34.黄色いふわとろ
「あー楽しみだなぁ〜早くこないかなぁ〜」
今か今かと楽しみに待っている夏澄に質問を投げかける。
「なんであんなに楽しみにしてたのにオムライス頼まなかったの?」
それを聞いた夏澄はポカンとしたまま少し静止した後に口を開いた。
「だっていろんな種類食べたいでしょ?公星がオムライスなら違うの頼むに決まってるじゃない」
「な、なるほど……」
みんなカップルってそういうものなのか……と勝手に勘違いしてしまった。
「公星は今日楽しめてる?」
「楽しいよ!」
「即答か……それなら良かった。公星が乗り物に弱いなんて知らなくて……ごめんね」
少し涙目の夏澄を見て胸が締め付けられる思いがする。
「お待たせしました」
タイミングよくきた料理達を見て天津飯を夏澄の前に出して言う。
「あったかいうちに食べなよ!」
そして僕の目の前では夏澄風に言うなら、たった今卵のお腹が開かれようとしていた。
「うわぁー中からトロッと出てきてすごく美味しそう!」
テンションを戻した夏澄を前に僕はスプーンですくい口まで運ぶ。
「うわっ、ふわとろでめちゃくちゃ美味しい!こんなの食べたことないよ」
スプーンを口に運ぶ手が止まらなかった。
「卵焼きもフワッフワッでとても美味しいわ。天津飯もこのあんかけがとても美味しい。やっぱり来て良かった!」
そう言う夏澄の顔には幸せだと書かれているようだ。
「あ、こっちもどうぞ……」
ゆっくり自分の皿を差し出す。
「やったー。はいこっちも食べてみて」
言われるままに手を伸ばす。
あんかけだけで食べたいほど美味しい。
僕も夏澄も大満足だった。
「それじゃあ行こうか」
そう言って立ち上がり出て行こうとする僕の腕を夏澄が掴む。
無言で席を指差され仕方なく腰を下ろす。
「パフェのこと忘れてるでしょ?ほらきたよ」
夏澄の指摘で思い出す。
ふと視線を移動させると特大サイズのパフェが運ばれてくる。たくさんの果物がこれでもかと言うほどのっておりかなりのボリュームである。食べ切れるのだろうか……
そんな心配をしている僕を他所に夏澄は目を輝かしている。
夏澄は物凄いペースで氷山の一角をたいらげる。
「公星も食べなよ!とても美味しいよ?はい、あーん。早く口開けて!あーん」
言われるままに自然と口が開く。
確かに美味しい。さっきまで満腹だったのが嘘のようにスイスイと入っていく。
デザートってやっぱり別腹なのかな?
気が付けば夢中で食べ続けていた。
最後の一口を夏澄に勧める。
「あー美味しかった!じゃあ行こっか!」
夏澄の分も支払いを終え外の空気を吸う。
財布からお金を出そうとする夏澄の手を止め無言で首を振る。
「じゃあ、ごちそうさまです」
少し遠慮がちにお金を戻す。
「どこか行きたいところある?僕のことは気にしなくていいから何でも一人で乗ってきなよ」
「ダーメ!あ、じゃあもうすぐパレードだから一緒に観ようよ!んで写真も撮ろー」
そう言って再び手を引かれる。
手を握られるのが段々と心地よく感じてきた。




