晋也VS係長 勝者は?
キレイな人が店先まで送ってくれた。女将さんと係長はその方に別れを告げた。
「じゃ、ケイちゃん帰ろっか。佐々木クン。またね!」
「あ、ハイ。お気をつけて。」
帰って行く、杉沢係長ご夫婦。係長…子供みたい…。
あの奥さんに甘えてんだなぁ~。
会社ではあんなに頼りになるのに…。
「ケイちゃん。タクシーつかおっか。」
「何言ってんの?お金貯めてんのに。歩け!若武者!」
「じゃ、影フミしながらかえろ?」
「夜なのに?バカなの?」
「じゃ、じゃ、じゃ…。」
「あーもーいい!なんでも!」
「もうすぐ家が建つぞー!!」
「おーーー!!!」
ふふ…。仲良い…。
あんな夫婦になりたいなぁ~…。
ダンナさんがチョーかっこ悪いくらい奥さん愛しちゃって…。
ふふふ…。
あたしも…甘えられる人になりたいな…。
アパートに到着…。あ…電気ついてる…。
晋也帰ってるんだ…。
「ただいま~。晋也帰ってたの?ご飯食べた?」
「あ…お、おかえり…。」
なにか隠した。
はぁ~どうせエロ本でしょ?
もう…かっこわる…。
「なに?なんの本?」
「いやぁ…これは…。」
彼が隠した冊子を無理やり取り上げて見て見た。
「ハネムーン…台湾…沖縄…ハワイ…シンガポール…グァム…オーストラリア…。」
「あの…その…。」
「……え?」
「あの…しばらく夜遅かったじゃん?」
「ウン…パチスロでしょ?」
「いや…道路工事のバイトして…お金貯めてた…。」
「え…?」
「あの…もうすぐ…結婚しようかなぁ…と…。」
「だれと?」
「ユリと。」
「なにそれ。プロポーズもなにもなし?」
あたしは鼻で笑った。
「いやぁ…しようと思ってたんだけど…先に見られちゃって…。」
「もう…かっこ悪!」
「…ゴメン。」
「でも…かっこいいよ…。」
「あは…。」
「9対1で晋也選手の勝ちです!」
と、彼の手を取って上に上げた。
「え?…や…やったぁ!…なにが…??」
「うふふ…。………んーー。台湾の「千と千尋」のモデルになったとこみたいなぁ~。」
「でしょ?言ってたからさ!だから台湾多めにパンフレット!」
「どれ?ちょっと見せて!すっごい!やっぱ行きたいな~!」
「あの、千尋の両親が豚になっちゃう、あの屋台あるのかなぁ??」
「ね!あたしもそう思ってた!ウズラみたいな鳥のヤツ食べたいんだぁ~。」
「オレも、お父さんが食べてた、でかい小籠包みたいなの食べたい!」
「あたしも!いいね!いいね!台湾にしよう!小籠包なら絶対あるよ!…ふふ…楽しみ!」
「ユリ…。休みに、指輪見に行こうな。」
「ん?婚約指輪?」
「うん…ずっとスロットやってたから、そんなに高いの買ってあげれないけど…。」
「わかってるよ。誕生石でいいって。」
「誕生石?え?ユリの誕生日…4月16日…?」
「誕生石だと幸せになるんだよ!天然物よろしく!ジルコニアはダメだからね~。」
「お、おう…!」
え…誕生石ってなんだ?ジルコニアってなんだ?
「んふふ…。」
【おしまい】
前作「私は「おかえり」といいたい」の続編でした。
合わせて読んでいただけるとありがたいです。