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 「ろーくん、ぴかぴかになったぁ?」

 

 リルファが手に持った小さなぞうきんを、黒狼に見せながら言う。

 「おおっ、汚れてたんやなぁ。りーくん、ありがとう。上の方は手が届かんから助かったわ」

 

 わふわふ、わふわふ

 子狼達には尻尾に布を巻き付けて、尻尾でぱたぱたしてもらった。

 「あーくん、かーくんもありがとう。次はこっちの部屋ね」

 

 次の部屋はお客さんを通す部屋と違い、雑多な物が置かれている。

 リルファと子狼達は珍しげにキョロキョロしていた。


 「あっちの机は仕事のだから、掃除しなくていいよ」

 黒狼はリルファ達に説明しながら、仕事の机の反対側の休憩用のテーブルと椅子が置いてある方に行く。


 壁際に背の低い棚があり、いろいろな物がきれいにならべられていた。

 「はわぁ~~」

 リルファは壁に飾られたおおきな鹿の剥製を見上げて、のけぞっていた。

 鹿の剥製の角はとても立派なもので木の枝のように広がり、鹿の頭もリルファと子狼たちが、一口で食べられてしまいそうなほどの大きさだ。

 壁には他に小さな家のようなものや時計が、飾られている。


 「こっちの壁の鹿さんと、お家と、時計を拭いてもらってええやろか?」

 リルファ達は小さいが、ぞうきんで拭いている様子を見ると、とても丁寧で、黒狼は安心して任せることが出来た。

 「あいっ!」

 わふわふ、わふわふ

 元気よく返事をすると、リルファは羽をぱたぱたさせて飛んでいく。


 子狼達も待ちきれないのか、尻尾を振って黒狼に催促する。

 黒狼は子狼達の尻尾が汚れないように、布を巻き直しているのだ。

 「待って、尻尾振ったら布が巻かれへん。ちょっとじっとしてて・・・・・・・・・よし、行ってええよ」

 わふわふ!わふわふ!

 子狼も喜んで駆けていく。


 「掃除やのに、あんな喜んでしてくれて・・・」

 さて、小さい子達に負けないように頑張ろうと、黒狼も掃除に取りかかった。






 リルファはとてもご機嫌な様子でお手伝いしていた。

 今日は朝から、絶好調なのだ。

 とっても気持ちよく眠れたし、ろーくんを起こしてほめられたし、掃除してまたまたほめられたし。


 「ここもぉ、きれいにしてぇ、またまたまたほめられちゃうんだぁ~」

 ランランランランランララ~ン~♪

 きれいにぃ~ぴかぴかぁ~とってもぉ~♪

 よごれててもぉ~きれいにぃ~しちゃうよぉ~♪

 ランランランランランララ~ン~♪


 壁にくっついている小さなお家は、壁掛けタイプのせいか厚みはあまりないものの、扉は取っ手がついているし、窓もきちんと両扉があり、さらには煙突まである。

 本物をそのまま小さくしたような精巧な作りだった。

 クリーム色の壁に緑色の屋根のかわいいお家だ。


 リルファはお家の屋根をきゅきゅきゅっと軽快に、リズムにのせて拭いていた。

 もちろん歌を歌いながら。


 「う~ん、ぴかぴかぁ~」

 ぴかぴかぴっかりぃ~♪と歌いながら、次は隣にある鹿の剥製を拭こうとぱたぱたと移動していたリルファが、突然その場で停止した。


 じーーーーー

 お家の方を振り返りじーっと見つめている。

 リルファはいつもにこにこしているから、かわいい顔が強調されているが、黙ってじーっと見ているその表情は真剣そのもので、ちょっとこわい顔になっていた。

 

 整ったうつくしい顔が無表情になると、ちょっとこわくなるのだ。

 じーーーーー

 無言でひたすらお家を見つめるリルファ。

 わふわふ、わふわふ

 

 リルファの様子がいつもと違うのに気付いた子狼までもがお家の所にやってくる。

 じーーーーー

 じーーーーーーーーー・・・・・・・・・


 「りーくん、どないしたん」

 小さい子達が壁にくっついているお家を無言で見つめているのに黒狼が気づいて声をかけた。


 「あ、ろーくん、あのねぇ」

 リルファはやっとお家から視線を外し、ぱたぱたと黒狼の元に飛んでいった。

 子狼もついてくる。

 リルファが黒狼の左肩に乗ったので、子狼達は右肩に乗ろうとわちゃわちゃしている。

 黒狼はそんなに肩幅がないので、子狼が小さくても2匹一緒に乗るのは無理だ。


 「あのねぇ、ろーくん。おうちからおうたがきこえたのよぉ」

 リルファは内緒話をするように、小さい声で黒狼に言ったのだった。

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