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「黒狼さま、リルファさま、お久しぶりでございます。そちらの青い鳥さまは・・・・・・ピルリャピピリャリュルリュラーピさま。わたくし銀嶺さまの執事でございます」
銀嶺さまの執事は黒狼が慌てて広げた『ぴーくんの名前を書いたメモ』をチラリと見ただけでキチンと言い切った!
はわぁ~~~
リルファや、子狼達はぽかんと口を開けて見てるし、ぴーくんは尊敬の眼差しだ。
きらきらなお目目になっている。
だが、次の瞬間ぴーくんも口をパカッと開けた。
「どう?完璧な執事さんになってた?名前?ろーくん、いきなりあんなの見せて俺を試してんのかと思ったよ。やー、つっかえずに言えて良かった良かった。今度から事前に教えといてちょうだいよ。それで鳥くんは・・・ぴーくんね。長い名前も空で言えるように練習しとくよ」
銀嶺さまの執事はくだけた口調に変えたとたん、メガネを胸ポケットにポイッと放りこみながら、オールバックに整えた灰色の髪をぐしゃぐしゃッと崩し、ネクタイを外してポケットに入れようとしてメガネに気付いて、肩に引っ掛けてシャツのボタンをぺいぺいと3つ外した。
完璧な執事さんからのタレ目の色男への変身に、小さい子達はポカーンだ。
執事さんのビフォーアフターな変身に、びっくりしたのか訳がわからなくなったのか。
「おっと、小さい子の教育に悪かったか?ま、大人は見かけで判断したらいけないってことで・・・・・・悪い大人はいっぱいいるから、騙されんなよ」
バチン!
灰色がかったグリーンの瞳で、ウインクしながら言う色男に小さい子達は催眠術にかかったように、うんうん頷いている。
あかんやつや。
執事さんは小さい子達の前で完璧な執事さんを演じるつもりはないらしい。
きらきら、きらきら
小さい子達、何に感動したのかとっても気になる。
「ろーくん、みて、みてぇ」
ぱっちん!ぎゅっ!
いや、りーくん。
両目つむってるよ。
「それでねぇ~、みんなでぇ~ぜんいんでぇ~びゅ~~ってすごかったのよおー。おにんぎょうを~たくさんつんでぇ~どどどーておちてきたのわぁ~おさかなのぉおおきいのがおっこちたからなのよ~」
「曲がるところで体が斜めになるのに、飛び出さないところとか、高さが変わったりして変化するとこが凄かったぞ。ピッ!」
わふわふ、わふわふ!
リルファ達がお人形で遊んだ感想を、身ぶり手振り執事さんに一生懸命伝えている。
なぜかと言うと、お人形と高速で滑る帯の制作者が執事さんだと聞いたからだ。
「そうか、皆で楽しんでもらえてなによりだ。・・・ろーくんはどうだった?」
小さい子達の話を目を細めながら聞いていた執事さんは、黒狼にも話しかけてきた。
感想ではなく、使い勝手を聞かれているのだろうと思って、黒狼はちょっと考えた。
きっと、りーくん達を遊ばせて気になった所を執事さんは聞きたいんやろうな。
「えーと、帯で滑るほうで時間を忘れて遊んでいました。あれはだんだんスピードが上がる仕様なのでしょうか?」
「そうなのかい?一定のスピードまでにしてたんだが、誰か速いのが好きな子がいるのかな?時間とスピードね。調整しておくよ。さて、そろそろ銀嶺サマが戻るはずなんだがなぁ」
執事さんはどうやら、銀嶺さまが戻るまでリルファ達の相手をしてくれていたようだ。
リルファはじぃじぃがほとんど鏡の前にいるのを知っているから、会えないとガッカリすると気を使ってくれたのだろう。
「あー、じぃじぃ~いまはいないのぉ~?」
「りーくんとお話ししたいと言ってたんだが、用が出来て今はいないんだ」
リルファはうんうん頷いて、次にぷるぷると首を横に振った。
楽しくお話ししていたので、目的を忘れるところだった。
「それわぁ、しかたないのよおー。ぼくねぇ~ひ、しつじさんにぃ~おねがいがあったのぉ~」
「お、俺にか?光栄だねぇ。かわいい子の頼みは何でも聞いちゃうよ」
バチン!
わ~い、わ~い
小躍りする小さい子達。
りーくんと子狼達とぴーくんは輪になって、走り回って喜びを表現している。
リルファは時々黒狼に向かって、ぱっちん!とするのを忘れない。
いや、だからりーくん目をつむってるって。
人数増えたからなぁ、かわいさ倍増だな。
確かにこんな小さくてかわいい子達に喜ばれたら、何でも言うことを聞いてしまいそうだと黒狼も思った。




