11 たのしいごはん
いま、黒狼は頭のてっぺんに天使の、りーくんを乗せている。
りーくんは黒狼の狼耳を両手でそれぞれ持ち、両足をぱたぱたしている。
背中の羽もぱたぱたしているに違いない、と黒狼は思う。
ちょっとだけ、前髪が揺れるのが気になるけど、耳をつかんでいる手もぱたぱたしてる足も、すごく気をつけてくれているのがわかる。
ちっとも痛くないし、あんまり邪魔にもなってない。
そして、黒狼の両方の肩には子狼のあーくんとかーくんが、それぞれ乗っている。
彼らは黒狼の肩に沿って、伏せの体勢でダラリと力を抜いてくっついている。
もちろん尾っぽはふりふり、りーくんの歌に合わせてだ。
「ランランランランランララ~ン~♪
ぼくのぉ~お~い~し~い~おっはなっ~ご~は~ん~♪
かぁわいい~おっはな~おっいしい~お~は~な~♪」
ぱたぱたふりふり~♪
「みぃんなたぁべたぁい~おっはなっ~ご~は~ん~♪
だぁけぇどぉ~だぁれでぇもぉ~たっべらっれ~なぁい~♪
ランランランランランララ~ン~♪」
ぱたぱたふりふり~♪
今からみんなでご飯を食べようと移動中だ。
お家では気にしないけど、研究室が集まるこの施設内ではどうしても目立ってしまい落ち着かない。
だから、黒狼は仕事が立て込んでない限り、皆がお気に入りの場所に行くことにしている。
「ランランランランランララ~ン~♪
ぼくわぁ~おそと~ごはんがぁ~すぅきぃ~♪
たっのしっくぅ~たぁべたぁい~ご~は~ん~♪」
りーくんはとってもご機嫌でずっと歌っている。
ときおりすれ違う人はじろじろ見たりしないけど、いつも難しい顔をしている人でさえ、りーくんの歌を聞いて微笑んでるようだ。
歌が上手いとか、声が素晴らしいとか技術的なものではなく、りーくんが本当に楽しそうに歌うので皆つられてしまうんかも、と黒狼は思っている。
歌は、歌は・・・下手なわけじゃないんや、ただ突拍子もないというか・・・そう、りーくんの歌は面白い。
本人にそう言ったら怒るかな?
いや、やっぱり面白がるやろなぁ、何となくりーくんの性格がわかってきたような気がする黒狼だった。
「さて、到着」
「とうちゃ~く」
わふわふ、わふわふ
はいはい、皆ひとこと言わないと気がすまないのだ。
小さい子は動作もゆっくりだから、りーくんに合わせて動くようにしている。
「ろーくん、アレ!」
「はいはい」
天使なりーくんと子狼はわくわくして、待っている。
「1番、りーくん!」
「あい!」
「2番、あーくん!」
「わふっ!」
「3番、かーくん!」
「わふっ!」
つぎだけ、りーくんが言う。
「よんばん、ろーくん!」
「へいっ!」
変な返事は黒狼だ。
子供達の手本としてはどうかと、黒狼も思うのだか子供達がこの変な返事を喜ぶものだから、ついつい・・・期待に応えてしまうのだ。
案の定、りーくんはきゃっきゃ笑っている。
子狼達は笑わないが、尻尾をぶんぶん振り回してわちゃわちゃしてるので、楽しいのだと思う。
一騒ぎしてから、黒狼は抱えていた布を下ろした。
「ろーくん、ぼくもぼくも」
わふわふ、わふわふ
「はい、どーぞ」
わーいと言いながら黒狼の反対側の布を持つ、りーくん達。
左右端っこを子狼達がくわえて、真ん中がりーくんだ。
わくわくわくわく~♪
黒狼が、両手を広げて勢いをつけて上に向けて布をぶわっ、と広げる。
きゃ~~~~~~♪
りーくんと子狼達が布と一緒に上昇し、布は空気をはらんでふくらみ、りーくんと子狼達は、ふわふわふんわ~り降りてくる。
着地するとちびっ子達は真剣に、布の端っこを引っ張り丁寧に布を敷くのを手伝う。
「できた!」
どう?見て見て、ほめてほめて!
わくわくどきどき
大きな瞳をきらきらさせて、天使と子狼達が黒狼を見上げている。
撫でられる準備は出来ています、とばかりに。
「いつも、ありがとう」
黒狼は小さい子達を、そっと優しく撫でてあげた。
大きさが違いすぎるので、ものすごく気を使って。
そのせいか黒狼のナデナデは気持ち良くて、りーくんも子狼達も黒狼に撫でてもらうのがいちばん好きだ。
「ろーくんもなでなで、ありがとぉ」
ご飯まですごく時間がかかるけど、この楽しい時間もご飯のお楽しみなのだった。




