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 対策室の3人はここでの仕事も終わったので、邪魔にならないように次の仕事の打合せを簡単に行い、撤収することになった。

 彼らの仕事はあまり注目されることもなく、裏方に徹して終わることが多い。

 

 黒狼は天使の事が気になったが、銀嶺や薔薇、貴婦人達に囲まれているのを見ると大丈夫だと安心した。

 小さいので、大きい精霊に囲まれているとほとんど見えないが、ときおり笑い声が聞こえたりするので上手くいっているようだ。


 『りーくん、また会おうなぁ』

 黒狼は心の中で告げると、静かに部屋を後にした。











 銀嶺はリルファを迎えに行くとの約束を果たせて、ホッとしていた。

 自分の眷属ともいえる子狼達を、リルファに譲り渡して助けとなるようにしていたが、界への影響を考えてあまり強い個体にはしなかった。

 それに、リルファの良き眷属となり、リルファと共に育っていくような存在の方がふさわしいと思ったのだ。

 子狼は短い間にもかかわらず、上手く育っているようでリルファに近しいものになっていた。


 銀嶺の肩に抱きついていたリルファは、今は肩に座って銀嶺に一生懸命お話しをしている。

 主に、子狼達の事だ。

 名前をつけただの、一緒に歌を歌っただの、ダンスを踊っただの身ぶり手振りで話してくれるので、部屋に居る者は皆とてもにこにこしている。

 

 もっとも、リルファが鏡から現れた後、何の問題もなかったわけではない。

 銀嶺に全身で甘えてくれるのに対して、薔薇や貴婦人たちにはちょっと警戒してるような、一歩引いたような態度なのである。

 

 銀嶺がリルファを皆に紹介したとき、もじもじと小さい声で自分の名前を言ったので、照れているのかとも思ったがどうも違うようだった。

 誰かが話しかけると、ちょっと笑ったり、頷いたりするもののまったくお話ししてくれないのだ。

 今も銀嶺に話す時に、ちらりと周りを気にする素振りはするものの、やはり銀嶺にだけ話しかけているようだ。

 小さい子供が人見知りするのを、大人の精霊達は知っていたので、皆で様子を見ているところだ。


 「でねぇ、あーくんとかーくんがおてつだいしてくれるから、ぼくとーってもぉーたすかったのぉ。じぃじぃー、ありがとぉー」

 あっちにとび、こっちにとぶリルファの話が一段落したようだ

 リルファは満足そうにため息をつくと、銀嶺の肩の上で立ち上がった。

 大人しく銀嶺のひざの上で、くつろいでいた子狼達も、ふよふよとリルファの側にやってきた。

 子狼達は羽はないが、空を駆ける事ができるのだ。


 「じゃあ、じぃじぃ、ぼく、ろーくんをさがしにいくねぇ」

 銀嶺にそう告げると、子狼達と共にふよふよと扉の方に行こうとする。

 銀嶺はあわてて、リルファを呼び止めた。

 「リルファ・・・いや、りーくん、ろーくんとは誰なんだい?」

 天使はちょっと首をかしげてから、あーーー!と声を上げた。

 

 ふよふよと銀嶺のところに戻ってくる。

 「じぃじぃに、いうのわすれてたぁ。ごめんねぇ。ろーくんねぇ。じぃじぃがよんでるの、ぼくにおしえてくれたのぉ」

 

 


 リルファの言葉により、対策室の水簾が銀嶺にもう一度鏡を試すように勧めたことを思い出した。

 彼は何らかの対策をとった上で、銀嶺に声を掛けたのだ。

 ということは、『ろーくん』は水簾に聞けば誰かわかるに違いなかった。

 リルファがろーくんを探すより、ろーくんに来てもらうほうが早いと説得して、水簾に連絡をとり、しばらく待つ。

 そうしてようやく、リルファはろーくんに会うことが出来たのだった。

 





 リルファはじぃじぃとろーくんが揃って側にいてくれるので、大満足だった。

 「じぃじぃ」

 「ろーくん」

 と二人の名前を呼びながら、行ったり来たりしている。

 子狼達はあまりにリルファがうろうろするので、近くの椅子の上で待機することにしたようだ。

 

 黒狼はちょっとだけ居心地が良くないものの、リルファの喜びように気の済むまで付き合う事にした。

 呼ばれた当初、黒狼は困惑していたが、銀嶺がしっかりと視線を合わせ頷いてくれたので、今は考えるのは止めている。



 しばらく二人の間をキャッキャッと、笑い声を上げながら行ったり来たりして遊んでいたリルファもようやく落ち着いた。

 今は、ろーくんの頭の上である。

 リルファのおねだり攻撃が炸裂した結果である。

 誰が止められようか?


 銀嶺はさっそく黒狼と話をすることにした。

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