26.待ち合わせ
翌日、午前八時四十五分。
僕は梅坂駅のホームに蓮と来ていた。
時は蓮希との補習の勉強よりも前。
勝負の金曜日の夜に来た一通のメール。
「明後日の日曜日空いてる?まぁ空いてなくても空けといて。笠松遊園地のワンデイパスを五枚譲ってもらったんだけど、姫華ちゃんと蓮くんは空いてるそうだからWデートします。拒否権なし!梅坂駅に九時!時間厳守で。蓮希ちゃんも誘ってきてね」
補習の前に起きて確認した。
これもまた憂鬱な気分を増長させていたのだ。
遊園地は"普通"の人にとっては楽しい場所だろう。
生憎、僕は普通ではない。
というのも遊園地があまり好きではないのだ。
理由は至極単純。
乗り物に弱いのだ。
憂鬱でしかない。
勝負の件が無ければ絶対に行かないのに……
予定がなかったから良かったものの、行くのが決定事項というのは強引ではないか?
とまぁそんなわけで蓮と集合十五分前にいるのだ。
「今日蓮希は来ねーのか?」
「蓮希は補習。一応伝えたから昼からでも来るんじゃないかな?終わったらメールくれるはずだから大丈夫だよ」
「そういえば補習か、今日は確か担当が熱血体育教師の松岡先生だったはずだぜ。あの人合格点出るまで帰さないって聞いた事あるし、来れねーんじゃねーの?」
「昨日勉強したし大丈夫だよ。多分……」
「まぁ気にしてもしゃーねーな」
「何がしょうがないの?」
不意に後ろから声をかけられる。
二人共遊園地に行くとは思えないようなスカートだった。
夏澄は水玉のブラウスに青いデニムスカート。
姫華はパステルピンクのワンピースに麦わら帽子。
「おっす、蓮希が補習なんだけど担当が松岡先生だから来れねーかもなって話。姫華のそのワンピ良いな。その色似合ってるし可愛い。夏澄ちゃんも可愛いね」
話の説明とサラッと服装を褒める蓮。
夏澄は僕の前で、
「どう?」
と言わんばかりに手を広げている。
「夏澄って脚長くて綺麗だね」
ふと思った感想をそのまま述べる。
「服装見なさいよバカ……でもありがと」
「んじゃ揃ったし行くか」
「まもなく、一番線に各駅停車、那浪行きの電車が参ります。危険ですので黄色い線の内側までお下がりください」
アナウンスが流れる。
「やべっ、急ぐぞ」
ギリギリで電車に乗り込む。
目指すは三駅先の「笠松駅」だ。




