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黒狼は、青い鳥を頭の上に乗せたリルファを頭に乗せ、肩に子狼達を乗せて帰宅途中だ。
黒狼の住む部屋は、対策室とは別棟の職員寮にある。
リルファは移動するときはいつも歌を歌っている。
ランラン言うやつだ。
だが今日はいつもと違う。
あめがやんだら~あかいおふねが~
にじをこえて~くもをかきわけ~
とんでいくよ~ぼくのおうちまで~♪
ぼくのおうちは~たのしいおうち~
ぼくのおうちは~かわいいおうち~
ぼくのおうちは~やさしいおうち~♪
ぼくのおうちは~おいしいおうち~~~♪
ぶはっ
ぴぴっ!
わ、わふわふ!
めずらしくリルファが、普通の歌を歌っていたから皆でしんみりと聞いていた。
そしたら最後に変な歌詞が出てきたから、黒狼は吹き出し小さい子達はつっこんだ。
なんでやねん!
「りー、お家食べたらなくなるぞ」
ピッ!
わ、わふわふ、わふわふ
「え~~?たべないよぉ~」
リルファは足をぱたぱたさせて抗議する。
「おいしいおうちわぁ~、おいしいのが~たくさんあるおうちなのよぉ~」
「ボクはかわいいおうちがいいと思うぞ。ピッ!」
手羽を上げる鳥。
わふわふ、わふわふ
両方の肩から控えめだがなにかを訴える子狼達。
残念ながら子狼達のわふわふは、黒狼にはわからなかった。
でも多分おいしいお家やろなぁ、と思う黒狼だった。
対策室でなぜかリルファが、青い鳥ぴーくんの『困ること』に関わることになり、リルファの勧めにしたがって皆で黒狼の住む部屋に行くことになったのだ。
「あっ、りー、あれなんだ?」
「あー、あれねぇ~、え~とぉ~、ん~~、ろーくん~なんだっけぇ~」
リルファが黒狼の顔をのぞきこもうとする。
「えっ?あれ?あれって?・・・えー・・・」
「ピッ!あ!わっ!りー、今の見えたかぁ?」
「あー?」
わふわふ!わふわふ!
ずいぶん久しぶりに外に出るのだろう、青い鳥は見るもの全てが珍しいとでも言うようにリルファに話しかける。
リルファが答えようとするが、ぴーくんの関心は次に移っていたりして、なかなか賑やかなことになっていた。
本当は答えなんてどうでもよくて、青い鳥は皆でこんなふうにやり取りしていることが、ただただ楽しくて仕方なかったのかもしれない。
黒狼は自分の頭のまわりではしゃぐ小さい子達を見て、ちょっと考えて帰る前に寄り道することにした。
今いるのは、いつもご飯を食べる時に来る中庭である。
つい最近にテーブルとベンチが設置されたのだ。
便利なことに屋根つきである。
その屋根も、建物からこのテーブルのところまでの通路にまでつけられていた。
雨の日でも濡れることなく中庭のテーブルを利用できるのだ。
屋根は何の素材かわからないが、透明なので雨の日はどんなふうになるのか黒狼は楽しみにしていた。
リルファ達はきっと喜ぶと思うのだ。
黒狼がベンチに腰掛けると、リルファと子狼達はテーブルの上に降り立った。
青い鳥もリルファの頭から降りてテーブルに着地する。
リルファはお花のポシェットからひと抱えある、大きな布を取り出した。
「ろーくん~」
リルファの催促に黒狼はうなづく。
あぁ、あれね。
「1番、りーくん!」
「あいっ!」
リルファはぴっ!と片手を上げて返事をした。
「2番、あーくん!」
「わふっ!」
ふりふり
「3番、かーくん!」
「わふっ!」
ふりふり
そして次は・・・
「4番、ぴーくん!」
えっ?ボク?
青い鳥はきょろきょろして、恥ずかしそうにもじもじしたが、リルファ達がうんうんうなづいているのを見て、黒狼を見つめた。
黒狼はもう一度名前を呼ぶ。
「4番、ぴーくん!」
「ぴ、はいっ!」
ぴっ!手羽も上げる。
「5番、ろーくん~」
「わふ!」
リルファが言うのに返事をする、黒狼。
もちろんお約束で変な返事をする。
青い鳥にはなにがなんだかわからなかったかもしれないが、皆できゃっきゃと笑った。
そしてリルファが持っていた布を広げる。
地面にひくのよりは小さいのであっという間だ。
リルファとぴーくんを中心に、右と左に子狼が別れて布の上にちょこんと収まった。
『かわいい・・・でも、遠くからやったら、お人形遊びしてるとこにしか見えんかも』
黒狼はそう思ったが、毎日のようにここに来るのでそんなのは今さらなのだった。
『でもまぁ誰もおらんし、見てないからいいか』
少しは気にした方がよいかもしれない。
「今から、オレの部屋に行くんやけど、りーくんとあーくんとかーくんは別にお家があるんや」
「そぉ、じぃじぃがおうちにいないからぁ、ろーくんのおへやにおとまりしてるのぉ」
わふわふ、わふわふ
青い鳥のぴーくんに説明する黒狼とリルファ。
ぴーくんは真面目にうなづいている。
「りーくん、『いいこと』って何かきいてもええ?」
「?」
リルファは黒狼の問いに首をかしげて考えている。
「ぴ、りーがボクの困ったことに、いいこと考えたぁ~っていったんだぞ!」
ぴっ!
手羽でぴーくんにぴっ!とされてリルファは思い出したようだ。
「へへへ、わすれてないのよぉ~」
ごまかすように、リルファは両手をバタバタさせた。
「ほんとにー?ぴっ」
ぴーくんはちょこちょこ歩くと、りーくんの正面に座った。
リルファは立ち上り、青い鳥の頭を優しくもふもふする。
「だいじようぶだよぉ~わすれてないよぉ~」
「ぴっ、心配してないぞ」
羽毛を膨らませて、ますますまん丸になる青い鳥。
ふわぁ~
リルファが熱心に、もふもふしだす。
「ぴ、ちょっ、りー、なんだよ!」
青い鳥は困惑して手羽をバタバタするが、リルファはにこにこしたまま手を止めない。
もふもふもっふり、もふもふもっふり
『ごめん、りーくんモフリストなんや。ぴーくんちょっと我慢したって』
黒狼は心の中で謝るにとどめた。
ここで口出しすると、きっと長くなるのだ。




