殺戮の宴
「ん・・・ここはどこだ?」
広い荒野に、いつの間にか立っていた月夜は疑問の声を上げた。辺りを見回しても、見覚えが全く無い場所・・・それなのに、月夜はなんとなく懐かしさを感じた。辺り一面は台風が過ぎ去った後のように、草一本生えておらず、ひび割れた不毛な大地がただただ広がっている。よく見ると、至る箇所に穴があいていたり抉られていたりした。
「また、夢でも見てるのかな?」
よく夢を見る月夜は、そうぼやいた。けど、これはなんの夢だろうか?そう思案していると、不意に後ろから声をかけられた。
「正確には、夢じゃないぜ」
「誰だ?」
後ろを振り返ると、人の形をした真っ黒い何かがいた。それは例えるなら、闇を集めて人の形にしたもの・・・立体化した影のようなものだ。
「よお、久しぶり・・・といっても、お前には分からないかな?」
表情がなく、それどころか顔すらない影だが、月夜にはそいつがなんとなく笑っているように感じた。
「・・・ああ、分からない。でも、俺はお前を知ってるよ」
「知っているのに分からない、か。随分矛盾してるんじゃねぇ?」
「生物として矛盾してるお前には言われたくない。まぁそれも、俺ら人間が勝手に決めた生物学理論だけどな」
「お前、分からないとか言った割りには分かってんじゃねーか。そうだな、俺が矛盾してるなんてのは、人間が勝手に決めたことだ」
分からない、と言った月夜を責めるような口ぶりの影に対し、月夜は軽く鼻で笑いながら言う。
「俺が分からないって言ったのは、お前が言った久しぶり、っていう言葉のことだよ。久しぶりも何も、ずっといただろ」
からかうような口調の月夜に、影は怒るどころか嬉しそうな声で言った。
「それもそうだな!よく分かってるじゃないか、お前は」
「付き合い長いからな、お前が素直に消えるたまじゃないことぐらい知ってるよ・・・とはいえ、そうだな。うん、久しぶり」
何かが矛盾しているような月夜の言葉だったが、影はそれについてとやかく言わなかった。
「こうしてお前と話すのは、初めてだよな・・・」
「そうだな、ずっと一緒だったのに、話すのが初めてなんて、ほんとおかしい話だな」
本当におかしい話だ、と月夜は自分の言葉につい苦笑してしまった。そういえば、と月夜は思い出したかのように影に聞いた。
「夢じゃないなら、ここは一体どこなんだ?」
「半分は夢みたいなもんだよ。ただ、人間っていうのはレム睡眠の時に夢を見て、ノンレム睡眠の時に夢を見ない生き物だろ?お前は今、脳がぐっすり寝ているノンレム睡眠の状態だぜ?」
影の言おうとしていることがなんとなく分かった月夜は、その言葉をまとめてみた。
「要するに、これは体が見ているものなのか?レム睡眠の時は体が、ノンレム睡眠の時は脳が休むもんなんだから」
その理論に従っていけば、確かにこの不可思議な夢みたいなものは体が見ているということになる。しかし、体には脳と違い考える力や記憶がないのだから夢を見るはずもない。
「違う・・・そうだな、簡単に言うなら、ここはお前の深層心理の世界、ってとこかな」
「なるほどね、そう言われればなんとなく分かる。だからお前も、具現化出来る、ってことか」
影の言いたいことに納得した月夜は、不意に座りだす。
「お前も、座ったらどうだ、立ち話もなんだし・・・って言っても、座れるかどうか知らないけど」
影は緩やかに動き、人が座っているかのような形になる。
「お前が出来ることは俺も出来るさ、何せ同じなんだからな」
「同じではあるけど、一緒にして欲しくはない。一応、俺は人間だからな」
それもそうか、と苦笑するように影は言う。
「で、なんの用だ?こんなところに人を呼び出しておいて」
月夜は座ったまま辺り一面を指し示す。相変わらず、何もないだだっ広い荒野が広がっている。この場所に全く見覚えのない月夜だったが、辺り一面荒野というのは、月夜に嫌な既視感を与え、不快にさせた。
「特に用っていう用はないんだ、ただあれのせいで、俺の本来の力が大分戻ったみたいでね。そのおかげでお前とこうやって話せる。だから話せる時に、ただお前と話したいと思っただけだよ」
「あれ・・・?何かあったっけか?」
あれのせい、と言われても月夜はいまいちピンと来なかった。
「覚えてないとは言わせないぜ?お前昨日、相当苦しんだだろ」
「昨日?なんのことだよ?」
(昨日は確か、葉月のせいでへこまされ、その後家に帰ってきて楓に慰められて・・・あれ?変だな、その後俺はどうなったんだっけ?)
