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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
3/53

3.委員

 教室に着くと吉岡さんにおはようと声をかけられた。

僕はおはようとだけ返して席に着く。


「今日クラス委員決めだね。吉野くんは何にするの?」

僕の目線の高さまで背筋をピンッと伸ばしてくる。


「僕は図書委員と保健委員にするつも……」

「おっはよーかすみん」

言葉を遮るように公星の肩から蓮希が顔を出す。


「あ、おはよー蓮希ちゃん」

返事を聞いた蓮希は意外にもあっさり、そして満足気に自分の席へと移動していく。


「ここの学校って委員掛け持ちできるんだね。これからよろしくね、可愛い寝顔の吉野くん」


「掛け持ちできるよ。って、か、可愛いって……え、何で知ってるの?」


 吉岡さんはフフフと笑うだけだった。

あ、昨日の離れていく足音は吉岡さんのだったのか。

笑う吉岡さんを見ながらふと思い出していた。




ガラガラッ。

「席につけ」

 担任の冬川(ふゆかわ)先生の一声にクラス一同席に着く。

そのまま流れはクラス委員決めに向かう。

やはりクラスの男子たちはあまり積極的ではない。

男子は僕が挙げた図書委員と保健委員以外は全然決まらず他は後回し。


 その一方で女子はほとんどすんなりと決まった。

女子が決まった後の男子たちは、珍しく数人が学級委員に立候補した。


 理由は火を見るよりも明らかだった。

吉岡さんが学級委員と図書委員になり、図書委員は僕に決まっていたからだ。

 結局話し合いでは決まらずクジ引きの末、運動神経抜群、勉強もそこそこできモテモテ。

身長の低さが唯一のコンプレックスであり、クラスで一番だった人気者、青木(あおき) 公孝(きみたか)が学級委員となった。

無事にクラス委員決めを終え解散となる。


「また明日ね、吉野くん」

「うん、また明日」


 吉岡さんは青木くんと委員会への準備をしていた。

僕は教室を静かにあとにした。




「待ってよーこうくーん」


 声が徐々に近付いてくる。

振り向くとすでになっちゃんが目の前にいた。


「置いてくなんてひどいよ」

「約束してないだろ」

「してないけど……」


 一瞬ムスッとしたなっちゃんはすぐに通常運転に戻り僕の隣に並んだ。


「こうくんってかすみんと仲良かったんだね」

「……」

戸惑う僕を見て察したのだろうか。


「夏澄ちゃん! 吉岡夏澄ちゃんだよ!」

なっちゃんが言う。


「あー、吉岡さん。挨拶くらいはするけど……あれは仲良しっていうのかな?」


「こうくんは話しかけられても嫌そうじゃないね。もしかして好きになっちゃった? かすみん可愛いし」


「僕っていつも嫌そうにしてた? まだ会ったばっかだしいくらなんでもそれは……第一初恋すらまだ……ごにょごにょ」

否定しようとしたが恥ずかしくて言葉に詰まった。


「うーん、こうくんが転校して来たばかりの時は? 最近はあんまりないけど。え、てか初恋もまだなのー? こうくん子供ー」

一瞬表情が曇ったなっちゃんだったが、いつもの笑顔に戻る。

表情が怪人二十面相のようにコロコロと変わるのは昔からだ。


「なっちゃんはどーなんだよ」

僕は照れ臭くなって切り返す。


「どうかなー」

僕の顔を下から覗き込むようになっちゃんが上目遣いで言う。


「誤魔化すなよ」

僕は目を逸らして再度聞こうとする。


「乙女の秘密は聞いちゃだめだぞ」

「乙女がどこに……いてっ」

少し膨れたなっちゃんに肩パンをもらう。


「もぅ、こうくんのバカ」

なっちゃんは僕に聞こえるか聞こえないかのボリュームで何かを呟いた。


 そうこう話している間に家に着いていた。


「また明日ねこうくーん」

結局誤魔化されたままの事に気付かなかった僕は手を振り玄関のドアを開けた。

その日も遅くまで欠かさず勉強。

医者になるためには必要なことだ。

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