊下へと出て行く。
蓮希ちゃんはすぐに笑顔で戻ってきた。
そこからは二人でホラー映画や感動のラブストーリーを見てはしゃいだり、お菓子を作ったりと、課題を忘れて思いっきり楽しんだ。
「明日課題が終わったら水着買いに行こうね」
「うん! 行こう行こう!」
私も蓮希ちゃんもはしゃぎ疲れたのか、すぐに眠ってしまった。