それ以降の記憶が曖昧な月夜は、頭を悩ませる。
「昨日何があったんだ?思い出せない・・・夢を見ているってことは、今俺は寝てる、ってことだろうし」
月夜の言葉に一瞬顔をしかめたように見えた影だったが、すぐに何かを悟って呟く。
「なるほど・・・そう言えば、それがいつでもあの人の望みだったもんな・・・いや、俺が忘れてないってことは、無意識によるあの子の想い、か」
何かを思い出しながら懐かしく呟く影は、大人になった人間が青春の日々を思い出すような、そんな雰囲気を醸し出していた。
「思い出に浸ってる最中に悪いんだけどさ、俺にも分かるように説明してくれない?」
影の言いたいことが全く分からない月夜は、説明を求めた。
「ああ、悪い悪い・・・とは言え、あの子の想いを無駄にするのもな」
影は困ったように頭を傾げた。しかしすぐに、まぁ仕方ないか・・・、と呟いた。
「どちらにせよ、もう手遅れだし。知っておかないと困るのはお前だしな」
「そんな前置きはいいから、早く説明してくれ」
いちいちじれったい影を、月夜は急かす。月夜は知りたかった、昨日自分に何が起きたのか、そして影が言う意味の分からない言葉の意味を。
「急かすなよ、お前には全てを知る権利はあるけど、知らないでおいた方がいいと俺は思ってるんだ。多少強い力を持ってる人間、その程度の解釈で、お前にはずっと普通に暮らしててもらいたかった。・・・普通に生まれてきた人間ならまだしも、何かしらの用途で生まれてきた人間は、その理由なんて知りたいとは思わないだろ?」
グダグダと前置きが長い影の言葉だが、その言葉には本当に月夜を心配しているような気持ちがあった。そんな気持ちを感じ取りながらも、月夜は皮肉気に言う。
「今まで十分普通に暮らせてきたわけじゃないんだ。今更だと思うよ」
人を殺す兵器として望まれて生まれてきた月夜は、本当に今更だと思っていた。同じ望まれて生まれてきた子どもでも、一般の家庭とはその意味合いが全く違うだなんて、皮肉だよな。と月夜は自嘲する。
「まぁ、確かに今更かもしれないな・・・そうだなぁ、俺が一から説明するよりも、お前が質問してきたことに俺が答える方が、俺も困らないし、お前にもいいかもしれないな」
影のその提案に、月夜は頷いた。実際、月夜が知りたいことは影が言う全てではないし、影にとっても全てを話すのは嫌だった。
「それじゃ早速、昨日俺の身に何か起きたのか?全く覚えてないんだ」
「なんて言えばいいんだろうな・・・お前は昨日、発狂しそうになったんだよ」
「発狂?」
「ああ、強い憎悪とか哀しみとか感じると、人は狂いそうになるだろ?お前はそれを感じて、壊れそうになったんだ。そして、力が戻った」
「どうしてそれで、力が戻ったんだ?大体から、その強い憎悪とか俺自身のものなのか?」
影が月夜の質問に答えるたびに、月夜にとって分からないことが増え質問が増えていった。
「お前のものでもあるしお前のものでもない。強いて言うなら、お前の一部・・・俺自身のものだよ。そのせいで、完全に寝てたのに俺が起こされちまったんだよ」
「なるほどね、なんとなく分かった」
月夜は影の気持ちに巻き込まれ発狂しかけ、そしてその憎悪などのせいで寝ていた影が目を覚ました。確かに、それなら理は叶っている、でも・・・。
「腑に落ちない点が二つある。俺がそれを忘れたことと、寝ていたはずのお前がなんでそんな気持ちを抱いたんだ?」
「お前が忘れた理由は、あの子、楓のせいだよ。あの子は、お前に人間でいてほしいんだろ。だから翼を生やして発狂してたお前を見て、無意識下で、忘れて欲しい、そう願ったんだ。まぁ、俺自身が対象じゃなかったおかげで、俺は忘れなかったんだけどな」
先ほど影が言った、想いを無駄にしたくない、という意味の理由をようやく月夜は理解した。
「それと、憎悪やらの気持ちを抱いたのは正確には俺じゃない。俺はお前の一部だけど、なおかつ違う奴の一部でもあるんだ。そいつが発した物が、俺やお前に影響を与えたんだよ」
「なるほどね・・・ってちょっと待て、そいつは誰なんだ?」
月夜の質問に、影は黙った。まるで、月夜とそいつを引き合わせるのを嫌がっているように見えた。
「お前、さっき手遅れって言ってただろ?なら、話してもいいんじゃないか?」
黙っている影を月夜は促す。数秒の後、影は諦めたように呟いた。
「・・・前に、リミーナが言ってただろ?あの時俺は寝てたけど、お前の記憶として俺の中にある。お前やリミーナの中にある兵器、それの大元がそいつなんだ」
「そいつが俺やリミーナを作り出したのか?・・・兵器として」
