激流
その光景は直視しがたいものだった。整然と建ち並んでいた多くの建物は、そのほとんどが崩れ、ただのがれきの山と化している。きれいに舗装されていた街道のコンクリートは、いたるところに穴があき、無残な姿と成り果てている。少し前までは、建物の中に、街道に、数多くの人々の笑いや哀しみ、怒りなどが無数に存在していた。しかし今は、それが全く感じられなかった。がれきと同じ様に、いたるところにころがっている何か・・・そのほとんどに、もはや感情というものは存在してはいなかった。元は人間だったそのものたちは、そのほとんどがもはや人間の形をしてはいない。あるものは腕がなく、またあるものは足がなく・・・見るも無残な死体と化していた。少し前までそこにあった数多くの命・・・そのほとんどが、焼き払われ、殺戮されていた。
「そうかそうか!うまくいっているか!」
白髪の青年は、今までにない程の笑顔を浮かべ、満足そうに頷いている。
「では、また何かあったらすぐに連絡したまえ」
そう言いながら、青年は手に持っていた電話を受話器に戻した。その顔は、電話している間も、そして今も、終始笑顔のままだった。
「まさかここまでうまくいっているとは・・・あのお方には感謝しなくてはな」
腕を組みながら、椅子に背を預け嬉しそうな声で青年は独り言を言う。部屋には青年以外の人間はおらず、彼の言葉は文字通り独り言だった。
「急ごしらえ程度の兵器でも十分いけるとは、やはり悪魔の祟りとやらは名前の通り恐ろしいものだな」
悪魔の祟り、青年に指示を出した男が言った何かを比喩していた言葉だ。その正体は、人間では完全な予測は不可能とされている大地震のことだった。いきなりの大地震に襲われ、混乱しているところに騙まし討ちをする。それが男の計画であり、青年が男の指示で動いていたのはその為の下準備だった。アメリカでも、日本程ではないにせよ地震はある。しかし、大地震のほとんどは首都や街を遠く離れた海などで起きている。その為、それの混乱の程は大きいものだった。
「我が軍の被害はいまだにほとんどない、この戦争、私の勝ち・・・いや、日本の勝ちは決まったも同然だな」
攻撃を始めてから既に二日ばかり日にちがたっている。その間に青年に報告された内容は、そのほとんどが相手国の被害状況ばかりだった。しかし、事態は青年が考えている程甘いものではなかった。日本のあまりにも汚い手口に、アメリカと親交の深い国々はすでにそちら側について動き始めている。もちろん、かつて連合軍として日本と共に参戦していた他の国々も、日本側について動き始めている。この短絡的でなおかつ汚いやり方に、多くの国々を巻き込んだ世界戦争が起きるのを理解出来ない青年ではなかったが、今の彼は目の前の仇敵を倒せることに有頂天になり、それに気づくことは出来なかった。
大きな教会のような場所に、中世ヨーロッパ貴族のような服装をした男がいた。男は片膝をついた状態で、目を瞑りながら両手を胸の前で合わせ、何かを祈っているかのようにじっと黙っていた。男の雰囲気は、いつものように憎悪を感じさせる重苦しい物ではなく、哀愁のようなものを感じさせる切なさと、ほんの少しの嬉しさのようなものをまとっていた。彼にとって、その時間は何よりも心安らぐ物だった。
「こっちにいたんですか」
男の唯一の落ち着いた時間を邪魔する声が、男の後ろから聞こえた。声をかけたのは、リミーナを呆気なく打ち倒した白髪の少年だった。
「なんの用だ?私がここにいる時は、緊急時以外では邪魔をするなと何度も言ってあるはずだが?」
自分の時間を邪魔された男は、明らかな不快を隠すことなく少年に振り向いた。それも当たり前のことで、少年は男のその時間をちょくちょく邪魔をすることがあったからだ。
「またお祈りをしているんですか?あなたも飽きませんね」
やれやれ、と溜め息をつく少年を、男は鬼の形相でにらみつける。
「それを言うためにわざわざ邪魔をしに来たのか貴様は?」
「いちいちそんなことの為にあなたの邪魔をするわけないでしょう?この僕が。あなたに生み出された、忠実なこの僕が」
平然と笑いながらうそぶく少年は、誰が見ても相手に嫌味を言っているかからかっているようにしか見えなかった。
「ふん・・・三度目の正直、という言葉があるが、貴様にはそれすら意味を成さないようだな」
男は相当の怒りを抑えながら、どうにか嫌味を返す。しかし、完全に抑えきれてないようで、その言葉は少しだけ震えていた。
