31.お腹を開く
「私お昼に行きたいとこあるんだよね。公星ある?」
「いや、僕は特……」
「いやね、そこのオムライスが絶品らしくてさ。運ばれて来てから玉子のお腹開くらしいんだけどさ、中から金色に輝く液体がトロッと流れてきて。しかも中はチキンライスか炒飯か選べるの。ケチャップあんまり好きじゃない私にはもう嬉しくてたまんないの……ってあ、ごめん、公星は行きたいとこある?」
(いやいや、僕の言葉を遮ってそこまで言うって……もうそこに行きたいって事でしょ。)
「そんだけ力説された後に提案できると思ってるの?というか玉子のお腹開くって表現独特すぎでしょ」
たまらず笑いながら答える。
「あはは、まぁ公星には無理だね。いや、それはレビューに書いてあったから……」
「なるほど。まぁとりあえずそこ行ってみようか。僕もオムライスは結構好きだし」
僕達は夏澄の言うオムライスがある「卯天」へと向かう。
到着するとお昼には少し早いものの既に長蛇の列が出来ていた。下手したら人気のないアトラクションより並んでるんじゃないかと思うほどだった。
「結構人いるねー、やっぱり人気なのかな?」
「かなり多いね」
ぼくは素っ気ない返事をして思い出した様に携帯を取り出す。蓮希からのメールはまだ来ていなかった。
「蓮希ちゃんからはまだ来てないの?」
「ああ、来てなかった。こんなに遅いの変だよね?何かやらかしてなければいいけど……」
不安でいっぱいになる僕に夏澄は話題転換をしようと話しかけてくれる。
「ところであの入り口のお姉さん、なんかポチポチ押してない?ほら、あそこ」
言われてみれば入り口のところで何やら店員さんらしきお姉さんが入って行くお客さんの横でポチポチと何かを押している。まだ遠いので何をしているのかはさっぱり分からない。
「人数のカウントでもしてるのかな?」
近付くにつれて手に持っているのは数取器だとわかる。
「でも五人くらいが入っても一回しか押さなかったりしてるっぽいよ?」
「あ、ほんとだ。てことは何組か数えてるんじゃないかな?」
「あーきっとそうだね。でも何の為に?」
「何の為だろう?」
見当のつかない僕は夏澄の質問を繰り返しただけだった。
「じゃあ順番来るまで考えとこっか。席に着いたら意見交換ね。公星ちゃんと考えといてよ」
「わかった。答え合わせは出来るかわかんないけどね」
二人は沈黙して考え始めるのだった。
「次の方どうぞ。次の方?あのー……」
そこでやっと気付く。前には少しスペースが出来ていた。
「す、すみません」
隣で考えている夏澄の手を引き受付へと進む。
いつのまにか一番前だったようだ。
「二名様でしょうか?」
「あ、はいそ……」
カランカラン。
突如耳をつんざくような大きな音鳴り響いた。