「いんや、お前らを作り出したのは人間だよ。ただ、最強の兵器としてある物を付け加えたのがそいつだ」
「ある物・・・それが、お前か?」
「そうだぜ、リミーナの中にも、俺みたいなのがいるはずだ」
月夜は自分の記憶の中のリミーナを思い出した。妹としてのリミーナ、兵器としてのリミーナ・・・確かに、二重人格と思えるほどの温度差がかつてのリミーナにはあった。
「・・・なんのために、俺らは生み出されたんだ?」
「人間を殺すためさ・・・それが、そいつの望みの一つだからな」
月夜やリミーナが苦しむことになった全ての元凶、月夜は名前すら知らないそいつに強い殺意を抱いた。そんな月夜の気持ちを知り、影は釘をさすように言う。
「下手なことを考えるなよ?お前じゃそいつには勝てない・・・それに、楓の気持ちが無駄になる」
「分かってる、居場所が分からないんじゃ、殺しに行きたくても行けない」
月夜の言い方は、居場所さえ分かっているなら殺しに行く、そう受け取れた。
「だから、話すの嫌だったんだよ・・・お前が楓と普通に幸せになってくれれば、俺はそれで良かったんだ。まぁ、俺にも利点はあるし」
意味深な影の言葉に、月夜は疑問の声を上げた。
「利点?」
「いや、なんでもない・・・質問はもうないか?」
無理やり話題をそらすような影の言葉に、月夜は顔をしかめたが、まぁいいか、と自分を納得させた。
「聞きたいことは山ほどあるけど、埒があかなそうだし・・・もういいかな」
「分かった、そんじゃそろそろ、起きたらどうだ?」
「言われるまでもないよ・・・お前は、どうするんだ?」
「俺は軽く寝てる、といっても深い眠りじゃないから、お前が力を使ってた頃と同じような感じになるだろうよ」
「なら、いつも通りか・・・」
「そういうことだな」
ああ、と呟いてから、最後に影は言った。
「最後に一つ、絶対に楓のこと護れよな・・・それじゃ、またな」
そう言い残し、影は瞬く間に月夜の横からいなくなった。一人残された月夜は、立ち上がって何一つない荒野を遠い目で見渡した。
「何があっても護るさ・・・絶対に」
呟いた後、月夜は不意に抗い難い眠気に襲われその場に崩れ落ちた。
「ん・・・」
とろんとした目をしながら、月夜は目を覚ました。体のだるさと瞼の重さを感じながらも、上半身を起こして軽く伸びをする。
「あー・・・あれ?」
伸びをしながら、月夜は隣にいる楓の存在に気づいた。月夜に寄り添いながら、楓は横になっている。
「おーい、何寝てるんだ楓」
今まで寝ていたので人のことを言えない月夜だが、そう言いながら楓の頬をペチペチと叩く。
「うー・・・ん」
小さく呻きながら動く楓がなんとなく面白いと思い、月夜はしばらくの間ペチペチと頬を叩いた。
「むー・・・」
数分後、ようやく楓は目を開けた。起きたばっかりの月夜同様に、その目はとろんとしている。
「おはよう」
そんな楓の顔を覗きこんで、月夜は言った。
「おはよー・・・って、月夜!?」
いきなり上半身を起こそうとした楓は、月夜の頭に自分の頭を思いっきりぶつけた。月夜はいきなりのことに後ろに倒れた。
「いってぇ!いきなり何するん・・・どうした、楓?」
すぐに上半身を起こして月夜は文句を言おうとしたが、楓の様子が変なことに気づいて言葉を止めた。楓は小さく震えながら、その目に涙をためている。そしてすぐに、楓は月夜に抱きついた。
「月夜ーーー!!」
「うわっ!」
いきなり楓に抱きつかれた月夜は、再度後ろに倒れこんだ。
「心配したんだよ!?」
「待て、落ち着け!死ぬ、まじ死ぬ!」
楓の腕はがっちりと月夜の首を締め上げていた。密着する楓の体にドキドキする暇もなく、月夜はジタバタと暴れる。
「起きないかと思った、本当に良かったー!」
しかし、楓に月夜の声は届いていない。本気で締め上げてくる楓の腕を月夜はなんとか外そうとするが、体勢が悪いためうまく力が入らなかった。
「やべ・・・まじ・・・死ぬ」
徐々に体から力が抜けていくの月夜は感じながら、意識を失いそうになる。そこでようやく、楓は我に返った。
「あ・・・ごめんね、ごめんね・・・」
楓は腕を外し、苦しそうな月夜から少しだけ離れて申し訳なさそうに座った。
「いや、いいけどさ・・・」
実際殺されそうになった月夜としては何一つ良くは無かったのだが、楓の泣き顔を見てしまった月夜にはそんなことが言えるはずもなかった。
「だって・・・目を覚まさなくて、私すごく心配で・・・」
いつもと違い、すごく弱弱しい感じの楓に違和感を感じながら、月夜は倒れたままの体勢で聞く。
