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青い鳥の呼び名が決まった。
『ぴーくん』だ。
『ピルリャピピリャリュルリュラーピ』なんて覚えられないから黒狼はホッとした。
その日はぴーくんの名前のことで時間がかかり、リルファ達は少ししか遊べなかった。
しかし、ぴーくんは人形のマネをしなくてもよくなり、リルファ達と思い切り遊べたのでかなり楽しかったようだ。
だが、楽しいぶんだけお別れを言うのはつらいのだ。
いつものように仕事を終えて部屋を出る時、黒狼の足取りは重かった。
「ぴーくん~、またあしたねぇ~」
「うん、りー、またね」
ピッ
わふわふ、わふわふ
リルファは黒狼の頭の上から、子狼達は黒狼の両肩からそれぞれ手を振り、尾を振りお別れの挨拶をする。
ばいば~い!
ピッ!
わふわふ、わふわふ
小さな青い鳥は両方の手羽をふりふり、お見送りしてくれる。
パタンと扉が閉まった。
ふたつめの扉を閉めて廊下に出て、黒狼は扉の前に座り込む。
「りーくん、ちょっと休憩な」
リルファは黒狼の頭の上から黒狼の顔をのぞきこんだ。
と思ったら、黒狼の頭から落ちてくるりんと1回転した。
ぱたぱた、ぱたぱた
リルファは黒狼の前に来ると、
「ぼくもぉきゅうけいしようとおもってたんだぁ~」
うんうん
両手を組んでうなづきながらリルファはそう言う。
すると子狼達もふんわり駆けてきて、リルファの真似をしてうなづいている。
黒狼は扉に背を預けて、両足を伸ばして座った。
この部屋の前を通る人はほとんどいないから、気にしなくていい。
リルファと子狼達は黒狼の周りをぐるぐるし出した。
扉と黒狼の背中の隙間を無理やり通ろうとするから、黒狼はちょっと隙間をあけたり、塞いだりして小さい子達の相手をするのも忘れていない。
リルファはきゃっきゃ言いながら背中の隙間を通ったり、隙間を塞がれた時は、黒狼のお腹のところをそっと足場にして跳び跳ねたり子狼達と飽きることなく遊んでいる。
そうしてしばらくすると、黒狼はリルファを頭に子狼達を肩に乗せると立ち上がった。
「あー、りーくんオレ忘れ物してたわ」
「ぼくもぉわすれものぉしたのよぉ~」
黒狼はそっと扉を開けた。
すると、隣の仕事部屋から小さな声が聞こえてきた。
青い鳥が壁に掛かったお家を見上げて、テーブルの上で一人お話しを語っていたのだ。
羽毛をふくらませて、ちんまりした姿で。
「ピピピジェは親友のリンピピと最後の階へ続く階段を降りていきました。これが最後。この迷宮の最後の階でした。二人が無事に地上に帰るには最後の階の主を倒すしかないのです。ピピピジェは言いました。「親友!お前と迷宮に来ることが出来て本当に良かった」リンピピも「オレもだ!さあ、後ひとふんばりだ!」こうして二人は最後の戦いへと赴いたのでした」
ぱちぱちぱちぱち
ピッ!
突然の拍手にびっくりして、ぴーくんが飛び上がった。
「ぴーくん、おはなししってるのぉ?すごいねぇ」
リルファはそう言うと、青い鳥のもとにぱたぱた飛んでいく。
もちろん子狼達もだ。
状況がつかめず、黒いお目目をぱちくりさせているぴーくんに黒狼が説明する。
「あー、ぴーくん。オレが仕事で忘れてたのがあって、戻ってきたんや」
「ぼくもわすれものぉ~」
元気良く、手を上げるリルファ。
「ぴ、ピッ?えーと、そうなんだ・・・。りーはなにを忘れたんだ?」
「え?えーと、なんだっけぇ~」
そんな二人?のやり取りを尻目に、黒狼は仕事机の横の棚から冊子を取り出した。
表に『未処理案件』と記入されている。
「え?りーは忘れ物を忘れたのか?」
「えへへへへ。わすれちゃったぁ~」
「どうするんだ?わすれたら大変じゃないのか?」
ピッ!
青い鳥は手羽をピシッとリルファに向ける。
「だいじようぶだよぉ~わすれてもだいじょうぶだから、わすれるんだよぉ~」
それに~ぼくわぁ~わすれてもぉ~ぜぇ~んぜん~きっにしなぁ~い~♪
リルファは歌いながら、空中で華麗にスピンを決めてピシッ!と片手を上げてポーズを決めた!
ピシッ!
「え?でも、忘れたら困るぞ。ボクは困る」
青い鳥は休憩用のテーブルの上を、カチカチならしながらうろうろし出した。
「ぴーくん、わすれたらこまるのぉ?」
「そう、困るんだ!」
「あーーーーー」
青い鳥がうろうろする後ろをリルファが追いかけてうろうろし始め、その後を子狼達が続く。
小さい子達はぐるぐるするの好きやなぁ。
遊ぶときも悩むときもぐるぐるしてるもんなぁ、そんな風に思いながら黒狼は手元の冊子のページをめくった。
回収日、回収場所、依頼主、物品名、問題箇所、処理方法、などなど未解決案件の詳細が記入されている。
黒狼は物品名『壁かけ 緑の屋根の家』のページをあけた。
そこにの一番最後の欄に『解決済み』と記入する。
後は室長に確認の印をもらったら、この案件は終了となる。
小さい子達はぐるぐるするのを止めて、今度は輪になり座り込んでいる。
「こまるのわぁ、こまるのねぇ~」
「ピッ」
青い鳥は悩みすぎて返事をするのも疲れたのか、ピッとしか言わない。
そんなぴーくんを見てリルファは考え込んでいたが、ふいによいしよっと立ち上がった。
「ぴーくん、ぼくねぇ~いいことおもいついたぁ~」