「よくそんな言葉知ってますね、さすがオリジナルと言うべきでしょうか?まぁ、失敗例を見る限りオリジナルも優秀ではなさそうですけどね」
「貴様は・・・本当に減らず口を・・・」
ピリピリとした怒りを醸し出す男に対し、少年は飄々とした態度を崩さなかった。
「この場所を汚すわけにはいかぬ、表に・・・」
「ああ、そうそう。それでですね」
男の言葉を遮って、わざとらしく今思い出した、といった感じで少年はここに来た用件を告げた。
「どうやら、他の国が動き出したみたいですよ。予想してたよりも結構早いですよねぇ」
「・・・そうか」
男はやり場のない怒りに震えながら、小さくそう答えた。実際その怒りは少年に向けられるものなのだが、相手が飄々としているため怒りをぶつけるだけ無駄だと男は諦めた。更に、男は少年の報告を優先させたいため、怒っている場合でもなかった。
「白い翼を使うまでもなかったみたいですねぇ・・・それと、黒い翼の方にはまだ動きがありませんね。ただ無能なだけなのか、それとも僕らが来るのをわざわざ待っているのか・・・どちらでしょうね」
少年の声は楽しそうだった。まるで、黒い翼と呼ばれている者が早く来るのを待ち望んでいるかのように。
「ふん、どちらでもかまわぬ。どちらにせよ、すぐにここに来てもらうことになるのだからな。白い翼のように、貴様に任せていたのでは彼女にまで被害が及ぶ可能性があるからな」
男は鋭い目つきの中に、一瞬だけ心配の色を浮かべた。それはまるで、離れ離れになってしまった初恋の相手を心配するような、そんな純粋無垢な子どものような目だった。
「僕だって彼女を傷つけるようなまねはしませんよ?僕にとっても、彼女は大切な存在ですから」
「万が一ということもある。・・・何より、私は貴様を信用してない」
男の脳裏には少年を生み出してから散々な目にあったことが思い出されていた。最初の任務での失敗に続き、白い翼を無傷で捕らえることの失敗、更にことあるごとに男の時間を邪魔する・・・そんな少年を、信じろというのが男には無理な話だった。
「だから、あなた自身が動くというわけですか・・・確かにこの中なら、あなたは自らの力を存分に振るえますもんね」
そう言ってから少年は、あれ?と首をかしげた。
「ちょっと待ってくださいよ、黒い翼は僕にやらせてくれるって言ってたじゃないですか。嘘だったんですか?」
「ふん、心配せずともやつは貴様にくれてやる。私は私の力を使って、ただ彼女を護るだけだ。貴様に巻き込まれないようにな」
男の言葉に、少年は溜め息をついた。
「相変わらずやり方が回りくどいですね・・・それにしても、随分僕の扱いひどくないですか?人をまるで殺人狂みたいに言わないでくださいよ」
「回りくどいのではない、万が一にも失敗することを私は恐れているのだよ。それに貴様は、殺人狂など生ぬるいものではない」
「じゃあ、なんだって言うんですか?」
少年の問いに、男は即座に答えた。
「殺戮狂だ」
男のその答えに、少年は大声で笑い転げた。
「あはは、あっはっは。い、いいですね、殺戮狂ときましたか。くすくす、お笑い種ですよ・・・あーーっはっはっはっは」
その声は、心から楽しそうで嬉しそうで・・・そして、何より辛そうだった。少年の声は、しばらくの間ずっと教会のような場所にこだまし続けた。
「それにしても、ランスさんの記憶が戻って良かったね」
「うんうん、もーふぁな(そーだな)」
楓の言葉に頷きながら、月夜は一心不乱に楓が作った料理を食べていた。
「食べながら喋らないの!汚いでしょ」
楓に怒られながらも、月夜は次から次へと料理を口に運んでいた。そんな光景を見ながら、ランスと茜は笑っている。
昼過ぎ頃の少し遅めの昼食。食卓には、茜とランスと月夜と楓の四人がのんびりと(月夜は除く)お昼ご飯を食べていた。そこには、三ヶ月ほど前からずっといたリミーナの姿はない。
「それにしても、よくあんだけ寝てたのにそんなに食べれるなお前は・・・」
ランスの呆れたつっこみに反応したのは楓だった。
「ランスさん、月夜が昏睡してたのを知ってるってことは、記憶を失っていた間のことやっぱり覚えてるんですか?」
んー、とランスは頭をかきながら困ったように言う。
「覚えてるというか、他人の記憶が頭の中に残ってるみたいで・・・なんかごっちゃになってるって感じかな」
それと、とランスは続ける。
「ランスさん、じゃないだろ、楓」
楽しそうに言うランスに、楓は、あっ、というような顔になった。
「そうだった・・・えーと、ランス?」