「目覚まさなかったって、俺どれだけ寝てたんだ?」
「三日ぐらい・・・」
「三日!?」
楓の言葉に驚いて月夜は上半身を起こした。
「う、うん・・・だから、心配したんだよ・・・?」
三日間も目を覚まさなければ、そりゃ心配するよなぁ・・・と月夜は思った。しかし、楓がやけに弱弱しそうな感じなのは、それだけが理由ではなかった。そしてその理由は、すぐに楓本人の口から吐き出される。
「月夜が寝てた間に、たくさんのことが起きて・・・リミーナちゃんがいなくなったり、また、戦争が始まったり・・・」
「え・・・?」
一瞬、月夜は楓の言っていることの意味が理解出来なかった。リミーナ、戦争、その二つの言葉が、月夜の頭の中をぐるぐると回る。
「どうしたの・・・?」
呆然としている月夜のことが心配になった楓は、その顔を覗きこむ。楓の顔には、疲労と苦悩の色が強く出ていた。そんな楓に、事情が分からないからと説明を求める気に月夜はなれなかった。だから、気遣うように優しい声を出した。
「いや、なんでもない。そっか・・・大変だったな」
月夜は楓の頭を撫でた。
「うん・・・」
楓もまた、月夜と同じでよく今の状況を理解していなかった。そしてなおかつ、ほとんど寝ていない楓は疲労と混乱で冷静ではなかった。普段の楓ならば、月夜が聞くよりも先に事情を説明してくれるだろう。
「少し休んだらどうだ?そばにいるからさ」
今何が起きているかよりも、月夜は楓のことが心配だった。
「私は・・・大丈夫だよ、ご飯作らないといけないし」
ふらふらと立ち上がろうとする楓の腕を、月夜はつかんで引き寄せた。
「いいから、ほとんど寝てないんだろ?」
先ほどうたた寝をしていた楓を起こしてしまった罪悪感も入り混じって、月夜は強引に楓を横にした。さっき首を絞めていた時と違い、力なく楓は横にされた。
「だって・・・寝たら、月夜までいなくなっちゃいそうで・・・怖くて」
涙交じりに呟く楓は、まるで幼い子どものようだった。それも当たり前のことだった。なぜなら、戦争によって両親を殺されている楓にとって、戦争が起きるということは何よりも怖いことなのだから。それを知っている月夜は、胸が締め付けられるような感覚を感じながらも、月夜は優しく言う。
「どこにもいかないよ、絶対だ」
そう言って、楓の手を握り締めた。
「ずっと、こうして握ってるからさ・・・な?」
今の楓を見ているのは、月夜には耐え難いことだった。かけがえのない大切な人が、疲労と苦悩でボロボロになっている姿を、見たくはなかった。
「ほんとに・・・?絶対だよ、嘘ついちゃやだよ?」
「嘘なんてつかないよ」
しばらくの間、うーとかむーとか唸って寝るのをためらっていた楓だったが、月夜がそばにいることに安心し、疲労も相まってスヤスヤと小さな寝息をたて始めた。そんな楓を見ている月夜の表情には、暗い翳りがあった。
「戦争・・・か。リミーナもいなくなったなんて、本当に、何が起きてるんだ・・・?」
突然起きた自分の発狂と昏睡に関わっているかのようなリミーナの失踪と戦争の始まり、月夜にはその答えが分からなかった。ただ一つ分かっていたことは、何かとんでもない事態が起きているということだけだった。
「結局、自分の運命からは・・・逃れられないってことか」
月夜やリミーナの生まれにその元凶があるのなら、それは確かに、逃れられない運命だった。それでも・・・、と月夜は呟く。その言葉には、強い決意と自嘲が含まれていた。
「楓と家族だけは絶対に護りぬく、だって俺は・・・インフィニティなんだから」
かつての自分の名前を口にしながら、月夜はどうにもやるせない気持ちのまま楓の手を握り締めていた。
薄暗い部屋の中に、三人の男女がいた。三人の内の一人、中世ヨーロッパ貴族のようないでたちをした男は椅子に座って何かを考えている。そして三人の内の二人目、白髪の爽やかそうな少年はベッドで寝ている少女の傍らに座り、時たま少女の額に載せてある手ぬぐいを水に浸して載せ替え、手厚く看護している。そして最後の三人目、少年同様きれいな白髪をした少女・・・リミーナはベッドの上で意識を失ったまま横たわっていた。
「お前はやりすぎだ」
「はい?」
男の唐突な言葉に、少年は疑問の声を上げた。その言葉自体何度も言われている少年は、特に気にした様子もない。しかし、男はグチグチと文句を言い出す。
「本来なら、この戦争に白い翼も参戦させる予定だったのだ。それをお前がやりすぎたせいで、後一週間は白い翼も役に立たないではないか」
