プロローグ
プロローグですが、同作者の作品のネタバレのようなシーンがあります。ご注意ください。
時空管理局・戦闘機動課。
「っ、くそっ! また奴らの仕業かっ!」
ダンッ! と机に拳を叩きつける課長である男に、課員たちは一瞬びくりとしながらも、すぐさま作業に戻る。
「今はそんなこと言ってる場合ですか! それに、今猛スピードで捜しているんですから、すぐに出動できるよう、準備しておいてくださいよ!」
必要最低限の武器ーーナイフ系の短刀剣を含む刀剣類に、弓と洋弓、各種の銃と弾丸。対物理対特殊、対魔法の対策をしながら、女性ーー薙沙芹奈が言う。
「もうっ! 時空管理局史上上位に入るぐらいの失態ですよ、これ!」
「ただいま戻りました~」
いらいらしっぱなしの芹奈に、呑気な声が横から入り込む。
「ってあれ……?」
一瞬でその空気を察した声の主であり、芹奈の後輩でもある鷹森結理は、その場で固まった。
これは、はっきり言って、嫌な予感しかしない。
「ねぇ、結理ちゃん」
「は、はい」
左右の肩に手を置き、笑顔で迫ってくる芹奈に軽くビビりつつ(同僚からは憐れみの目を向けられつつ)、結理は返事をする。
「Sランク犯罪者が脱獄したの。奴らの仕業である可能性もあるから、それも視野にいれて、グラスワールドの調査に行ってきなさい」
それはもう、綺麗な綺麗な笑顔だったと、後の結理はそう話す。
さて、話を戻して、少しばかりこの件についての説明をしよう。
時はある程度遡り、結理がグラスイースト世界で魔王と勇者である月城鏡の間に入り、鏡と対峙していた頃。ここ、時空管理局で一つの事件が起きた。
「脱獄!?」
局内の非常ベルが鳴り響き、全ての課へその事が伝えられた。
時空管理局の刑務所や監獄は牢屋番以外、開けられることはない。
刑により、入れられる場所はそれぞれ決まっており、次元超えで犯罪を犯した場合、最悪、死刑確定とされるSSSから最良で軽いとされているFまでが存在し、冒険者かと問いたくなるようなランク付けだ。
あとこれは余談だが、グラスイースト世界の女神は、反省の意味も込めて厳しくEランク判定となった。
さて、今回脱獄したとされているのは、Sランク犯罪者とされた男。
相手が相手だけに、この脱獄事件が起こった当初、普段はデスクワークの者たちまで、その対処に駆り出されていた。
「課長、次は絶対に休みくださいよ!」
本来なら(ほとんど自業自得のようなものだが、)グラスイースト世界から帰還して与えられるはずだった結理の休みは、脱獄犯の絶対捕縛という命令により、無くなってしまった。
そしてーー……
「私の貴重な休みを奪ったんだ」
絶対に、
「何があろうと捕まえてやる」
その意志を胸に、結理はグラスワールドへの入り口に向かうのだった。