最初にランスと呼んだ時のように、楓の呼び方は歯切れが悪かった。
「なんか久しぶりだから・・・変な感じがする」
「じゃあ、また慣れてもらわないと困るなぁ」
楽しそうに笑うランス。そのランスの一つ一つの行動が、月夜と楓には懐かしく感じた。
「じゃあ、代わりにうちがランスさん、って呼びなおそうか?」
出会ってすぐにランスと親しい間柄になった茜は、ランスをいつの間にか呼び捨てにしていた。そんな茜が、からかうようにそう言った。
「それはやめてほしいな、茜がそう言うなら、僕も茜さん、って呼ぶよ?」
茜同様、ランスも茜のことをいつの間にか呼び捨てにしていた。
「それはやめてー」
と言いながら軽くランスの背中を叩く茜。そんな仲睦まじい二人を見ながら、楓は、むー、と唸った。楓にとって大切な家族であるランスと茜が仲良いのは素直に喜べることだったが、楓はそれを少し羨ましく思った。月夜が意識を失っていた三日間、楓はランスと茜に励まされてはいたが、心の底の不安と寂しさは消えなかった。だから、楓はチラリと月夜を盗み見た。
「ふいー、食べたー・・・ん?どうした楓」
食べることに夢中になっていた月夜は、楓の様子に全く気づいていなかった。何も気づかずに満足そうな顔をしている月夜になんとなくイラッときた楓だったが、月夜じゃ仕方ないか・・・と諦めて肩を落としながら言った。
「なんでもないよ・・・」
「んー?」
月夜は相変わらず鈍感だった、しかし、天然っ気もあるのでたまに行動が予測不能なところがある。そしてそれは大体、楓を嬉しくさせるものだった。月夜は肩を落とした楓の頭を、唐突に撫で始めたのだ。
「ど、どうしたの急に?」
いきなりのことに、楓は動揺しながら声を出した。月夜の行動が突然なのはいつものことだが、今楓は落ち込んでいたので全く予想していなかったのだ。
「いや、ご飯おいしかったからありがとう、ってな。嫌だった?」
それ以外に他意のない月夜の言動だったが、楓はそれだけで十分嬉しくなった。月夜にそうされただけで、不安や寂しさが溶けてなくなるような感覚を、楓は感じた。実際キスまでしてる二人の関係だが、一つ一つのそういった行動に初々しい感情やイメージを与えるのは、二人がまだ若いからだろう。
「嫌なんかじゃないよ・・・ありがとう」
はにかんだ笑顔で礼を言う楓に、月夜は胸をドキドキさせながら、うん、と答えた。今度は逆に、そんな二人を茜とランスが微笑みながら見ているのに気づいて月夜は少しだけ視線をそらした。二人に何かを言おうとした月夜だったが、まぁたまにはいいか、と自分を納得させ、何も言わなかった。
「そうだ、そろそろ・・・本題に入ったほうがいいんじゃないか?」
急に真剣な顔をして出されたランスの一言で、その場の空気は緩やかなものから固いものに変わった。
「そうだな・・・本当は、小難しい話なんてしたくないんだけどさ・・・しょうがないよな」
月夜の言葉には、多少の未練のようなものがあった。この場にいた四人は、リミーナのことも戦争のことも忘れていたわけではなかった。しかし、せめて食卓ぐらいは賑やかにしたいと、誰もが思っていた。
「とりあえず、一旦リミーナのことは置いておこう。助けに行こうにも、さすがに情報が少なすぎるし」
広範囲探索はお手の物の月夜だったが、精々その距離は五キロメートル程で、探す範囲が広ければ広くなるほど時間がかかるのだった。戦争が起きているという今の現状、最後になるかもしれない食事の時間はともかく、無駄になるかもしれない時間を費やす気にはなれなかった。
「それじゃ、戦争の方の話をしようか・・・とは言っても、大体みんな分かってはいると思うけど」
ランスの言葉に、それぞれが頷く。意識を失っていた月夜以外は、自分でニュースや新聞を見たりなどして知っていたのだった。
「でも、まだ大丈夫なんじゃない?日本が相当押してるから国内は安全、みたいなことはテレビで言ってたと思うけど・・・」
もっともな茜の言葉だったが、月夜とランスがそれを否定した。
「例えここが安全だとしても・・・俺は戦争をなんとかして止めたいって思ってる。それに関しては、みんなを巻き込むつもりはないし、俺が一人で動くよ。後、それに・・・」
「テレビでは言ってないけど、他の国もすぐに参戦してくるだろうね。そうなったら近いうちに、ここも危なくなる」
月夜の言葉の続きを、ランスが引き取って説明した。
「そう、なんだ・・・」
近いうちにこの辺りも戦争に巻き込まれるという事実を知った茜は、辛そうに納得した。茜もまた、戦争の被害者の一人であり、それに対するトラウマが強いのだ。
