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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
18/53

18.病院

 文化祭から数日後、先生から、夏澄は命に別状はないことと入院先の病院名が告げられた。

 放課後、僕と蓮希はお花、蓮と姫華はお見舞いの果物を買い、二組はそれぞれ(くすのき)病院へと向かった。


 僕と蓮希は二人より早く病院に着いた。

病室に行く前に蓮希はトイレに行くと言うので病室の前で待つことにした。

一人だと会話できるような話題を持ち合わせていないからだ。


「もうすぐで私死んじゃうのか……」


 不意にか細い声が目の前の病室から聞こえてくる。

聞き覚えのある声。

慌てて病室の名前を何度も確認する。

間違いない。


吉岡 夏澄様。


 僕は勢いよくドアを開けた。

きゃっ、と驚いている夏澄に僕は詰め寄って問いただす。


「今のどういう意味?」


「え、なんのこと?急にどうしたのよ」


と、笑って誤魔化す夏澄に僕は真剣な表情を向け続けた。



 しばらくの沈黙の後、はぁーっと長いため息を一つするとゆっくりと静かに話し始めた。


「私小さい頃から元々腎臓が悪かったんだけど、二年前くらいから徐々に機能が落ちてきてて、先生が言うにはあと一年持たないかもしれないんだってさ」


 突然の宣言に僕は頭が真っ白になった。


「他のみんなには内緒だよ」


 再び笑顔に戻った夏澄に僕は正直な意見をぶつけようと口を開く。


「じゃあ学校なん……」

「私さ!」

少し強めの口調で僕の言葉を遮る。


「私さ、学校に憧れてたんだ。小さい頃から体が弱かったし。普通の人みたいに学校に通って、友達や好きな人も作ってドキドキして。帰り道にはみんなでファミレスに寄ったり友達と恋バナしたり、それからそれからーー。だから今もとっても楽しいの!」


 そう言って話す夏澄は本当に楽しそうで幸せそうで……

そんな夏澄を見ると、学校なんて行かずに安静に。

なんて言葉は僕の口から言えるはずもなかった。



 少しの沈黙の後、廊下から三人の声が聞こえてくる。

病室のドアが開くと夏澄はいつも通りの笑顔で三人を迎え入れる。

予想以上に元気な夏澄を見た三人は、すぐに学校にも来れるということもあり、あまり長居するのも良くないという事ですぐに帰ろうとする。

 帰り際に僕だけもう一度呼ばれ、内緒にするよう釘を刺された。


 一番近かった蓮には少々聞こえていたようで、

「何が内緒なんだ?」

と、聞いてきたが、夏澄はベッドの上から、

「二人だけの秘密」

と、悪戯に笑うだけだった。




 次の週からは宣言通り夏澄は学校にも来るようになった。

中間試験までは丸々一週間。

夏澄はいつも通り振舞っている。

様子がおかしいのはあの話を聞いた僕だけだった。



 あっという間に夏澄がいることに慣れた金曜日、テスト勉強の為に土日は僕、蓮希、夏澄の三人は蓮希の家で集まろうという約束を交わした。

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