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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
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12.代役での劇

「俺が代わりに()るよ」

落ち込む皆を励まそう、小山は悪くない。そう言った思いからか青木が手を挙げて言った。


「でも今からじゃセリフとか厳しいんじゃ……」

ガラガラッ。

梨花の言葉を遮るようにドアが勢いよく開く。


「みんなー遅くなってごめんねー」

 なっちゃんを先頭に僕と夏澄も教室へ入る。

重苦しい空気感を感じ取り、なっちゃんも流石に少し微妙な顔になる。

 後から来た僕たち三人に青木くんは事情を自分が代役をする事も含め話してくれた。

 クラスの皆は不安だがそれしかないと言わんばかりの顔をしていた。


 パンッパンッ。

急に夏澄が手を叩いて注目を集めた。


「みんな落ち着いて聞いて、代役ならピッタリの人がいるから大丈夫よ」

 夏澄の一言で雷に打たれたような衝撃がクラス中に走った。


「そうだよ、こうくん秘密の特訓でもひめっちの聞いてたし、レンレンとも練習してたんだよ。こうくんがやれば大丈夫だよ」

 蓮希も夏澄に続く。

 皆の顔が少し上を向いたのが見えてしまった。

こうなってしまってはしょうがない。


「青木くん、僕がやるよ。セリフは最後の方以外はほとんど覚えてるし」

 僕は、蓮との練習でバッチリだよ。と、蓮希と夏澄には付け加えた。

青木くんは自分の両頬をビシッと叩き気合を入れ直す。


「お願いするよ、吉野くん。あ、衣装は大きく作り過ぎた衣装をきっちり整え直すよう頼めるかな? 石井さん、家入さん」


「「任せて。必ず間に合わせるから」」

そう言って二人は早速作業に取り掛かる。


「他の皆は舞台の準備。必ず成功させよう。小山も準備頼むぜ」


 青木くんの的確な指示のおかげで何とかギリギリ間に合わせることが出来た。

 本番は緊張で頭が真っ白だった。

初めて見た夏澄の演技はまるで女優さんのようで見惚れてしまい、危うくセリフが何度もとびかける。

あっという間に時間は過ぎていった。


「目を覚ましてくれ、ジュリエット」

 舞台の終盤僕は目を閉じている分近付いてくる気配に意識が向かう。

残りの自分の演技は夏澄が離れて膝から崩れ落ちた瞬間に目を覚まして起き上がる。

大まかに言えばそれくらいのものだ。

 しかし、夏澄が遠のく気配がしない。 


 おかしいと感じ軽く瞼を開く。

目の前には少し赤く色付いた夏澄の可愛らしくて小さな顔があった。

そこでハッと急いで顔をあげて演技に戻る夏澄。

そのまま演技は続きなんとか無事に終わりを迎えた。

お辞儀をした皆は頭の上から多くの拍手を浴びていた。



 僕の脳裏には色っぽく少し紅潮した夏澄の表情が焼き付いていた。

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