「はぁ・・・しつこいですねあなたも。いいじゃないですか、結局はあなたの望む通りの展開になっているんでしょ?なら、多少の誤差は諦めてくださいよ」
リミーナを捕らえて以来、こんな風に唐突に男に文句を言われるのがしばしあった少年は、投げやりに言う。
「多少の誤差だと?確かにそれ自体は微々たる物だ。しかし、今はその少しの時間ですら惜しいのだよ私は・・・あちらの国も馬鹿ではない、今は混乱状態でやられっぱなしではあるが、すぐに反撃に出るだろう。だが、白い翼がいればその余分な時間すらかけることなく、なおかつ効率的な数字を出せていただろう。そのはずだったのに、な?」
今更そんなことを言われなくても分かっている少年は、その嫌味を平然と受け流し、なおかつ反撃する。
「はいはい、分かってますよ・・・それにしても、他人に任せてばっかりで、自分は何もしてないくせによくそうやって文句ばかりでますね?感心しますよ」
飄々とした態度を崩さない少年を、男は鋭い目で睨みつける。男の表情には別段強い感情が浮かんでいたわけではないが、その実、その中は強い怒りで溢れかえっていた。
「他人だと?自分は何もしてないだと?所詮私の一部にしか過ぎない貴様が、本体である私に逆らうつもりか?」
「誰もそんなこと言ってないでしょう?そうやって怒ってばっかりだと、頭の血管ぶち切れますよ・・・それに、あなたと僕は今はほぼ対等でしょう?なら、動ける分だけ僕のほうがましだと思いますけどね」
「対等なものか、一部にしか過ぎない貴様にはあれらを取り込むことなど出来はしない。いいか、所詮貴様など捨て駒にしか過ぎないのだ」
「捨て駒・・・ね。さしずめあなたは将棋の王将ですね、一人では何も出来ない」
少年の言うことは的を得ていた。しかし、男はただの力がない王将ではなかった。歩が金に成るように、男は本来の力を取り戻したのなら、さしずめその名前は神に成るだろう。
「ふん・・・まぁいい、今だけは精々自由にやらせてやろう。近い未来、貴様も私の中へと戻るのだからな」
「自由ですか・・・ふふ、笑えてしまいますね」
心の底から楽しそうに、少年は笑った。生まれてこの方、少年は自分を自由だなんて思わなかった。使われるだけの便利な物としてこの世に存在を許され、その用途が終わってしまえばその存在すら消されてしまう。生まれながらにして牢獄、それが少年の人生だった。それでも笑っていられるのは、それが、当たり前のことだからだ。
「なら、精々あなたが言う自由とやらを、僕なりに楽しませてもらいますよ」
だから、あまり文句言わないで下さいね、と最後に付け足した。そして、もう関心がないとばかりに少年は閉口する。少年が待ち望んでいるのは、短い人生の渇きを潤す、ただ二つの存在だけだった。
楓が寝てから約三時間が経過していた。それでも一向に、楓が目を覚ます気配はない。
「ふぁー・・・」
月夜は欠伸をしながら、楓が起きるのを待ちわびていた。
「眠いわけじゃないけど・・・退屈だと欠伸がでるなぁ・・・」
最初の方は色々と考えをめぐらせていた月夜だったが、結局のところ現状を理解するには楓なりランスなりに、少しでも事情を聞かなければ全く意味が無いということを理解した月夜は、退屈しのぎに相変わらず独り言をダラダラと言っていた。もちろん、月夜は自身の中にいる影にも声をかけてみたが、返事がなかったため本当に月夜は暇だった。
「暇だねぇ・・・」
落ち着いていられる状況じゃないにも関わらず、月夜は十分過ぎるほど落ち着いていた。いつもはこんな状況になると、一人で考えごとばかりしていて、あまりゆっくりと休むことをしない月夜だったが、今は休まなければいけない気がして、頭を切り替えていた。
「あー・・・なんかだるいなぁ、お腹も減ったし」
三日間も寝ていた月夜は、異常な気だるさを感じていた。もちろん、お腹もすいている。そんな風に体調のよろしくない月夜だったが、楓のそばからは離れなかった。いまだに片方の手は、楓の手を握ったままだ。まだまだ寒い時期とはいえ、ずっと握られていた手は汗ばんで湿っていたが、月夜にはその感覚はどことなく心地のいいものだった。
「とはいえ・・・うーん、暇だな」
月夜が一人で暇を持て余していると、唐突にドアをノックする音が響いた。
「開いてるよ」
月夜の返事に応えて部屋に入ってきたのは、ランスだった。その顔には、楓同様に疲れの色が濃く浮かんでいたが、月夜の声と姿を確認して安堵の笑みを浮かべていた。
「良かった、目を覚ましたんだな・・・」
ランスは月夜のすぐそばに座り、嬉しそうに声を出す。
「ああ、おかげさまでね。心配かけたみたいで、悪いな」
