星
三部作の中編です。
月と星の意味とは?
黒板に書いてある。星の文字に込められた意味を模索しながら
絵里は帰宅した。
昨日と同じなら
照幸は、また
玄関で立ち尽くすはずだ。
もう…馬鹿なんだからと
ポットのお湯と
ココアを何時でも
かじかむ照幸へ
差し出せる様に用意して、
絵里は窓の側に座った。
日が傾きを増し
影が伸び始めた頃
照幸は自転車に乗ってやってきた。
幾分期待を裏切られた絵里は…
スネながらも…
ココアを差し出した。
ニッコリと笑い
ココアを啜る…
今日も旨いや…
絵里はココアを入れるのが上手たね…
先ほどまで少しだけスネタ心が和らぐ…
寒い事も忘れて
照幸に尋ねる…
月と星の意味を教えて?
照幸は黙って自転車の後ろを指差す。
黙って絵里は自転車に乗った。
ペダルをこいで
行き先を告げぬまま
自転車は進んでいく
昨日とは違う公園に着いた。
夕日が山の端に沈み掛けている。
黄昏時から徐々に空が闇を帯びてくる。
太陽が沈み切り
西の空に一番星が出てきた。
絵里…
金星だよ…
と一言だけ囁く照幸に
意味を教えてよ。
軽く咳払いをして
照幸は語り始める
月の意味はね。
絵里がみんなの前で誘えって言うから
平安の貴族を真似して
夜になったら逢いましょうって意味で描いたのさ。
じゃあ…
星の意味は…
今見たじゃない。
太陽の光に隠れてるけど
そこに星は有るんだよ。
みんなの前で無くても僕の心はそこにあるって事だよ。
まだ…日が落ちたばかりの空を見上げて二人は自転車を押しながら帰った。
絵里の家の前で照幸は
明日の朝の黒板にも書くから…
と一言絵里に告げ…
帰って行った。
次回もお楽しみに