「だから、すぐに俺は行かないといけないんだ・・・戦争を、止めに」
月夜のその言葉に茜と楓は驚いていた。ランスはなんとなくそれを察していたのか、沈痛な面持ちで黙っている。
「・・・どうして、今すぐ行かないといけないの?」
楓は驚きながらも、強い口調で月夜に聞いた。その内心は、穏やかではない。確かに戦争が長引けば死者の数も増えるが、だからといって今すぐ止めに行く、という明確な理由が楓にはわからなかった。
「他の国が完全に参戦してからじゃ遅いんだ。その理由は二つ。一つ目は、ほとんどの大国が戦争に参加したら、もう取り返しがつかなくなる。今でも十分まずそうだけど・・・それでも、俺はまだなんとかなると思ってる。二つ目は、ここが安全じゃない内じゃないとまずいんだ・・・俺が、動けなくなる」
その理由は的確だった。四度目の世界大戦を迎えてしまったら、下手したら地球そのものが核によって無くなる恐れがある。例えそれを免れたとしても、無事な国は一つとしてなくなる上に、国同士の関係は今まで以上に険悪なものになるだろう。そして、戦争が激化してしまえば、月夜もまた、ここにいる他の三人を護るために動くことが出来なくなる。時間が経てば経つほど、不利な状況にしかならないのであった。
「まぁ、止めるって言っても・・・どうすればいいかなんて、分からないんだけどさ」
強大な力を持つ月夜だが、その糸口はいまだつかめていなかった。ランスが言ったように、戦争を止めるなんていう月夜の考えは甘いのかもしれない。それでも、月夜は力を持ちながら、ただそれを見ていることは出来なかった。
「なんとか、してみるよ・・・うん・・・さて、行かないと」
そう言って、月夜は立ち上がった。他の黙っていた三人は、辛そうな目で月夜を見つめた。
「今更だけど・・・本当に、行くのか?」
一番初めに口を開いたのはランスだった。
「行かなきゃ、話にならないだろ?二人のこと、頼むよ。ああ、リミーナをさらった奴らなら多分大丈夫、俺とリミーナが狙いなら、俺がいなくなった時点でここは安全になるだろうからさ」
心配させないように、月夜はその他の不安要素の安全性を説明した。
「こっちのことは心配するな、僕が・・・命にかけても護る」
「うん、任せた。・・・やっぱり、兄貴はそうじゃないとな」
月夜の言葉に、ランスは、うん?と疑問の声をあげた。
「さっきみたいな弱音や諦めは似合わないんだよ、だからこそ、二人を任せられるんだ」
月夜は別に、ランスが戦争を肯定したから怒ったわけではなかった。不甲斐ない兄を見るのが、月夜はただ嫌だったのだ。
「ああ、気をつけて・・・帰って来いよ」
「当たり前だよ」
「ほんと・・・ちゃんと、帰って来るんだよ?」
次に口を開いたのは茜だった。心配そうに、月夜を見つめる茜は、目の端に涙がたまっていた。
「心配いらないって、俺のことより、姉さんもさ・・・今度は、ちゃんと幸せにならないとだめだよ?」
茜が月夜を心配するように、月夜も茜が心配だった。相手が兄貴なら間違いなく大丈夫だろうと月夜は思うが、万が一ということもある。人一倍中身が弱い茜を知っている月夜は、実はこの中で茜が一番心配だった。
「うちは・・・大丈夫だよ、だから、月夜もちゃんと・・・帰って来るんだよ」
茜の目の端にたまっていた涙が、こらえきれずに頬を伝って床に零れ落ちた。それでも、姉として、気丈に月夜から視線を外さずに送る言葉を紡いだ。
「がんばって・・・」
「うん、がんばるさ」
月夜は胸に熱いものが灯るのを感じた。なにがなんでも、この三人を護ろうと強く誓った。
「・・・月夜」
最後に口を開いたのは楓だった。意外なことに、茜と違って楓は涙ぐんではいなかった。
「・・・楓」
「私・・・何も出来なくて・・・ほんと自分が情けなくて・・・でも・・・」
月夜はとっさに楓を抱き締めていた。弱弱しく喋る楓が、月夜には辛くて見ていることが出来なかったのだ。
「待ってる・・・から。月夜のこと、絶対待ってるから・・・!」
「うん・・・うん・・・!」
月夜は楓を強く抱き締めた。このままずっと、離したくなかった。
「帰って来たら・・・ご飯作るから・・・そうしたら・・・また、頭撫でてよね?絶対だよ・・・?」
楓の言葉はいつの間にか涙混じりの声になっていた。月夜に強く抱き締められながら、大粒の涙をぽろぽろと流す。
「うん・・・分かってるよ、楓」
