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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
11/53

11.安堵と落胆

 二年の劇は体育館で行われる。

順番はくじの結果、五組、三組、二組、四組、一組の順となった。

僕はなっちゃんと夏澄を連れて蓮と姫華の劇を観に行くことにした。


「あの二人、喧嘩の後一度も合わせてないけど大丈夫かな?」

蓮希の言葉に

「「大丈夫だ(よ)」」

と僕と夏澄が同時にかつ食い気味に即答する。




 体育館内が真っ暗になり、舞台だけにライトが当たる。

出だしは上々、舞台は中盤に差し掛かる。


「ああ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。その名を捨てて、私を愛すると誓って。名前を捨てて私をとって」


 練習以上の姫華の演技に三人は見惚れる。


「とりましょう。そのお言葉どおりに。恋人と呼んでください、それがぼくの新たな名前。これからはもうロミオではない」


 姫華に負けず劣らずの迫真の演技を見せた蓮。

終演と共に体育館には大きな拍手が鳴り響いた。


 無事に舞台が終わった舞台裏、


「蓮、お疲れ様。あの時はごめんね」


 姫華は夏澄と共に作った昨日のクッキーをそっと手渡した。


「俺の方こそ怒鳴って悪かった。ごめん。演技すごく良かったよ」


 そう言うと蓮はクッキーを一つ取り出して食べる。


「うん、美味い」

と言って姫華に微笑みかける。

それにつられて姫華も自然と笑顔になる。


「さぁ、片付けしちゃいましょ」

と、二人は仲良く手際よく片付けに取り掛かるのだった。




劇を観た後の僕たち三人は最後の通し練習の為に教室へと向かっていた。



 その頃の教室ではほとんど皆揃っていたが、そこに肝心の小山の姿はなかった。

探しに行くと青木が教室を出ようとした時だった。


 ドアが異様な程ゆっくりと開く。

そこに立っていたのはマスクをした小山だった。


「良かった、探しに行こうとしてたんだよ」

青木が声を掛けるが返事がない。


いつもよりも一回りも二回りも小さく見える小山は、トボトボと黒板に歩み寄るとおもむろに何かを書き始めた。


『風邪で大きな声が出ません。本当に申し訳ありま……』


 そこで落としたチョークを拾う小山の肩が震えているのを誰もが見逃さなかった。

そして、理解した。


 小山をみんなして慰めるが、どうしようもない事実を叩きつけられ、皆小山を気遣い口には出さないがひどく落ち込んでいた。

もちろん、小山はお調子者だが同時に人一倍責任感が強く憎めない存在。だからこそみんなよりも遥かに絶望した青白い顔で俯いていた。

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