24.勝負の行方
わくわくして迎えた月曜日。
返却は名前順だ。
夏澄は受け取った直後に落胆した様子だった。
まぁもう勝ちは決まったようなものだろう。
僕は自分のを受け取る。
九十六点。
四点問題を一つ落としただけだった。
勝利を確信した僕は、放課後夏澄に勝負をやめても良いと持ちかけた。
夏澄は頑固な性格なので、私から言ったしやめないと言う。
僕はやれやれというように自慢気に九十六点の答案を出してやった。
夏澄は驚きのあまり持っていた自分の答案を落としたようだった。
僕は<キミくん>についての話を聞こうと口を開き夏澄の答案を拾おうと腰を曲げる。
「お願いのことなんだけど、文化祭と公園でのキミくん……て……」
そこで言葉に詰まる。
拾い上げた答案には九十七点の文字。
何度も目をこすって確認する。
見上げると夏澄は満面の笑みでピースサインを作っていた。
夏澄はニコニコしながら言う。
「勝負は私の勝ちみたいだねー」
勝ち誇った顔の夏澄は続けて言う。
「じゃあお願いのことだけどさ、私の告白の練習台になってくれない?」
それを聞いた瞬間、心の奥底でモヤモヤが生まれた。
決して僕がそれに気付いたわけではない。
しかし僕は何故か断ろうとしていた。
「それはちょっと……」
断ろうとする僕の目の前で夏澄は自分の答案をヒラヒラとさせる。
僕はそこで諦めて、
「わかったよ」
と一言返す。
夏澄はそれを聞いてすかさずに言う。
「あ、ちなみにキミくんていうのは私の好きになった人の名前ね。前に言ったのはもうすでに公星が練習台だったてことね。きゃー、恥ずかしい」
恥ずかしがる夏澄にドキッとした。
顔を手で覆う夏澄を見ると同時に今度は自分でもはっきりとわかるようにモヤモヤとしたものが生まれた。
結局聞きたいことは解決され、色々と負けた気分になった。
それと同時に生まれた謎のモヤモヤの正体に頭を悩ませる。
帰り道は蓮希も加えて三人だった。
蓮希は得点が平均十点も上がったとハイテンションだった。
それでも苦手な数学だけは補習を受けるのだが……
まぁ本人が嬉しそうなので良しとしようか……
帰宅後、お風呂に入りご飯を食べて珍しくすぐにベッドに転がり込んだ。
夏澄に負けたのが悔しい……
ふと夏澄の顔が浮かぶ。
「キミくんは私の好きな人なの」
脳内の夏澄の言葉にモヤモヤが現れる。
心を見透かされたようで二度負けた気分がする。
あーモヤモヤする……