月夜も泣いてしまいそうになった。しかし、なんとかそれをこらえた。今泣いてしまえば、行くことが出来なくなってしまいそうで、月夜は怖かった。いくら月夜といえど、誰も殺さずに戦争を止めようなんて暴挙に出れば、死ぬ可能性がある。今の状況では、司令官を脅しても戦争が止まることは無いだろう。それでも月夜は、自分が戦場の中を、飛び交う砲弾や爆撃の中を、駆けずり回ることになろうとも戦争を止めるつもりでいた。
「じゃあ、行って来る・・・」
そう言いながらも、月夜は楓のことが離せなかった。月夜だって単なるお人よしではない。知らない人の為に死ねるか?なんて馬鹿げた質問にはノーと答えるだろうし、ましてや救世主や偽善者を気取るつもりなんてさらさらない。それでも月夜が一人で戦争を止めるなんていうとち狂ったことに突き動かされる理由は・・・生まれ持ってしまった力と、優しさ・・・良い点にも悪い点にもとれるその優しさのせいだった。そして何よりも、結果としてそれが楓を護ることになるからだ。
「月夜・・・」
しかし、月夜は震えていた。日頃、護るために死ぬ、誰かのために死ぬ、と言っている月夜だったが、それでもまだ十六歳なのだ。歩んできた道は人より重く苦しいものでも、月夜は単なる高校生にしか過ぎなかった。
「なさけねーよな俺・・・時間ないっていうのにさ」
震える月夜を楓は強く抱き締めようとした。しかし、楓は少し考えた後・・・月夜を後ろに突き飛ばした。それはその場にいた全員にとって予想外のことで、場が驚きの雰囲気に包まれた。
「・・・っ月夜には、やらなきゃいけないことがあるんでしょ!?」
強い剣幕で叫ぶ楓を、月夜はポカンと口を開けて黙って見ている。
「今行けなかったら、月夜はきっと後悔する・・・時間が、ないんでしょ?」
弱弱しくも、芯の通った強い声だった。月夜は死にたくない、でも行かなければいけない・・・それを、楓は後押ししたのだった。
「・・・ごめん、俺、ほんと情けないな」
少しの間呆然としていた月夜だったが、その言葉から先は早かった。
「行って来る、何がなんでも、止めてくる」
見守る三人を背に、月夜はすぐに走り出した。靴をはく時間すらもったいないというように、玄関のドアを突き破るような速さで月夜は外へと走り去って行った。
「本当に・・・あれで良かったの?楓」
立ち尽くしながら月夜が出て行った先をずっと見つめていた楓に、茜がそう尋ねる。
「いいの・・・ああでもしないと、月夜はきっと行くことが出来なかった・・・から・・・」
涙をぽろぽろとこぼしながら、せめて嗚咽だけはもらさないように、と楓は唇をかんで耐えながら答える。
「そっか・・・じゃあ、仕方ないよね」
他にかける言葉も見つからず、ランスと茜は黙った。
(無事に帰って来てね・・・絶対、だよ)
楓はただ、その場で祈り続けた。
「ほんと、なさけねーよ俺・・・」
走る月夜は、胸元に下げられているペンダントを片手で握り締めながら、辛そうに呟いた。楓がどんな気持ちであんな言動をしたか、月夜はよく分かっていた。あの状況で一番辛いのは、月夜ではなく楓だったに違いない。自分の弱さのせいで楓が傷つくことになったことに、月夜は自分自身に強い苛立ちを覚えた。
「ちくしょう・・・ほんと、俺は・・・」
「やあ、そんなに急いでどこに行くんだい?」
高速、いや、光速で走る月夜はいきなり声をかけられて不意に止まって振り向いた。それが普通の人間であるのなら、月夜は止まることなくその場を通り過ぎていたはずだった。月夜が止まった時には、相手ははるか後方にいて顔は見えなかったが、それが誰であるかなんて月夜には分かっていた。月夜の体に嫌な感覚がねっとりとまとわりつく、その相手の名前を、月夜はぽつりと呟いていた。
「葉月・・・」
「そうだよ、友達を通り過ぎていくなんてひどいなぁ」
「っ!?」
先ほどまで顔すら肉眼でとらえきれてなかった葉月が、月夜が気づかないうちにいつの間にかその横に立っていた。月夜は吹き出る嫌な汗を抑えながら、どうにか口を開く。
「何の用だよ、今、お前にかまってる暇はないんだ」
「それは困るなぁ、僕は君に用事があるのに。いや、正確に言えば、君と楓、かな」
相変わらず人懐っこい笑みを浮かべながら言う葉月だったが、髪の間から覗く鋭く赤み帯びた目はにこりとも笑っていなかった。
「お前・・・!」
月夜は敵意のある目を葉月に向けるが、葉月はそれを気にした様子もなく平然と言う。
「でも、君が忙しいのなら仕方ないかな?それなら、せめて楓ぐらいは付き合ってもらわないと」
