43.答え合わせ
ミラーラビリンスから歩いて少し歩くとすぐ、遠いがたしかに目的のものが見える。
「あー私もう分かっちゃった〜」
そう言ってスキップで夏澄が前を行く。
時々振り返るようにクルリとまわったりするのがなんとも愛くるしいものだ。
十分程で目の前には先程から見えていた巨大なアトラクションがどっしりと構えている。
「私も好きなんだよね、観覧車。ここだけ時間がゆったりした気がしてすごく落ち着く」
「そうそう、遊園地って速いものばっかりで僕にはダメなんだよね。ここだけは何回でも乗れるんだよ」
「早く並ぼっ!」
僕の袖を引っ張り上目遣いで催促する。
「別に観覧車は逃げないよ」
冷めた口調でそう夏澄に投げかける。
いいからいいからと小走りで最後尾に並ぶ。
「さっきのミラーラビリンスの謎解き一発で分かってたの?」
不意の質問に少し戸惑いながらも、
「うん」と返す。
「私も『な』の前を読むのと『か』が『み』になるのはすぐ分かったんだけどなぁ……」
「僕も最初はそうだったけど『ミー』ってなんかちょっと変だなって思ってもう一度見直したんだよ」
「私だって打ち込みながら変だと思ったんだよね……公星より早く! って思ってたのに結局私の負けだった」
「まぁまぁ、結局『左』って漢字に隠れてる『ナ』も見つけたし時間はそんなに変わんなかったよ」
「それほんと引っ掛けよね。でもそれで答えが『みらー』ってなったらすごく納得したよね」
「まぁあそこでこその謎解きだったね。あ、僕ちょっとトイレ行って来てもいい? ついでに飲み物買ってくるけど何か飲みたいものある?」
「じゃあ私コーラ!」
「了解、ちょっと待っててね」
僕はトイレのついでに売店でコーラを二つ買う。
夏澄を探しながら戻っていると何やら長身の強面男二人組が夏澄に話しかけている。
少し困ったような表情をしている。
「夏澄、お待たせ」
わざとらしく声をかける。
「何だよ、冴えねー連れだな。コイツなんかより俺らと遊ばね? てかコイツ彼氏?」
夏澄は驚いた顔で立ち尽くしている。
「はい、そうですけど。僕の彼女に何か用でも?」
少し強めに言うと、男二人は顔を見合わせている。
どんな言葉が来るかと身構えている僕を前に二人はお腹を抱えて笑いだす。
「あっはっは、わりーな坊主。俺ら嬢ちゃんに行きたいアトラクションの場所と待ち時間聞いてただけなんだわ」
「いやーでも俺が言うのもなんだけど、俺ら相手に一歩も引かずカッコ良かったぜ。からかって悪かったな」
そう言って二人はコーラのキャップと同じ色の顔をした僕にコーラの値段と同じ代金を手渡すと、
「それ面白いもん見せてもらったお礼とお詫びだ。じゃあありがとな嬢ちゃんと彼氏さん」
と、人混みに紛れて行った。
「ふふふ」
今更になって夏澄は笑い出す。
「ちょ、ちょっと笑わないでよ」
そう言いながらコーラを渡す。
「だ、だって……あ、ありがとね彼氏さ……ブフッ」
「普通そんなに笑う? 僕結構頑張ったんだけど」
ムスッとした表情を見せると、
「ごめんごめん、カッコ良かったよ、ありがと」
その言葉だけで僕の心は満たされる。
単純なものだ。
「さて、気を取り直してもうすぐだよ、彼氏さん!」
「夏澄ちょっとハマってるでしょ。全然取り直せてないんだけど」
「まぁまぁ、一応デートなんだから。ほら順番来たよ」
夏澄と回転している部屋に急かされ、二人で宙ぶらりんの個室へと乗り込む。




