25.恒例行事
土曜日、今日は午後から蓮希の勉強を見ることになっている。
明日の補習テストで合格点を取るためだ。
もはや一年の時から恒例と言っても過言ではない補習のテスト勉強。
テストが終わって解放されたかと思うとこれだ。
まぁ今回は数学だけで済んだだけマシか……
憂鬱な気分になりながらも早めの昼食をとる。
少し休憩を挟み、重い腰をあげる。
足取りはまるで地面に根が生えているかのように重い。
隣の家だというのにひどく遠く感じる。
呼び鈴を鳴らすといつもは蓮希の母が出てくるのだが、今日は仕事でいないらしい。
代わりに元気な蓮希が飛び出す。
補習の勉強に有り余る元気を残しといて欲しいものなのだが……
珍しく蓮希はやる気だった。
いつもと同じ蓮希の部屋の机には数学の参考書が。
感心感心。
どんな感じの参考書か見るか、どれどれ。
次の瞬間には僕はまるで言語を忘れたかのようになる。
挟まっているのは漫画だった。
「げっ」
お茶を入れて部屋に来た蓮希はゆっくりと来た道を引き返そうとする。
「はーすーきー」
自分でも驚くほどの不気味な声で罪人の名前を呼ぶ。
「は、はい!」
足元にお茶を置き、その場で気を付けをする蓮希。
僕は馬鹿らしくなり帰ろうとする。
先ほどとは一転して、足が風船のように軽い。
「ま、まった!」
僕の前に立ち塞がり唯一の出口を押さえられる。
「これが目に入らんのかぁー」
目の前に広がるのは間違いだらけの答案。
赤いペケばっかり。
本人は何故かドヤ顔。
その顔を崩すことなく続ける。
「こんな点数の私を見捨てることがどーゆーことかお分かりかね?公星くん?」
僕は付き合ってられないと華麗にスルーし、横を通り抜けようとする。
「冗談です!ほんとお願いします」
土下座までしていた。
まぁこれ以上は時間の無駄だ。
「もういいから早く始めるよ」
こうして吉野公星の地獄のスパルタ授業が始まる。
幾度も寝ようやめようとあらゆる手でサボろうとする蓮希を押さえ込み、十九時まで机に拘束し続けた。
最後に、
「明日頑張ってね。補習終わったら来なよ。明日は夏澄達と四人で遊びにいくから」
僕はそれだけ言い残して家まで帰った。




