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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
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2.友人

 蓮と姫華とは小学校からの友達で、僕が大阪から神戸に引っ越してきて間もない頃、クラスに馴染めずにいる僕にわざわざ声をかけてくれた。

静かで大人しく、容姿は良くも悪くも普通の僕。


 僕なんかとは正反対の明るく社交的で優しい二人だ。

今では高校の中でもそれぞれ学年で一、二を争う美男美女。

僕と同じところと言えばそれぞれ身長が男女の平均だという事だけだろう。


 友達の多い二人に比べ、僕には友達が全く出来ず、誰かと会話することも少なかった。

いや、正確には友達を作ることも他人と会話することも避けていた……のかもしれない。

蓮に言われるまで気付かない、というか未だに自分ではわからないので理由は分からないが……


 教室のドアをそっと開ける。

教室にはもうすでにほとんどの生徒が着席していた。

ドアに一番近い自分の席に座る。




 高校二年になった初日と言えば始業式とクラスでの自己紹介。

長ったらしい校長の話も終わり、クラスでは次々と自己紹介が始まる。


 その日一番ざわついたのは、噂の転校生、吉岡(よしおか) 夏澄(かすみ)の時だった。

少し小柄で長く透き通る様な綺麗な黒髪を後ろでくくったポニーテール。少し高めで、耳に心地よい声にはしっかりと力がこもっており、終始明るく笑顔で自己紹介をしていく。

容姿は姫華に勝るとも劣らない。

そういうこともありすぐさま男子の人気者となった。

自己紹介中何度か目が合った気がしたのだが……


 放課後になると同じクラスの男子が転校生と目が合ったと大騒ぎしていたので、緊張する中でもみんなと目を合わせるなんてすごい人だ、と密かに尊敬した。

僕にはとても真似できないことだ。




 学校は午前で終わり、いつもは混んでいる食堂で一人昼ご飯を食べる。

全てを片した後にはゆっくりと図書室で読書をした。

あまりにも静かで誰も来ないのでウトウトしていたのだが、ついにはそのまま眠ってしまったようだ。


 ドアから離れていく足音で目を覚ますと、再び足音が近づいてくる。

戸締りに来た先生に促され足早に家に帰る。




 晩御飯を軽く済ませ、勉強のため机へと向かい参考書を開く。

途中父と母が帰ってきたが、

「おかえり」

とだけ声をかけそのまま勉強し続けた。

日付が変わる頃には、勉強終えて布団にもぐる。

疲れていたのだろう。

図書室で長い睡眠を貪ったはずの僕は、すぐに睡魔に負けてしまった。




 翌日はあの夢を見ることもなかった。

昨日とは違い、僕の心は窓の外の雲一つない晴天のようにスッキリとしていた。

今日は支度を早急に済ませて玄関の門をくぐる。

隣の家の呼び鈴を鳴らすと、呼び鈴の音が鳴り終わらない内に、突風を起こすほどの勢いで玄関のドアが開かれる。


「おっはよー、こうくん」


 そう言っていきなり抱きついてきたのは、隣人の活発少女、夏海(なつうみ) 蓮希(はすき)。身長は平均より低く、自慢の黒髪を今日はいつも通りツインテールにしている。

なっちゃん(と僕は呼んでいる)は蓮や姫華と同じく小学校からの付き合いだ。

家が隣ということもあり、親同士の仲が良く、小学校の頃は親が仕事から帰ってくるまでよくなっちゃんの家でお世話になったものだ。

僕はなっちゃんをひきはがして言った。


「昨日は寝坊か? なっちゃんは一組で僕と同じだよ」


なっちゃんはあからさまに表情を変えて答える。


「そーそー、寝坊〜」

よしっ、と小さく後ろを向きガッツポーズをとる。


「今なんか言わなかった?」

僕は振り向いてなっちゃんに尋ねる。


「え? な、何も言ってないよ?」

まるで口に出す予定がなかったみたいに顔を赤らめている。内容は聞こえなかったけど。


 なっちゃんの気持ちなどは知る由もない僕は、なっちゃんを促して学校へと歩き始めた。

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