22.帰り道(蓮サイド)
これは勉強会帰りの蓮と姫華サイドのお話です。
勉強会を終え蓮希の家を出る。
「さぁ、公星。俺は姫華送ってくから夏澄ちゃん送ってやれよ。じゃーなまた学校で。テスト頑張ろうぜ」
「バイバイ公星、夏澄ちゃん。頑張ろうね」
手を振る二人を背に姫華と歩き始める。
この辺りは車の通りは少ないが道が狭く歩道がない。
俺は黙って車道側に移動する。
「ありがとね蓮」
お礼を言われるとは思わなかった。
蓮は少し照れ臭そうに、
「んー」
とだけ返す。
「今日楽しかったな。まぁ明日は勉強しねーとテストがやべーけど」
「そうだね。明日こそは勉強しないとね」
少しだけ沈黙が流れる。
ゴオォォォ。
前から少し荒い運転の車が来る。
「あぶねぇっ」
咄嗟に姫華を抱き抱える形で壁際に接近する。
車のサイドミラーを間一髪のところで避ける。
「ったく、あぶねぇなぁ。大丈夫か、姫……華?」
姫華の方を向くと思っていたよりも顔が近い。
「大丈夫……」
二人して顔を真っ赤にしすぐに離れる。
少し時間を置き、二人は落ち着くと再び歩き始める。
「しっかし、蓮希はゲーム弱いよな」
沈黙を嫌った俺は笑いながら言った。
「まぁ最後のババ抜きに関しては蓮完璧に負けだったけどね」
すかさず姫華が小声で呟く。
「うぅ……まぁ確かに、自分でも見苦しい言い訳だったな」
痛いところを突かれ、少し反省する。
「私が負けてたら恥ずかしくてもちゃんと言ってたけどなぁー」
そんなことを言って俺の顔を覗くように見上げる姫華と目が合う。
俺は姫華の視線から目線を外して明後日の方向を向く。
この上目遣いは卑怯だ。
先程から行方知れずの姫華の左手に自分の右手を重ねる。
「あっ、繋ぎたがってるの……バレた……?」
顔を赤らめた姫華が言う。
「ふらふらさせてるわ何回か手当たるわでバレバレだよ……」
「てか俺も繋ぎたかったし」
と聞こえないように付け足す。
「で、好きな人は?」
上手く誤魔化せたつもりだったがダメだったらしい。
「俺の好きな人なんて二年じゃ知らない奴いないだろ」
「えー、私知らないなぁー」
白々しくそう言う姫華。
「言わなきゃダメか?」
「言わなきゃわかんないんだもんっ」
姫華はニコニコと微笑んでいる。
やっぱり可愛い。
言葉遣いも仕草も何もかもが愛くるしい。
「俺の好きな人は、おま……姫華だよ。小学校の時からずっと好きだったよ」
「私も大好きだよ。蓮!」
姫華も間髪をいれず返す。
改めて言うのも言われるのも恥ずかしい。
嬉しそうに微笑む姫華を見て、また今度言おう。
先ほどよりも一層強く手を握った。
姫華の家に着く。
しかし、姫華は手を離そうとはしなかった。
「テスト終わったら……二人でどっか行くか?」
蓮は手を離し少しうつむき気味の姫華の頭を撫でながら言う。
「……うん」
二人は約束を交わして別れる。
今日一番の笑顔で。




