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お久しぶりです。




 青い鳥ぴーくんは、思わずくちばしをあんぐりと開けてしまった。

 何だろう、この違和感は。

 だって、ここ銀嶺さまのお家と聞いてたのに、とってもメルヘンなかわいいお家だったのだ。


 赤いお屋根のかわいいお家。

 お家の壁にはお花を咲かせた蔓が彩りを添えている。

 薔薇のアーチにかわいくカットされた植木。

 そこかしこに咲き乱れる花。

 玄関まで続く小道には煉瓦が敷いてあり、青々とした芝生が目に眩しい。

 

 チョコレート色の扉を開けると、まっ白なお部屋に天井の濃い色のハリが丸見えになっていた。

 そしてそこには籠やらブランコやら、明らかにリルファたちのサイズの物がぶら下がっていた。

 壁にもミニチュアサイズの階段がついていたり、箱形の飾棚にこれまた小さいソファやクッションやそこかしこに用意されている。

 銀嶺さまたち大人用の家具より、リルファ達の小さい子の家具の方が多くないだろうか?

 

 「ぴーくん、自分の家だと思って、楽しんでくれたら嬉しいよ」

 銀嶺さまのにっこり笑顔にただただ頷くぴーくん。

 「ぴーくん、おうちのなかあんないするよぉ~」

 わふわふ、わふわふ

 ぴーくんはリルファに連れられ、ぱたぱたと家の中を飛んだ。

 

 なんてお家!

 わくわくしちゃう、かわいいお家!

 みんなで探検しちゃおう。

 

 



 はしごを登ったさきに滑り台の降り口がある。

 透明な筒の中を滑り落ちる仕組みだ。

 はしごは、みんな飛べるからいらないのだけど、はしごの先に何があるのか行ってみたくなるものだ。

 「ぴーくん、おさきぃ~」

 リルファは筒の中、ぴゅ~っと滑り落ちて行ってしまった。

 子狼達もお腹を上にしたり腹ばいになったりして、ぴゅ~と滑って行く。

 ぴーくんは中をのぞいてちょっとためらった。

 下の方見えないし、羽ではばたくことも出来ずに落ちていくだけなんて、なんてスリリング!

 一番最初に滑ったリルファなどはとっくに下まで降りて、また滑ろうと思ったのか、ぴーくんの後ろに並んだ。

 

 「ぴーくん、どうしたのぉ。さ、さ、はじめはちょっとこわいかもしれないかもぉだけとぉ、とってもたのしいよぉ」

 「こ、こわくなんかないぞ。ないけど・・・ぴ」

 一度すべってしまえば大丈夫なのだ。

 リルファは降り口に座るとぴーくんを手まねく。

 「ぴーくん、ぼくといっしょにすべってみようよぉ。くっついてすべるのもたのしいよぉ。じゃあ、ぼくがいっちばーん!ぴーくんにばーん、あーくんさんばーん、かーくんよんばーんねぇ」


 え?

 あっ!

 ぴゅ~~~

 きゃーーーーー

 ぴーーーーーー

 くっついてすべると、スピードアップするような気がするのは、気のせい?

 でも、みんなで大きな声で叫びながら滑るのは、とっても楽しい!

 リルファとぴーくんと子狼達はお家を探検したり、滑ったりかくれんぼしたり楽しく遊んで、バタンキューって寝てしまったのだった。

 そこかしこにベットがあったりクッションが置いてあるから好きなところで寝られる。

 何だか自由だなあと思うけど、どこで寝ようか考えるのもまた楽しいのだ。


 ふー楽しかったぁ~

 青い鳥のぴーくんも満足して眠りについた。

 

 ちーがーうー

 ボク遊んだけど、遊びに来たわけじゃない!

 ぴーくんはプルプルッと羽毛をふるうと、眠いのを我慢して執事さんを探した。


 ぱたぱた飛んで明かりのついてる方へ。

 各部屋の扉は閉まってるけど、天井付近は壁がないので小さい子達はどのお部屋も自由に出入りが出来るようになっていた。

 ここは小さい子が楽しいお家なのだ。


 執事さんはキッチンで何やらお仕事中だった。

 「おや、ピルリャピピリャリュルリュラーピさま、何かご用ですか?」

 あいかわらず、完璧にぴーくんの名前を言ってしまう執事さんだった。

 「ぴーくんでいいぞ。友達はぴーくんて呼ぶんだ。ぴっ」

 「そうだな、わたしも仕事が終わったことだし、ぴーくんと呼ぼうか。仕事中はピーさまでいいか?」

 ぴーさま、ちよっと嫌かも。

 

 「それはさておき、ぴーくんのアレ出来上がってるよ」

 「ほんとにか?ピピピッ」

 執事さんは片手をひらめかせ、パッとお目当てのものを取り出した。

 「はい、どうぞ」



 それは小さな小さな本。

 ぴーくんにはちょっと大きいけど持てない大きさじゃない。

 立派な革張りの装丁の青い本。

 表には金色の文字で『勇者ピピピジェ』と書かれている。


 ぴーくんは表紙を見つめたまま、しばらく動けなかった。

 ぴーくんだけしか知らなかったお話しがこうして立派な本になって存在している。

 今では執事さんさえ、ピピピジェの事を知っているのだ。

 

 ぴーくんは震える手羽を本に伸ばした。

 「読んでも・・・」

 「もちろん。それはぴーくんの本だ」


 ぴーくんが本に手羽をつけると、本が勝手に開いた。

 鳥のぴーくんでも読むことの出来る、魔道仕様の本になっていた。

 「ピィ」

 ぴーくんは中をちょっと見ただけですぐに本を閉じた。

 「執事さん、どうもありがとう。ぴっ。このお礼をどうしたらよいのかわからない。ぴ」

 この本の価値はぴーくんにとって計り知れないもので、この本の対価をどうやって支払えばいいのかもわからなかった。


 受け取って良いのだろうか?


 「その本、気に入らなかったか?」

 執事さんはとっても優しく言ってくれたのに、ぴーくんはなぜだか涙が出そうになった。

 「もったいなくって、すぐには読めないぞ」

 「お礼も喜んでくれたら、それでいい」

 ぴ?

 いいの?それで?

 「いろんな道具を作るのはわたしの趣味だ。誰かの喜ぶ顔を思い浮かべるといろんな道具を作る発想が浮かんでくる。これこそがわたしにとっての報酬だな。新しい道具を考えて作る事こそがわたしの喜びであり、生きがいなんだよ」

 「生きがい・・・」

 「そう、精霊なんて気まぐれ者がわざわざ人型をとり、生活する。それはこの生活を楽しんでいるからだ。そして、楽しむためには他の精霊とかかわる必要がある。わたしの場合はね。で、わたしに出来ることは何かなと考えて、今がある」


 ぴーくんは狭い世界に閉じ籠っていた。

 いま、広い世界に出てきたばかりだ。

 これから、探すのだろうか?

 自分に出来ることを。


 「ボク、探すよ。ボクに出来ること。楽しい事でいいんだよね。ぴっ」

 「もちろんだ」

 ぴーくんに何が出来るのか?

 とりあえず、やってみようと青い鳥は思った。

 

 


 

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