葉月の言葉は、月夜にとっては致命的だった。要するに葉月は、楓のことを人質にしているのとなんら変わりはなかった。その言葉に、月夜はどす黒い物を放ち始める。
「楓に手を出してみろ、俺は絶対にお前のことを殺す」
そんな月夜の脅迫じみた言葉と雰囲気ですら、葉月は軽やかにかわしてのけた。
「誰も手を出すなんて言ってないんだけどなぁ、むしろ楓は、特別待遇だよ」
葉月のいつもと変わらぬ何かを隠しているようなおっとりとした物腰に、ついに月夜はきれた。
「いい加減にしろよ・・・?ここで決着つけて俺の憂いごとお前の存在を断ち切ってやろうか!?」
急いでいる状況に加え、相手が気に入らない葉月ということもあり、月夜の口調はいつもよりかなり刺々しい物になっていた。
「へぇ・・・僕に勝てるの?本当に?」
月夜の言葉に、葉月は雰囲気が一転した。今までのつかみどころのない飄々とした態度から、近くにいる全ての生き物を威圧するような重々しさを体から放ち始める。以前とは違い、月夜はしり込みせずに叫ぶ。
「当たり前だ!」
二人の距離は一メートルと少し、普通の人間ですら一歩踏み込んで腕を突き出すだけで当たる距離だ。それでも普通の人間であるなら一秒前後の行動を、月夜はコンマ一秒より早くこなした。肉眼ではとらえきれない程の速度で、右腕を思い切り横に振る。しかし、かつてのリミーナと同じ様にそれはただ空を切っただけだった。
「白い翼よりは速いかな。でも、やっぱりそれじゃつまらないな」
葉月の声だけが響く。その姿は、まるで瞬間移動でもしてしまったかのように月夜のそばにはいない。月夜は目で見るよりも早く体で感じ取り、左腕を後ろの斜め上に振るった。空気を切り裂く音と共に、手の先から現れた闇を具現化したような黒い何かが、月夜の後ろにあった電柱の頭頂部を飲み込み無に変えた。幸い辺りに人はおらず、月夜は誰かに目撃される前に葉月を消すつもりだった。しかし、そこにはまたも葉月の姿はない。
「くすくす、怖いね・・・全てを破壊、いや、無に還すその力。力が格段に上がっているのが分かるよ」
葉月は月夜の攻撃をなんなくかわしながら、余裕の言葉を吐き続ける。数十秒の間に行われた月夜の攻撃は、十数回に及んだがその全てを葉月は避けきっていた。その間、葉月は一度たりとも月夜に攻撃を仕掛けなかった。
「・・・そろそろ、やめにしない?」
「うるせぇ!」
そう叫んだものの、月夜は次の攻撃を仕掛けなかった。諦めたわけでも、疲れ果てたわけでもなく、ただ、相手の隙をうかがっていたのだ。
「時間がないんだろ?僕の用事は早く終わるから、さ。諦めてついておいでよ」
今まで瞬間移動とも言える程の速度で逃げ回っていた葉月は、最初と同じ様にいつの間にか月夜の横に立っていた。その雰囲気は、いつものおっとりとしたものに戻っている。
「お前の言葉が、信用出来るとおもってんのか?」
確かに時間がない月夜としては、あまりここで時間をかけるわけにはいかなかった。しかし、葉月の言葉を素直に受け入れることも、月夜には出来なかった。
「くすくす・・・ほんとさ、僕って信用ないなぁ・・・なんでだと思う?」
月夜に向けられた葉月の顔に、一瞬だけ哀しみのような、今までの葉月が見せたことのない人間のような表情が浮かんだ。
「・・・そんなの、知るか」
その一瞬の表情に、毒気が抜かれた月夜は素っ気無く呟きながら、なんなんだよ、こいつは・・・と心の中で小さく独りごちる。
「誰に信用されてなくても、友達に信用されないのは哀しいことだと思わないかい?僕は・・・哀しいなぁ」
それはいつもの演技がかかった葉月の言葉ではなく、心からの言葉のように月夜は聞こえた。
「だからしらねー、っつうの」
葉月の違う一面にどぎまぎしながらも、月夜はそうぶっきらぼうに言った。いや、そう言うしかなかった。葉月の事情を知らない上に、実質敵である葉月に、月夜は慰めの言葉や優しい言葉なんてかけることが出来なかったのだ。
「まぁいいんだ、そんなことは・・・それより、付いて来てくれるね?」
いつもの雰囲気に戻った葉月の言葉に、月夜は少しだけ、ほんの少しだけ悩んだ。
(どうしたもんか・・・倒すことも出来ない、かといって俺がいない間に楓に手を出されても困る・・・仕方ない、か)
やむを得ない事情に、葉月の見せたことのない哀しみへの複雑な気持ちが加わり、月夜は仕方なく頷いた。
「ただし、二つ条件がある。早くその用事とやらを終わらせることと、楓を連れて行くのはだめだ」
月夜の言葉に、葉月は渋みを含んだ顔をした。