楓同様に、自分のことを心配してくれていたランスの気持ちが、月夜にはなんとなく嬉しかった。
「大変だったんだぞ?暴れる君を押さえつけるのは、なかなか」
責めるような言葉に聞こえなくもないが、その口調は全く責めるようなものではなかった。
「悪い悪い・・・」
月夜は苦笑しながら返す。しかし、すぐにその顔からは笑みが消え、真剣な面持ちになった。
「なぁ・・・今、何が起きてるんだ?」
そんな月夜の疑問に、ランスも真剣な面持ちになって答えた。
「僕にも分からない・・・君が倒れ、リミーナちゃんが失踪し、そして、日本は再度アメリカに戦争を仕掛けた・・・良くないことが、次々と起きてる」
今回の戦争のこと自体全く知らない月夜にとっては、日本から仕掛けた、ということすら知らなかった。だから、またこの国は仕掛けたのか・・・と苛立ちを感じる。
(ん・・・?ちょっと待てよ・・・)
月夜はランスが発した言葉の限りない小さな矛盾に気がついた。普通の相手ならば、それは全く気にもならないことだった。しかし、その言葉を言ったのは、記憶がないはずのランスだった。
「ランス、今、日本が再度アメリカに戦争を仕掛けたって言ったよな?」
喜びと期待が入り混じった気持ちを押さえながら、月夜は聞き返した。
「ああ、ニュースでそう言っていたから、間違いはないよ。それがどうかした?」
ランスの隠しも含みもない言葉に、月夜は微かな期待を裏切られて胸を痛めた。
(やっぱり・・・単なる勘違いか・・・今のランスに慣れてきたはずなのに、やっぱり俺は・・・)
月夜は現在のランスに対して罪悪感を感じた。記憶がなく別人のような現在のランスは、それでも月夜にとって大切な家族だ。しかし、それでも過去のランスに戻って欲しい、という気持ちが、月夜にはあった。そしてそれは同時に現在のランスを否定することであり、月夜は胸を痛めた。
「・・・何か気になることでもあるのか?」
急に黙りこくった月夜を心配するように、ランスは再度同じことを聞いた。
「いや、なんでもないよ、うん・・・そうだ、ランスが知ってる範囲で、今起きてる戦争のことについて教えてくれないか?」
場を濁すために言った言葉だったが、実際月夜はそれを気にはなっていた。
「僕が知っていると言っても、ニュースと新聞で知った限りのことだけど・・・君が倒れる前後、アメリカで大きな地震があったそうだ」
説明を始めるランスの言葉の続きを、月夜はじっと黙って待った。
「被害は結構なものらしくて、今までにほとんど例のない大都市がある各州で起きた大地震らしい」
「各州?ってことは、何箇所で一気に地震が起きたのか・・・」
「そうみたいだね。それで、地震で相当の被害があったアメリカに、日本が真っ先に復興の援助を申し出たらしいんだ」
「日本が・・・?随分珍しいな。あれ?でもそれじゃ戦争になる理由が・・・」
そこまで言ってから月夜は気づいた。苦い顔をしながら、さすがにそこまでは・・・、と言った感じで自信なさげに言う。
「まさか・・・混乱してるアメリカに援助っていう名目で、攻め入ったのか?」
ランスも月夜同様に苦い顔をしながら、頷いた。
「食糧などの支援物資を載せてると思わせて、その実大量の爆薬などを積んでたみたいだね・・・地震と突然の攻撃のせいで、あの国は今かなり混乱に陥ってるみたいだ」
一瞬青い顔になった月夜だが、すぐにその顔は怒りによって赤く染まる。
「なんて汚い手口使いやがる・・・!」
「それは僕も思う。でも・・・戦争なんて、そんなものなのかもしれない」
妙に何かを悟ったように言うランスに、月夜はつい声を荒げた。
「だからってやっていいことと悪いことがあるだろ!?それに、あの国には・・・」
月夜は言葉を切り、物憂げな表情で俯く。
(忘れていられれば良かった・・・でも、思い出しちまったから・・・)
月夜は過去の思い出を振り返る。月夜とリミーナを生み出した、優しい母の姿を。
「だから、俺がどうにかしないと・・・戦争を、止めないと」
力が戻った今の月夜であれば、簡単とはいえないが、それは無理な話ではなかった。だからこそ、月夜は自分が出来ることをしたかった。しかし、そんな月夜にランスは冷えたような口調で言う。
「それで、またお前は・・・人を殺すのか?」
月夜はその言葉に、頭にのぼっていた血が冷めるのを感じた。ランスの雰囲気が、記憶を失う前のかつての彼に戻っていく。
「お前は・・・それでいいのか?」
「違う、俺は・・・もう、誰も殺したくない」
