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キミのくれたモノ  作者: 山路空太
10/53

10.二人の過去

 時は少し遡り公星が蓮を待っていた頃、姫華の自宅ではーーー


「それじゃあよろしくね夏澄ちゃん」


「私こそロミオ役だしよろしくね。あ、これ一応秘密にしといた方が楽しめるだろうから、周りには内緒にしといてね」

と姫華と夏澄は練習を再開していた。

お互いにお互いを褒め合いながら、時には本音で注意点を話し合い着実に上達していった。




 夕方には練習を終え姫華の提案でクッキーを二人で焼くことにした。

クッキー作りの際には公星達四人の昔の話で盛り上がった。


「蓮はね、小学校の運動会のかけっこやリレーではずっと一番だったのよ。蓮希と私は一位か二位だった。公星はあまり運動得意じゃないからずっと最下位だったけど」


「楽しそうでいいな、羨ましい」


 つい夏澄がそう口に出す。

少ししょんぼりしながら言う夏澄に姫華は慌てる。


「ごめんね夏澄ちゃん、つい昔の話を……」


「いいの、もっと聞かせて」


「あ、うん。そうそう蓮ってばすっごく音痴なんだよ。公星は意外にもめちゃくちゃ上手くて、私と蓮希は多分普通かな。あとあと、蓮はねーーー」


 そこでクスクス、と夏澄は笑い、すぐにごめんねと謝る。


「姫華ちゃんはよっぽど蓮くんの事好きなのね。さっきから蓮くんの話ばっかりだし、何でも蓮くんが最初に出て来てる」


「え、そそ、そんなこと……え、えーと」



 長い沈黙の後、自分の髪を口元でいじりながら姫華は小声で言った。


「実は小学生の頃から……内緒ね……」

顔を林檎のように真っ赤にしていた。


「あ、夏澄ちゃんの初恋ってどんな感じだったの?」 不意に姫華が切り返す。

少し黙っていた夏澄だったが、私だけ秘密にしておくのは悪いもんねと話し始めた。


「私実は生まれつき身体が弱くって、小さい頃は森の中の診療所でずっといたの。小学生になっても殆ど学校には行けなかった。その森の診療所である男の子に会ったの。毎日毎日どんぐりや桜の花びらを持ってきてくれて、学校のお話を聞かせてくれる優しい子だったの。今思えばそれが私の初恋。みんなには内緒ね」

 そう言ってにっこりと笑う。


「そうなのね。その子の名前とか特徴は? その後どうなったの?」

珍しく姫華が食い気味に聞く。


「よ……よく覚えてないんだよねこれが、あはは」

 少しうろたえ、頬を軽く染めながら夏澄は言った。

時刻は十八時半。

明日頑張ろう、と二人は別れる。


 時を同じくして、決意を固める少女が一人。


「ミスすみ高になれたら後夜祭でのダンスの相手指名権。絶対手にしてやる」

 皆が沢山の想いを抱えたまま、本番はもう明日にまで迫っていた。

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