「うーん・・・君だけでもだめだし、楓だけでもだめなんだ。一生のお願いだよ、楓も一緒に、ね?」
深々と頭を下げる葉月は、そのまま土下座でもしてしまいそうな勢いだった。その態度に崩されそうになる月夜だったが、それでも月夜はそれをよしとはしない。
「だめだ、それだけはだめ」
葉月の言う用事というものを月夜は分かってはいなかったが、少しでも危険性のありそうなものに楓を付き合わせるのはごめんだった。そんな月夜の態度に、葉月は諦めたように首を振る。
「そこまで言われたら仕方ない・・・かな」
そう言い終わった瞬間、葉月はニヤリと不適な笑みを浮かべたかと思った直後月夜の前から姿を消した。
「なっ・・・!?」
月夜は嫌な予感を感じ、とっさに今まで自分が駆けて来た道に視線を動かす。そこには既に黒い点に見える程小さくなっていた葉月の後姿があった。
「あ、あの野郎!!」
葉月の行動が何を意味するのか即座に理解した月夜は、すぐにその後を追った。
「おい、みんな大丈夫か!?」
月夜は少し前に出て来たばかりの家の玄関を、勢い良く開け放ってそう叫んだ。あれだけしんみりした状況で家を出て来た割に、あっさり戻ってくるのもいかがなものかと思うが、月夜にはそんなことを考えている余裕はなかった。
「ど、どうしたんだ月夜、忘れ物か?」
慌しく出て来たランスにまくしたてようとした月夜だったが、そのすぐ後ろに、どうしたの?と言いながら顔を出した楓の姿を確認し、月夜は安堵の溜め息を吐き出した。
「どうしたんだ?何か・・・あったのか?」
心配そうに見つめるランスとその後ろにいる二人に、月夜は苦い顔で言った。
「いや、どうにも予想が外れたみたいだ・・・くそ、あの野郎」
月夜は、葉月が楓を狙うことを予想していたのだった。そうなれば、月夜は葉月の言うことを聞かざるをえなくなる。月夜は自分の予想が外れたことにほっとした。しかしそれもすぐに、後ろから響いた声にかき消された。
「僕がそんなことするわけないじゃない?ほんと、信用ないなぁ」
月夜はその言葉を聞いてすぐに振り返った。葉月君・・・?と楓の呟きがもれる。月夜より先に行ったはずの葉月が、相変わらず人懐っこい笑顔でそこに立っていた。
「お前、どうして・・・?」
葉月の意図が全く分からない月夜は、自分でも気づかない内にそう聞いていた。葉月は楽しそうに笑い、月夜の問いに答えた。
「楓を連れて行くのは簡単だよ、でも彼女を人質にとって君に言うことを聞かせるようなまねはしたくないだけさ」
葉月の言葉は口調とは裏腹に、真摯なものがあった。それでも月夜は納得がいかず、鋭い視線で葉月を睨みながら聞く。
「お前程の力があるならなんで俺らを無理に連れて行こうとしない?」
「理由は簡単だよ、確かに君らを連れて行くのは命令されたことだ。でも、僕は僕のやりたいようにそれをこなすだけ、ただ、それだけだよ」
「全く理由になってない、俺が聞きたいのは、どうしてお前がそうしたいのか、だ」
もはや二人の世界で話し合っている葉月と月夜を、事情が全く分からない三人はただ黙って見ていた。正確には、口を挟める余裕がないほど、二人の間にある空気は別次元のようなものに感じられたからだ。
「・・・詳しくは言えないんだ。ただでさえ、僕は信用がなくて疎まれてるからね。大方今も監視されてるはずだろうし」
「監視・・・?」
「だから、何も言わずに付いて来て欲しいんだ。それが、君らのためで・・・この世界のためなんだ」
葉月の言わんとしていることは、相変わらず月夜には理解出来なかった。しかし、その言葉は本当に真摯なものだった。月夜と楓の身を案じ、この世界すらを案じる、そんな強い想いが、ひしひしと伝わる。
「・・・分かったよ、信用してやる。でも、もし楓に危害が加えられるようなら・・・俺は本気でお前もろとも、お前の後ろに立つその存在をかき消してやる」
葉月の真摯な態度に折れながらも、それだけは譲れないと強く言う。月夜のその言葉に、葉月は心の底から安堵したような微笑みを見せた。
「良かった・・・早速行こう、君に時間がないように、僕も時間がないんだ」
そう言って、葉月はすぐに月夜に背を向け歩き始めた。付いて来て、と意思表示を表すその仕草は、葉月から月夜に対する信用の証でもあった。
「というわけだ、楓、おいで」
「え?え?ちょっと待ってよ、どういうわけなの?」
楓の混乱も当たり前のことだった。一切説明なしに二人の会話を聞いていれば、誰だってそうなるだろう。案の定、ランスと茜も呆然とした顔をしている。
「いいから、説明は行きながらするから・・・」