「誰も殺さないで戦争を終わらせるつもりか?それは無理だ。どんなに大きい力を持っていても、それが力である限り戦争を終わらせることなんて、失くすことなんて出来やしない。僕は・・・それが分かったから」
悲痛な声をあげながら、ランスは俯いた。
「それでも・・・何もしないで後悔するよりは、ましなんだ。だから、兄貴もがんばってきたんだろ?」
目の前にいる、自分の兄に月夜は強く言う。
「頑張れば頑張るほど・・・僕は深みにはまっていっただけさ、所詮僕らはこの世の中の小さな歯車の一つにしか過ぎない。戦争という、この世の理の一つを失くすことなんて出来やしないんだ」
苦しそうに言う今のランスはまるで、厳しい現実を突きつけられた少年のようだった。徐々に大人になるにつれ、子どもの頃の夢を失い、社会の歯車に取り込まれながらも心の奥底では自分は違うと否定している・・・しかし、いつしか誰もが自分は所詮数十億いる人間の一人だと分からされる。夢と現実の狭間で苛まされ、結果、傷ついた末に戦争という世の中の間違った理にすら、屈してしまった。それが・・・今のランスだった。
「・・・戦争が世の中の理だって?寝ぼけたこと言ってんじゃねーぞ!?」
しかし、ランスより幼い月夜にはそれが理解出来なかった。堕落してしまったランスに、月夜は怒鳴る。月夜の怒りの声に寝ている楓が、うーんうーん、と苦しそうに呻いていたが、月夜は気づかなかった。
「人が人を殺すのが当たり前なのがこの世界なのか?違うだろ!?」
「そうじゃない、人が人と争いを続けるのが、この世界の当たり前なんだ。スポーツだって勉強だって、形は違えど僕らはいつだって争って生きている。違うか?」
ランスが言っていることはいちいちもっともだった。しかし、月夜はそれでも納得しない。
「違う、そんなのは間違ってる!争いだけの人生なんて、それがこの世界の理だなんて、俺は認めない!!」
「お前にもいつか分かるさ・・・いや、分からないでいた方が、幸せか」
ランスの一言一言には、深い哀しみのようなものがあった。それは軍人として生きて来たランス故の、深い哀しみだった。
「・・・じゃあ、兄貴は何もしないで、今の状況をただ受け入れるだけなんだな?」
「何もしないんじゃない、何も出来ないんだ」
ランスの諦めの言葉に、月夜は強い苛立ちと共に、涙が出てしまいそうな程の切なさを感じた。弱くなってしまった自分の兄を見ているのは、月夜には耐えられないものだったからだ。
「そうか・・・なら、茜姉さんが死に掛けても、兄貴は何もしないんだな?」
無表情で月夜は言う。そこには、感情の色は一つとして含まれていなかった。
「いきなり、何を言い出すんだよお前は」
ランスが一瞬だけ表情を曇らせたのを、月夜は見逃さなかった。
「だってそうだろ?戦争という間違った物を受け入れているのなら、人の死を・・・例えそれが大切な人の死でも、受け入れなきゃいけない」
無感情に言う月夜は、まるで機械のようだった。そんな月夜の様子に、ランスは背筋に寒気を感じながら、答えた。
「僕だって元軍人だ・・・数多くの人間を殺し、そしてその死を見てきた。その一つ一つの死を、僕は受け入れてきた。今もこれからも、僕はそんな風に生きていける・・・生きていけるさ」
最後の言葉を二回言ったランスは、認められないものを無理に認めようとしているようにしか聞こえなかった。
「俺は、人の死なんて受け入れられない。ただ人が死んでいく姿なんて、黙って見てることが出来ない。それは偽善だって、そんなこと分かってる、でも・・・」
月夜が言っていることには大きな矛盾があった。兵器として作り出された月夜は、ランスよりもはるかに数多くの人間を殺している。それでも、現在の月夜は人が死ぬのを黙って見ていることは出来なかった。しかし、月夜にとってそれは過去の贖罪でもなんでもなく、ただ単に・・・
「俺には力があるからさ、いや・・・人には誰だって、力があるだろ?その範囲内だけでも、護れるものは護りたい。最初から諦めるなんてまねは、絶対にしたくない」
自分に救える命が目の前にあるのならば、誰だって手を差し伸べたくなる。人としての、当たり前の感情だった。そしてその感情は、紛れもなく兵器としての彼ではなく、一人の人間としての月夜のものだった。
「自分に出来る範囲・・・か。そんな謙虚な物言いをしながら、戦争を止めるなんて言ってのけるのはお前ぐらいだよ、ほんと」
ランスはいつの間にか、自分が微笑んでいることに気づいた。
「仕方ないだろ?こんな、大層な力を持って生まれてきちまったんだからよ」
