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小さい子達はちょっとの間、鏡の前できゃっきゃ走り回っていた。
目的わすれてへんか?と黒狼は少し心配になったが、執事さんが頷いてくれたので、リルファ達の相手をお任せすることにした。
それから黒狼は掃除や洗濯など家事を片付けながら、時おりリルファ達の様子を見る。
あいかわらず銀嶺さまはお留守のようで、鏡の前に小さい子達はちょこんと座り、執事さんと何やら話をしているようだった。
少ししてまた通りすがりに覗いてみると、リルファと子狼達は出窓横のベッドの真ん中で転がってお昼寝中だった。
今は執事さんと青い鳥のぴーくんが、二人だけで鏡越しに話をしている。
もう少し話が続くようだ。
黒狼は今は使ってないけどいつか使うかもと・・・しまいこんでいたものを思いきって捨てることにした。
小さい子用グッズが増えてきたので、要らないものを片付けたいのだ。
ミニチュアの棚とか小さい子にぴったりのがあり、黒狼はわくわくしながら模様替えしていった。
りーくん達、喜ぶやろなぁ。
この部屋にはじめて来たリルファ達は、いろんなものを見て回って楽しそうにしていた。
小さい子向けのものがないから、退屈しないかなぁと心配していたけど杞憂だったようだ。
執事さんが作ってくれた玩具は、この部屋で遊ぶには場所が足りないだろう。
だから、この部屋にぴったりのリルファ達が遊べる『何か』を黒狼は考えている。
ちいちゃいから黒狼は目で楽しめて、りーくん達は遊んで楽しめる、そんな『何か』。
それは考えるのも作ったりするのも楽しいものなのだ!
黒狼は今の生活に不満などなかったが、こんなにわくわくすることは久しぶりで、そんな楽しみを運んでくれたりーくん達には感謝しかない。
ちょっとしか生きていない自分が言うのもなんだけど、楽しいことって大切やなぁとつくづく思う黒狼だった。
「ろーくん!ろーくんどこお~」
わふっわふっ
呼ばれて皆の所に行くと、鏡の向こうに銀嶺さまの姿が見えた。
銀嶺さまのまわりにきらきらきらめく何がが見えるような気がする・・・。
心の中で『眩し・・・』と呟きながら黒狼は挨拶をした。
「銀嶺さま、お久しぶりです」
すると銀嶺はにっこり微笑んだ。
『うわああぁ』
眩しさ倍増である。
黒狼は右手で光を遮りたいのを我慢して、ペコリとお辞儀した。
その様子を見ていたリルファも黒狼に向けて、にっかーと全力の笑みをくれる。
ふんにゃりと笑みを返す黒狼。
どうしたらいいんだろう、このじぃじぃとマゴ。
何かいろいろと心配な気分になる黒狼だった。
いつものように銀嶺さまから労いのお言葉を頂く黒狼。
丁寧なお礼の言葉に、黒狼は両手を振って慌てるしかできない。
大変なことなんてひとつもないし、楽しいので反対にお礼を言いたいのはこちらなのに。
黒狼の様子にやはり微笑ましく銀嶺は答える。
「黒狼くんのおかげで私もりーくんもとても安心して過ごせるんだよ」
そう言ってもらえるだけで黒狼は嬉しくて、照れるばかりだった。
「じゃあねえ~じぃじぃ~ぼく~まってるからねぇ~」
「りーくんのじぃじぃさん、執事さんよろしくお願いします。ピッ」
小さい子達は鏡に顔を押し付けてサヨナラの挨拶をする。
リルファの顔も銀嶺さまにはつぶれて見えているはずだ。
ぴーくんもそれが挨拶だと思っているのだろう、真似をしている。
もちろん子狼達も。
銀嶺さまの顔が見えなくなってから、ぴーくんがリルファにお礼を言った。
「りー、ありがとう。りーのおかげで困ったことが解決しそうなんだ。本当にありがとう。ピッ!」
ペコリンとぴーくんがお辞儀するのにリルファが首をかしげた。
「ぼくわぁ、なんにもしてないのよおー。しつじさんにおれいをいってねぇ~」
青い鳥ぴーくんも首をかしげる。
「でも、りーのおかげだから・・・ぴ」
「え~~~、ともだちだからぁ~とうぜんだよお~」
友達が困ってたら、どうしたらいいのか考えるのは当然のことなのだ。
ぴーくんはリルファの友達なのだ。
「だけど・・・だけど・・・・・・ぴ」
青い鳥は嬉しいやら信じられないような複雑な気持ちで、胸がいっぱいになった。
話したいことがいっぱいありすぎて、出口が詰まって出てこなくてもどかしい。
そんな青い鳥の様子を見てリルファはこんなことを言う。
「ほくわぁ~むずかしいことはわかんないのよー」
そして、にっこり。
「むずかしいことはろーくんにいってねぇ~」
青い鳥は手羽でリルファをバシバシたたいた。
「いたい~?いたくないけどい~た~い~」
照れなのか?それともめんどくさいのか?
りーくんの本心は黒狼にはわからなかった。
でも、どっちにしろ気にしなくていいという、りーくんなりの気遣いなんやろなぁ。