「す、少しだけ待って!すぐ行くから!」
楓はそう言い残し、どたどたと自分の部屋へと走っていく。まさか用意するのにまた何十分もかからないだろうなぁ・・・、と月夜が不安に思っていると、楓はすぐに戻ってきた。
「お待たせ!」
服装は先ほどと変わらない楓だったが、その胸元には月夜が贈ったペンダントが下げられていた。楓のペンダントに気づいた月夜は、一瞬だけ頬を緩めた。しかし、すぐに真面目な顔になり言う。
「ああ、それじゃ行くか・・・あいつに置いてかれちまう」
少し速めに歩き出す月夜の後ろを、楓は小走りで追っていく。後に残されたランスと茜は、呆然とした表情のまま呟いた。
「うちら・・・蚊帳の外だね」
「ああ、なんか、寂しい」
慌しい状況とはいえ、せめて説明ぐらいは欲しかった、と二人は思いながら、しばらくの間その場につっ立っていた。
葉月は親切なことに、家を出てすぐの場所で二人を待っていた。
「やぁ、遅かったね」
実際はほとんど時間が経ってないが、時間がない葉月にはそれすらも遅く感じたようだ。
「悪かったな、で、そこは遠いのか?」
時間がないという葉月は、その言葉とは裏腹にゆっくりと歩いていた。
「歩いたら四十分程、走れば二十分程、君と僕なら一分もかからないだろうね」
そんなに遠いのか、と月夜は嘆息した。言葉と行動が全く一致しない葉月を月夜はいぶかしんだが、隣を歩く楓に服の袖を引っ張られ思考は中断された。
「ねぇ、説明してくれるんでしょ?」
「あ、そういやそうだったな」
少し前のことすら忘れていたかのような月夜の言葉に、楓は少しだけ、むー、と口を尖らせた。しかし、現状を考えれば月夜が忘れてしまうのも無理はないのかもしれない。
「僕が説明しようか?・・・そういえば、遅くなったけど、楓、おはよう」
いつの間にか前を歩いていた葉月が、楓の隣を歩いていた。
「えーと・・・おはよう」
どことなく余所余所しい楓に、一瞬葉月は顔を曇らせたが、すぐにまたいつもの笑みを浮かべる。
「今日も一段ときれいだね、君を照らす太陽でさえ、ただの引き立て役に見えてしまうよ」
そう言う葉月のキザなセリフも一段と大げさだった。
「おい、お前は前を歩け前を、誰が案内してると思ってんだ。そんでもって楓に近づくな」
月夜の言葉は、葉月が危険だからそう言ったわけではなく、ただ単に嫉妬からきたものだった。ある意味月夜にとっては危険なわけなのだが。
「つれないこと言わないでほしいなぁ」
そう言いながらも渋々と葉月は前を歩き始める。そうしていると、誰が見ても普通の人間にしか見えなかった。
「とりあえず、説明して」
「はいはい、えーとだな・・・」
月夜が楓に説明している間、何回か葉月が楓の横に並んでは月夜に文句を言われるということを繰り返した三人だった。事情を知らない者が見れば、それは仲のいい友達同士にしか見えなかっただろう。
「・・・と、いうわけなんだ」
葉月の邪魔がなければ十分もかからない説明を、月夜は二十分程かけて楓に説明した。葉月の意図を理解していない月夜の説明は曖昧な部分が多かったが、ある程度は楓も理解したようだった。
「そうなんだ・・・」
その表情には不安のような翳りがあった。月夜ですら不安なのだ、楓は更に、といったところだろう。
「大丈夫だよ、絶対俺が護るし・・・それに、」
月夜は言いにくそうに前を歩く葉月を一瞥し、そして続きを言った。
「あいつも、信用しろ、って言ったしな」
意外な月夜の言葉に、楓は驚いた。
「月夜が葉月君のこと信用するなんて・・・悪いものでも食べた?」
「失礼なやつだな、大体から食べた物なんて楓の料理ぐらいで・・・痛い痛い」
楓はペシペシと月夜の頭をはたく。
「それは私の料理が悪い物って言いたいの?」
「いやそんなこといってねーだろ」
全くもって緊張感のない二人だったが、そんな会話を聞きながら前を歩いていた葉月は更に緊張感を感じさせない嬉しそうな微笑みを浮かべていた。
「・・・信用、ね。ありがとう、月夜」
葉月がもらした呟きに、月夜が疑問の声をあげた。
「何か言ったか?」
「いや、何も言ってないよ」
「・・・?変なやつだな」
月夜はこの時、葉月がどんな気持ちでその言葉を言っていたかなど全く理解していなかった。それ以前に聞こえていなかった。
葉月が誰よりも重いもの心に抱えていることなど、誰一人として、知る者はいなかった。
よーーーっやく展開が動き始めました。
またしても苦手な戦闘シーンが始まるのかと思うと胃が痛くなりますが・・・




