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あぁ、これはいつも見る夢や。
必死に布団を左側から右側に積みなおすやつ。
黒狼が疲れた時などに見る夢は、はじめは小さい布団がだんだん大きくなっていくというものだった。
今日はそれだけでなく、顔に布団が張りついて苦しむという悪夢になった。
水面に浮上するように唐突に目が覚めた黒狼は、一瞬状況がつかめなかった。
ふさがれる視界、呼気を圧迫する何か。
ああ!びっくりした。
眠る黒狼の顔にかわいい天使が張りついているのだ。
天使なリルファは小さいが、どうやってか顔に乗ってくる。
黒狼の頭の位置の上の方で寝てたのに・・・、寝相が悪いにもほどがある。
黒狼は寝転んだまま両手でそーっと、リルファを持ち上げちょっと体をひねって顔の横に置いた。
リルファは移動させられたにもかかわらず、まだ寝ている。
部屋は薄暗く、起きるのには少し早い時刻のようだ。
子狼達は自分の寝床できちんと寝ていて、そばにリルファ用の布が落ちている。
黒狼は布を取り広げるとリルファにそっとかけた。
寝直すには中途半端な時間なので、黒狼はとりあえず今日の予定を思い出すことにした。
りーくん達が起きたら身支度して、仕事場に行く。
水簾さまと銀狐は現場に直行するから、今日こそ掃除して食料補充して、書類チェックして、お昼までに終わる?
キリの良いとこで、りーくん達のご飯を先に済ました方がいいかも。
まだ鳥も起きていない、朝というには早い時間。
黒狼は自分の近くの小さい子達の『すやすや』『くーくー』と寝息をたてるのを聞いていると、またいつの間にか眠ってしまったのだった。
「ひゃっ、くすぐったいのぉ・・・・・・あ、あさだぁ。あーくん、かーくん、ありがとー。おはよぉ。なでなで。なでなで。あ、ろーくんおこさないとぉ。よいしょ」
黒狼はリルファの声で起きていたが、起こされるまで待っていた。
「ろーくん、ろーくん!あさなのよぉ」
黒狼は優しく頬をぺしぺしとされて、今起きたようにして目を開けた。
「あ、ろーくんおきたぁ。おはよぉ」
「りーくん、あーくんとかーくんもおはよう」
リルファは背伸びして黒狼の顔をのぞきこんでいて、子狼達もそばで尻尾を振っている。
「りーくん起こしてくれて、ありがとう」
「えへへへ、ふふふふ」
リルファは黒狼に撫でられながらお礼を言われて、両手で口を押さえて照れていた。
黒狼はこんなふうに誉めてくれるので、リルファはお手伝いしようと張り切るのだった。
もちろん、黒狼は子狼達を誉めるのも忘れてない。
着替えて顔を洗うと、黒狼はいつものようにリルファを頭の上に、子狼達を両肩にのせて仕事場に向かった。
ランランランランランララ~ン~♪
ランランランランランララ~ン~♪
たっのしいおっしごと~ろ~くんのぉ~♪
ぼくのぉ~おっしごともぉ~た~の~し~い~♪
ら?あーくんとかーくんも?
あ~くん、か~くんもぉおっしごと~♪
みんなぁでぇ~おっしごと~♪
みんなぁでぇ~いっしょがぁ~たっのしい~♪
ランランランランランララ~ン~♪
黒狼の仕事場の対策室には大まかに3部屋ある。
まず、一番手前にお客さんを案内する部屋、その奥が対策室の作業部屋、一番奥が水簾の室長部屋である。
黒狼が掃除するのは、手前の2部屋だ。
「りーくん、今から掃除するけど、りーくん達はどうする?」
「ぼくもそうじするぅ」
わふわふ!
ランランランランララ~ン~♪
たっのしいおそうじぃ~♪
リルファの歌を聞きながら掃除が始まった。
『あかん、一緒に歌ってまいそうや』
黒狼は小さい子達に天井付近の掃除を任せて、自分の仕事を始めた。