微笑んでいるランスを見て、月夜も微笑んでいた。わずか数ヶ月ぶりの再会が、まるで数年ぶりの再会のように月夜は感じた。
「そうだな・・・それは、しょうがないかもしれないな」
ランスも月夜同様の気持ちだった。ランスの考え方の変化により、離れていた間に溝が出来てしまったように見えた二人だったが、結局はお互いが信頼しあっている仲の良い兄弟だった。
「今更だけど、久しぶりだな兄貴」
小難しい話をしていたため、再会の挨拶を後回しにしていたのを月夜は気づいてその言葉を言った。
「ああ、久しぶりだな、月夜。こうしてまたお前と会えたことを、僕はいるかどうか分からない神とやらに感謝するよ」
ランスの言葉に、随分大げさだな、と月夜はもらしたが。ランスにとってそれは大げさでもなんでもなかった。もしランスの心が記憶を取り戻すことに拒否をし続けていたら、半永久的にランスは月夜の前には戻ってこれなかったかもしれないからだ。今回の事件は、今のところ二人にとっては良い方向に進んでいた。
「それにしても、なんでいきなり記憶が戻ったんだ?」
なんとなくその理由は分かっていた月夜だったが、一応ランスに聞いてみた。
「さぁな?放っておいたら勝手に飛び出して行きそうな無鉄砲な弟が、心配になったからかもな」
笑いながら言うランスだったが、あながちそれは間違いでもなかった。元よりランスの記憶は失われていたわけではなく、心の壁により覆われていただけだった。しかしその壁も、弟を心配する兄としての思いやりの前ではさほど意味もなかったようだ。
「まぁ・・・なんだ、うん・・・その・・・」
突然歯切れが悪くなったランスに、月夜は意地悪そうにわざとらしく言う。
「なんだよ?いきなり歯切れ悪くして、何か言いたいことがあるならはっきり言ったらいいぞ?・・・そうじゃなきゃ、許してやんねーから」
ランスが心に壁を作っていた理由を、なんとなくとはいえ理解していた月夜だからこそ、険悪な雰囲気にならないようにわざとおどけた調子でそう言ったのだ。
「・・・そう言われると、素直に謝るのも癪だな」
ランスもランスで、月夜の言葉に苦笑しながら返す。もしかしたら、この二人に言葉などいらないのかもしれない。そう思えてしまうほど、二人の心は繋がっていた。
「ルインは素直じゃないな」
「誰がルインだ!誰が!」
からかう様に言う月夜に、ランスは怒ったように言い返すが、その実、その言葉にもランスの心にも、怒りの色は一つとしてなかった。
「あっはっは・・・さて、お腹も減ったし、お喋りはここら辺にしてご飯にしようか。色々、話し合わなきゃいけないこともあるしな」
今回の戦争のこと、月夜より強い力を持ったいまだ謎めいた葉月のこと、リミーナの失踪のこと・・・そのどれもが月夜の心を重くしたが、ランスがいて、茜がいて、そして楓がいる。それだけで、今の月夜は頑張れる気がした。
「そうだな・・・僕が作ろうか?」
ランスの提案を、月夜はあっさり断った。
「こっちは何日間も寝てたままだったんだ、たまには楓の料理が食べたい。なぁ、楓?」
急に矛先を向けられて、寝ていたはずの楓が、ビクッ、と体を震わせた。
「いつまで寝たフリしてんだお前は、さっさと起きろ」
「や、ちょっと難しい話してたから起きるタイミングつかめなくて・・・いつから気づいてたの?」
のろのろと体を起こしながら、楓は月夜に聞いた。
「俺が無表情になってた辺りからかな、あの辺からある程度俺も落ち着いてたし」
「僕も少しは気づいてたけど・・・確証はなかったから黙ってたんだけど」
二人に気づかれていた楓は、少しだけ恥ずかしくなって怒ったように言う。
「その時点で言ってくれれば良かったのに・・・難しい話してるからって、黙ってた私が馬鹿みたいじゃない」
「いや、十分馬鹿だろ」
容赦も気遣いもない月夜の言葉に、楓は、むー、と唸る。
「誰が馬鹿よー!」
「口元、よだれの後ついてんぞ」
月夜にそう言われ、楓はとっさに口元を手で押さえた。
「嘘に決まってんだろ」
そう言った瞬間、月夜は楓に思いっきり左頬をぶん殴られた。グハッ、と大げさに言いながら、慣性に従い殴られた方に倒れこむ。
「馬鹿馬鹿!月夜の馬鹿ー!」
「待て!俺が悪かった!起きたばっかりの怪我人を殴んな・・・痛い痛い!」
「どこが怪我人なのよ!?」
倒れたまま追い討ちをかけられている月夜を見ながら、ランスは笑っていた。
こんな日常が、ずっと続けばいいのに・・・と、ランスは心の奥底からその光景を見ながら強く願っていた。
しかし、はるか昔から続く運命の歯車は、既に動いていたのだった。
物語が動いてねぇぇぇぇぇorz




