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 「夢のような空間?夢ではないのね」

 どうやら代表で薔薇が質問してくれるようだ。


 「はい、夢ではなく別の界でした。話をして、彼を迎えに行くと約束したのです」

 「彼なのね。どこの精霊なの?」

 それがわかれば、迎えも容易くなるかも知れない。

 

 「癒しの精霊です」

 銀嶺は美しい面に微かに笑みのようなものを浮かべた。









 

 一通りの説明が終わり、いよいよ魔道具を使っての交信が始まるはずだったが、薔薇が銀嶺を引っ張って部屋の隅に行ってしまったのだ。

 ないしょの話があるらしい。

 「なぁ、癒しの精霊て何か特別なん?」

 黒狼が不思議に思うのは仕方ないのかもしれない。

 銀嶺が『癒しの精霊』と言ったら皆驚いていたし、あの銀嶺さまが笑み浮かべていたから。

 銀嶺の笑みが珍しいことは、黒狼さえ知っていたが癒しの精霊のことは知らない。


 「癒しの精霊?あぁ、今日お集まりの貴婦人(レディ)と先代の癒しの精霊は親しい間柄だったと聞いたことがある」

 少しだけ声をひそめて銀狐が教えてくれた。

 上位精霊の事をあまり知らない黒狼と違い、銀狐は知っている事が多い。

 「それに、癒しの精霊を特別な存在だと認識している者が多くて、今回呼ばれた方はそういったものを牽制(けんせい)するためらしい」

 「じゃ、特別ではないん?」

 「あまり存在しないから、そういった意味では特別だけど、面倒なやつらに口出しさせないための今回の集まりなんじゃないかな。貴婦人や薔薇さまに文句を言えるものは少ないから」

 わかったような、わからないような説明に黒狼は首を傾げていた。


 そこに、上司の水簾が現れた。

 水簾は、ダンディーなおじさま精霊である。

 見かけ通りの渋い声で黒狼に説明してくれる。

 「癒しの精霊はとっても大人気でね。独り占めしたいと考える精霊がいるくらいなんだよ」

 困ったもんだね、とため息をつくその姿も決まっている。


 とにかく早く見つけて、銀嶺さまが後見人となり、癒しの精霊を自由にしてあげよう。という作戦らしい。

 まだ見ぬ精霊のために、自分が出来ることがあったら頑張ろ、と密かに決心する黒狼だった。







 銀嶺と薔薇のないしょ話も終わり、いよいよ癒しの精霊探しが始まる。

 鏡の魔道具は精霊の名を告げると、その精霊を呼び出せるという力を持つらしい。

 ただし、相手が望んでいないと呼び出す事は出来ないようだ。

 それに骨董品なので、少々扱いが難しい。

 「難しいて、複雑な操作が必要とか?」

 銀嶺が鏡の前の椅子に掛けるのを見ながら、黒狼はとなりの銀狐にひっそりたずねた。

 「いや、そうではなくて鏡の認めた相手じゃないと使えないらしい」

 あぁ、そういうやつね。

 今の魔道具はそんなことは滅多にないが、昔の魔道具にはよくある事だった、と黒狼もそれは知っている。

 今の魔道具はあんまり個性がないよなぁ、と魔道具研究室の人が言ってたのを聞いたのだ。

 





 銀嶺が鏡に近付き、両手を当てたようだった。

 黒狼たちがいるところからは、銀嶺の後ろ姿しか見えない。

 銀色の長い髪がさらりと揺れてきらめいている。

 『きれーな髪やなぁ。そういえばあの夢の天使もきれーな髪やった。色は違うけど』

 銀嶺の髪のきらめきが、なぜか今朝の夢の天使を連想させた。



 その瞬間、なぜかあの音が聞こえて来たのだ。



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